春の陽光を思いっきり浴びて五龍岳の頂へ
夜中から吹き始めた風のせいで、まんじりともせず起床時間を迎えてしまうが、他のメンバーも大差のない様子。
GO隊のNobさんがテントの外から"おはよう"と声をかける。時計を見れば2時30分、葛藤の末シュラフから抜け出した。
まずは朝食の支度に取り掛かるが、風は一向に止む気配を見せない。
竜少年さんが本日の行動計画を思案しながら「爺ヶ岳の時の風を思い出すよねー」と。
そういえば一昨年、年末の爺ヶ岳も風で泣かされた。
「夜中に吹き始めた風は朝止む、朝方吹き始めた風はその日1日続くっていう言い伝えがあるんだよー」と竜少年さん。(う~ん、意味が深い。メモしておこう。)
とりあえず天候の変化に注意しながら予定決行の判断が下された。
外にでれば夜明け前の山の稜線がきれいに見えている。空を見上げれば満点の星。風の強さも、然程感じない。
これなら行けるだろうか・・・。
失礼ながらテントの中からGO隊を見送る。顔はあわせられなかったものの、出発の掛け声にはやる気がみなぎっている。(みんなガンバレ~~~)
遅れをとってはならぬとばかり、一般ルート隊も身支度を整え、風で生活用品が飛ばされないよう周辺を整理し、出発の時を待つ。
円陣を組み、手を合わせ今日一日の安全登山と健闘を誓って"オーッ!!"(あー、部活を思い出す・・)
歩き始めて5分もするとテントサイトに到着。5、6張りもあったろうか、すでに出発しているのであろう、主のいないテントは静寂の中だった。
しばらくして公式カメラマンのヒロリンさんが朝日に染まる鹿島槍をバックに写真を取ってくれた。
あれはまさしく我がGO隊の姿ではないかしら・・。トランシーバーで交信を試みるがコールバックがない。(とにかくガンバレ~~~)
白岳のトラバースルートは下から見るほど傾斜も強くない。
凍った雪面にアイゼンの爪もしっかり食い込み比較的歩きやすい。とは言ってもそこは5月の山。
一部雪崩のためか雪面がぱっくり口をあけているのが少々不気味だ。
グズグズしてはいられない、竜少年の「ここは休んでいられないからね~」の指示の下、すでに空腹を感じつつも一気に登りきった。
ようやく五竜小屋に到着、一段と風の強さが増す。目指す頂上はまだまだ先だ。とりあえず腹ごしらえをして、もう一度GO隊との交信を試みる。
やはりコールバックがなく、「きっと忙しいんだね~」と竜少年さん。
歩き出すもののすでに夏道がでており、むしろ歩きの妨げになったため一部アイゼンをはずしながら進む。
頂上直下は傾斜もきつく雪もしっかりついている。
慎重に足を運ぶが、所々岩稜が顔を出しており、鎖をたどっての岩登りとなった。
緊張の頂上直下を無事通過し、ようやく頂上にたどり着く。
まずは登頂を祝して握手・握手、そしてGO隊との交信。
山頂からは剣・鹿島槍・唐松、遠くには槍・北穂の姿も見える。まさに大展望だ。
昨年はあの鹿島槍の南峰に立っていたことを思い、この一年を振り返り一人感慨にふける。
「もう来られないと思っていたけど、また来ちゃったねー」とヨーコさん。本当にその通りだ。
竜少年さんがなにやら順番に口の中に放り込んでいく。ぶどうだ~!(がんばったご褒美かしら・・)甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がり、しばし疲れを癒してくれた。
感動に浸ること30分。竜少年さんとヒロリンさんが下山方法について検討し始めた。
下山はロープを出すよう竜少年さんより指示が出る。
スノーバーで支点をつくり、竜少年さんとヒロリンさんがアンザイレンする。竜少年さんビレイのもとヒロリンさんが下っていき、岩を周り込む様に姿が見えなくなったと思ったら、"中間支点をとりますかー"の声。"お願いしまーす!"と竜少年さんの声が飛び、しばらくしてロープがまた流れていく。
"あと10メートル"のコールの後"ビレイ解除、どーぞ"の声。プルージックをかけヨーコさんが降りていく。私の番になり、竜少年さんの側によって、どう確保しているか、支点はどう作っているのか、2・3質問しながらじっくりのぞかせて貰う。
(スノーバーを実際使うのは初めてだったもので・・勉強させて頂きました)
2P下ったところで安全地帯に入り、ロープ解除となる。
五竜小屋到着後GO隊と交信。やはり返信はなかったが、GO隊をここで待つ旨伝える。
しばらくすると竜少年さんのザックから声がする。トランシーバーから漏れるGO隊、Nobさんの声だ。稜線下150mにいるとのこと。稜線に出たらまたコールする約束を交わし、交信を切る。
まずは無事が確認できて一安心だ。待つ気持ちにも余裕が出てきた。
余裕が出てきたところで今宵の祝杯用のビールなんて各自仕入れてしまう。しっかりと日本酒までGetしてしまった。
さらに待つこと30分??GO稜に目をやると人の動く気配。我がGO隊の勇姿だ。
ゆっくりではあるが確実に前に進んでいる。一人また一人と稜線上に姿を現すのを4人でじっと見守る。
そしてNobさんからのコール。「おめでとう、お疲れ様でしたー」と竜少年さん。きっと感慨無量のことだろう。
手を振ると大きく手を振り返してくれる3人の姿があった。
竜少年さんからトランシーバーを借り、「Miyaさ~ん、ma3nobuさ~ん、Nobさ~ん、みんなかっこよかったよー」とラブコールするが、これはどうやら拾ってもらえなかったらしい・・。
温かい紅茶で3人を迎えたあと、興奮のGO稜報告を聴き、しばし歓談。
其の後いくつものパーティーが白岳トラバースルートで下山するのを見送りながら、安全を考え白岳への尾根ルートを選択し下山する。
下山途中もGO隊は思い出話が尽きぬ様子で、とても楽しそうだった。
天場到着後、またまた一般隊は円陣を組み、手を合わせ"ヤッター!!"の掛け声で今日の山行を締めた。
■感想
天候にも恵まれ、後立山連峰の展望もたっぷり味わい、最高の山行だった。なによりみんなが無事だったこと、だからこそ神城駅前のお蕎麦屋さんで乾杯したビールの味は格別だった。(T嬢)