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八方尾根で猛吹雪に遭う

「今年の年末年始の山は荒れ模様」TVニュースを家でのんびりとみていた。年末の上高地が放映され、雪の中を歩いている映像、かと思うと槍ヶ岳で幕営地に雪崩4人死亡など・・・

また、身近なところでは我が会のヨーコチームも徳澤スノーハイクを断念、MR,Hammerは年末年始の甲斐駒、仙丈でラッセルで敗退。

私たちが唐松へ出掛ける4日には日光で置き去り?遭難。どちらを向いてもあまり芳しくない。6日の天気予報はあまりよくないが果たして唐松のピークを踏むことができるのか・・・


八方尾根からの唐松岳

【日時】2008/01/05-06
【場所】北アルプス 後立山連峰 唐松岳
【メンバー】竜少年、ヨーコ、HINA、他1。

ゴンドラ、リフトを2本乗り継いで八方山荘のある標高1856mに一気に登り付く。
■1月4日
前夜発の白馬八方行深夜バスに乗る。車内は暑く眠れず、余りの暑さに途中アイスクリームを食する。

■1月5日
ゴンドラ、リフトを2本乗り継いで八方山荘のある標高1856mに一気に登り付く。

09:00
微風。鹿島槍がヒマラヤ襞の上に美しい双耳峰を青空に突き上げている。

スキーヤー、ボーダーの間を抜けユックリと登る。

周りを見渡してもスキヤーとボーダーしか見当たらない。どうやら山屋は私たちだけらしい。

登るにつれて白馬岳から後立山の山々が身近にせまり、振り返れば妙高、雨飾りと展望に今回の登頂の成功が見えてきたようになり嬉しくなる。

が、八方ケルンを過ぎるころから立山方面から雲が一斉に沸いて来て風も強くなり雪も横殴りになってくる。

11:00
ますます風雪が強くなってきたので、そろそろテントサイトを見つけなければならない。

西風が強く、なんとか風を避けられるところはないか、と見覚えのある(と思っていたが定かではない)急斜面を登りダケカンバの疎林の中にテントを張ろうとしたが高度が上がったため却って風が強く、折角苦労して登った斜面を降りる。

降りたところは標高2200m付近でダケカンバの疎林の中であったが、テントを張るところは他に見当たらず整地をしてテントを張る。

強風の中での設営は4人がテントを飛ばされないようにしっかりと押さえながらの設営で苦労をしてなんとかテントにもぐり込む。

テントに入ると西側からの強風のため、テントが撓み、テントの半分は壁が迫り内部は極端に狭くなっていった。

ゴーゴーと風鳴りが聞こえ風雪が強くなり全方位からテントが風に押され、座っている雪面が小刻みに震えているのさえ分かる。

このままテントが潰れたら即刻退却しなければならない。明日もまた、これほど強い風雪が続いていたら、素直には帰してくれないぞ、と半分覚悟。ここはテントが持ち堪えてくれることを祈るばかりだ。

その間にもますます風は強くいつでも退却できるように靴は履いたまま、ザックもキチンとパッキングしておく。

気持ちはみな同じである。が、前夜の夜行バスの疲れで座ったまま皆寝ている。いい度胸していると感心する。

テントに一箇所でも、ほんのチョットの亀裂がはいったらこのテントもお終いである。ペグ代わりの割り箸も頑張っているようだ。

15:00
風の息が抜けるようになってきた。もう4時間以上吹かれに吹かれる。息が5分から10分間遠になり静かになってくる。やっと静かになってくれたかとホットし夕食を作る元気もでて、ヨーコさん特性のトンシャブに舌鼓を打ち、テントの周りを見回って、大丈夫、大丈夫と自分とテントに言い聞かせ早々と寝袋にもぐり込む。

今夜は寝袋に入ることが出来ない、と覚悟していただけに横になれた幸せを感じる。外は雪が降り続いている。

しかし、山はそんなに甘いもんじゃなかった。夕方7時を過ぎた頃より再び昼間にも増して風雪がつよくなり、テントの半分はヒシャゲてしまう。横になっている顔の上にテントが圧し掛かってくる。もう、横になってしまったので覚悟を決めて横になっている、と言ったところだ。

・・・八方尾根で風雪のため4名動けず、救助ヘリが出動・・・

脳裏に浮かんでは消え、消えては浮かぶ。5~6分置きに時計をみる。一瞬風が止むとザラザラと雪の音。このまま止んでくれと祈る。後立山のその向うからウゴー、と微かな前兆があるとテントに風が襲い掛かる。テントよガンバッテくれと仕舞いには般若心経を唱える始末。その間にも鼾を掻いている大物のHINAには参った。

■1月6日

03:00
どうやら風は吹いているが大分治まった感じがする。なにはともあれ帰り仕度だ。一番怖いのは、風雪とガスのためメンバーが離れ離れになることだ。

そこで、30mのロープに各人はスリングを胴に巻いて、HINA 、ジュン、ヨーコそして竜少年の順でユックリ確実に歩くのだと全員で意識あわせをする。

全ての用意をテントの中で行って、思い切ってテントの外に出る。

思ったほど風も強くなく、スムースに撤収できた。しかし、一晩吹き荒れたため、帰りのトレースはどうなっているか分からないので、先ほどの順でいつでもロープは付けられる用意をして行動を開始する。

07:00
ユックリ、ユックリ、離れないようにを心がけて慎重に降りる。風雪とガスの中に八方山のパノラマ案内板が見え、松濤ケルンを過ぎて順調に降りる。段々とガスも消えて、「あ~、これで皆が家に帰ることができる。」

やがて八方山荘が見えてきて、穏やかな陽が射し始める。山荘ではココアの甘い香りが漂っている。

山荘の周りでは既にスキーヤー、ボーダーが賑やかにさんざめく。

無事に生きて帰れるということはこんなに素晴らしいことなのだ。下山連絡は無事下山というより「生還」と報告した。

記 竜少年


【コースタイム】
1月4日(金)
新宿22:30発アルピコ高速バス白馬八方行き

1月5日(土) 
05:30 白馬八方着 ゴンドラリフト乗り場まで徒歩15分  
08:45 リフトを乗り継いで八方山荘着
08:55 八方山荘発
09:25 石神井ケルン着(八方山ケルン)
09:40 石神井ケルン発(八方山ケルン) 
10:10 八方ケルン
10:30 八方池(第3ケルン)着
10:50 下ノ樺(標高2,200m付近)着
このあと上ノ樺2,300m付近までテント場を探して登る。
11:40 風強く下ノ樺に戻りテント設営

1月6日(日) 
07:00 下ノ樺テント場発
07:15 八方池
07:45 八方山ケルン
08:05 八方山荘着
08:45 リフトに乗る
09:20 ゴンドラリフト下へ到着
09:54 白馬駅発
12:16 松本駅発特急あずさ乗車
15;06 新宿駅到着



■リーダー反省(竜少年)
天候不順は分かっていながら、稜線にテントを張ったのが最大の反省点である。今、冷静になって考えると引き返すチャンスは2回程あったと思う。

一つは八方ケルンで既に立山連峰の上に雲が沸いてきて風雪が強くなった、これを悪天の前兆として捉えなかったこと。

二つ目はテントを張る時点で既に風雪が強くなっているのに下山することすら考えないで幕営したこと。その時はまだお昼頃であるので充分下山できたと思う。

幸い6日に天候が落ち着いたから下山することができてよかったが、通常この時期の後立山は風雪が長く続いても不思議ではない場所でもある。

以上の事を検討すらせず、幕営したことはヒヤリハットを超えて“遭難予備軍”と言われても反論できない。猛省をしている。また、このようなしなくてもいい経験をさせてしまったメンバーには申し訳なく思っている。



■感想

冬山に登るのは実に学生時代以来21年ぶりということで、装備もすべて新調し、昨年12月に予定していた谷川が悪天候のために中止となったので、この唐松は冬山再デビューとなる記念すべき山行でした。

結果は登頂ならずというものでしたが、美しい白銀の後立山の山並みを間近に見ることができ、久しぶりの寒さ、アイゼンやピッケルの感触、暴風の吹き荒れる中でのテントビバーク、新雪のラッセル等々、どれも忘れていた昔の感覚を取り戻すという意味で私にとってはとても良い山行でした。

ヨーコさんに献立していただいた夕食、朝食ともとても美味しかったです。竜少年のご心労も大変だったと思いますが、本当にお疲れさまでした。とにかく皆さん、ありがとうございました。

でもやっぱり冬山はいいですね。下山したらまたどこかに行きたくなりました。ぜひ今度はもう少し日程的にも余裕をもったスケジュールで登りましょう。

(HINA)

二年ぶりの冬山、リフトを降りて鹿島槍を見た時は胸がわくわくしました。しかし強風のテントの中で竜少年さんから「テントが壊れるかも知れないのでパッキングをしていつでも脱出できるように」との指示に緊張!

結局シュラフには入れたのですが一晩中続く猛吹雪に生きた心地もしませんでした。リーダーとしての竜少年さんの思案はさぞ大変だったことでしょう。

HINAさんはさすが大物、雪に押されながら寝ていましたし、ボッカ、ラッセル、カメラマンと大活躍、本当に凄い方です。

八方山荘が見えて「無事下山ではなくて無事生還だ!」と竜少年さん、涙が出ました。ありがとうございました。

(ヨーコ)

何年も使っていなかった60Lのずっしりと来るザックと雪にはまって進まない足、テントが壊れるかと思う強風と不安。

でも白く輝く峰々やおいしくて温まる食事、風の合間の冗談話と共に冬山の醍醐味かな?などと反省も含めて忘れられない山行になりそうです。有り難うございました。

(ジュン)

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