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那須・朝日岳東南稜

【日時】 2009年3月8日(日曜日)
【目的地】 那須・朝日岳東南稜
【メンバー】 Nob、HINA、Hammer

元々この週末は上越のバリエーションに行く予定だった。しかし今年は予想以上に雪が少ないとの情報から上越は諦め、昨年末に強風による無念の敗退を喫したこのルートをリベンジ=再チャレンジすることとなった。

それにしてもここ2週間ほど天候が安定せず、週末の天気予報もコロコロと変わる有様で、ぎりぎりまで行くべきか中止すべきか悩みに悩んだ末、日曜日は曇りのち雨という天気予報だったが、雨は夕方からという予報を信じて、まぁとにかく行ってみましょうよということで出発した。
結果としては、予想以上の穏やかな天候と、これ以上はないようなコンディションに恵まれ、短いながらもすっきりとした雪稜、岩稜の登攀を存分に楽しむことができた。



■3月7日
午後2時すぎに西船橋駅に集合して出発。東北道の渋滞もなく3時間ほどで宿となる大丸温泉に着いた。
東北道から見えていた山々の中で最後まで雲を被っていた那須連山も、到着する頃にはやっときれいに姿を現してくれ、明日の天気に望みが持てるようになった。
源泉掛流しの温泉と美味しい料理に満足し、明日の天候に期待して早々に就寝。


■3月8日
午前5時に起床。天気予報では夕方まではなんとか持ちそうな予報、青空に薄く絹雲が広がっているが風もなく穏やかな天気である。
あらかじめ宿にお願いして作ってもらっていたおにぎりの朝飯を食べて、すっかり明るくなった6:15に出発した。

所々カチカチに凍った雪と氷の道を歩きはじめる。
年末は新雪のラッセルだったらしいが、今回はとても気持ちよく締っているので夏よりも歩き易い位で、峠の茶屋の駐車場などスケートが出来そうな感じに凍っている。

途中でアイゼンやハーネスを付けたりしながらも、年末には2時間半ほどかかった『こんなところに「高山植物」が?』の看板が目印の東南稜への下降点まで1時間15分で着いた。

正面から見る朝日岳東南稜はかなりの迫力で聳え立っていてカッコいい。
これから登る東南稜のルートを確認して、緩い尾根状のところからミョウバン沢へ下り10分ほどで取付へ。


ガチャ類を身に着け登攀準備完了。ルートはいくつか取れそうだが、リッジ右側の急なルンゼ状の雪壁から取り付く。見た目はそうでもないのだが実はかなり急で、アイゼンを効かせてグイグイ登っていけるものの、突然の急斜面でまだ慣れていない足首が痛い。
が、雪壁もそんなに長くは続かず、氷雪混じりの岩稜に変わる。
やはり岩がもろい部分もあるが、ここ最近の雨や雪のおかげで良い具合に凍っていて、ホールド・スタンスも豊富であまり不安を感じることなく快調に高度を稼ぐ。

下部の核心であるギャップ手前のピナクルは右側から慎重に巻く。ここから10mほど下降することになる。

過去の記録ではクライムダウンをしているパーティも多いようだが、ピナクルの頭にしっかりした残置ロープがあったので、それを使って懸垂下降する。実際、懸垂下降のほうが安全である。

降り立ったギャップから今度は短いが4級程度の岩登り。少しかぶり気味だがしっかりしたホールドのある壁、右側のさびたハーケンでランニングを取り、足をあげる1歩が緊張するが、あとは易しくなる。大きめのカムがあれば安心。


傾斜が緩くなったところでビレーする。ここから振り返ると、登ってきたピナクルの向こう側に茶臼岳が大きく聳えていて、昔読んだ「星と嵐」の写真がフラッシュバックした。

この先はこれまでよりは傾斜は緩くなり、雪混じりのガレ場・岩稜歩きとなる。
なるべく雪がついている登りやすいほうを選びながら登っていくと前衛峰に到着、朝日岳の頂上がようやく姿を見せる。
さらに痩せ尾根の雪稜を登っていくと最後は頂上直下で3級ほどのスラブ壁となる。正味10mほどで、高度感はあるが凍っていることもあって岩はしっかりとしておりロープを出さずに慎重に登る。そしてすぐに朝日岳の山頂に飛び出た。

東南稜は風もなく氷雪でしっかりコンクリートされた岩稜で、予想以上に快適なライトアルパインを楽しむことができ、3人で喜びの握手を交わした。取付から1時間半で思ったよりもずっと早く登ることができた。
天気も頑張って保ってくれ頂上からの眺めもばっちりで、会津方面の山々も見渡すことができた。

朝日岳からは一般ルートで下山する。一般ルートといってもガチガチに凍っていて途中の鎖場も氷に埋もれたりしていて少し緊張するところもあった。

また夏道登山道は剣ヶ峰の山腹をトラバースするが、アイスバーンで滑落の危険もあるため、尾根通しに剣ヶ峰山頂を越えて峰ノ茶屋コルへ下りる。
峰ノ茶屋まで下りると、さすがに緊張するところも無くなり、ゆっくりと休憩する。

あとは大丸温泉までのんびりと下る。この時間になると結構多くの登山者が登ってきていてすれ違った。
予定よりもかなり早く大丸温泉に下山することができ、ちょっと遅い朝風呂を浴びて帰途についた。
(記 HINA)


■コースタイム
大丸温泉(6:15)・・・峠の茶屋(6:40~45)・・・東南稜取付への下降点(7:30)・・・東南稜取付(7:40~45)・・・ギャップ=懸垂下降で降りた所(8:30)・・・朝日岳頂上(9:15~30)・・・剣ヶ峰(9:50)・・・峰ノ茶屋(10:05~25)・・・大丸温泉(11:05)



■感想
最高のコンディションに恵まれて、あっという間に登り終えてしまい、もう少し登りたかったなと思うくらい快適なルートでした。
朝日岳といえば夏に赤茶けたボロボロに見える岩肌しか見たことがなかったのであまり魅力を感じなかった山でしたが、冬の白い雪とのコントラストは全然違う山に姿を変え、とてもアルペン的なカッコいい山でした。
火山の影響と崩れやすい岩質のせいか、そんなに標高が高くないのにほとんど木も生えていなくてすっきりとした岩稜が印象的でした。

この日、東南稜を登ったのは我々だけで先行者のトレースもなく、静かな山とルートファインディングも楽しむことができました。
ただし今回はとてもいい具合に岩が凍り付き、ある程度の雪もあったので登り易かっただけで、やはり過去には落石などによる事故も起きているとのこと。我々も事前にそういう話を聞いていたので、雪などの状態によっては中止しましょうねという気持ちで登りに行きました。

地元の救助隊でも登山禁止にしようかという話が出ているくらいだそうで、本当に状況によっては不用意に取り付くべきではないし、剣ヶ峰のトラバースなども、雪崩や滑落の危険がある冬季は止めるべきであると思います。(実際にトラバースをしている単独の登山者が何人かいて、見ているほうがハラハラするくらいでしたから。)
(HINA)

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昨年末に敗退して、今回は・・・と思っていたのですが
直前まで天気予報がはっきりせず微妙だった。
出発前日の夕方まで待ったHINAさんの判断がよかった。

当日は、予想以上の天気で風が弱かった。
ルートは程よい雪と氷、凍っていたのでアイゼンがよく効いた。
NobさんとHINAさんは速い!休憩なしで頂上に抜けた。

帰り、大丸温泉のかけ流し露天風呂は気持ちよかったなぁ~。
(Hammer)

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短いながらも岩雪ミックスの岩稜&雪稜。
火山性のもろい岩肌が氷雪でコンクリートされていたことと、天候も安定していたために予想外の好条件で登り終えることができました。

アプローチも短く、気持ちの良い緊張感が連続する好ルートです。
でも、雪が消えたら登りたくないですね。
(Nob)

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