三ツ峠・中央カンテにおけるヒヤリ・ハット体験
■状況
中央カンテの登攀を終え、終了点から懸垂下降で取り付きまで降りるために、終了点付近にある懸垂下降支点より第一バンドまでの距離約50mを9mm×50mロープを2本繋いで懸垂下降で降りた。
最初にBが降り、問題ないために二人目のAが降下。Aが第一バンドに降り立った後、回収するためにロープ引いたがどこかに挟まっているらしく、ロープは全然動かなかった。
今度はBも含めて二人で力を合わせて引いてみたが結果は同じだった。夏休み明けの閑散期であり、同ルートに取り付いている者は二人の他には誰もいなかった。
第一バンドから取り付きまでは約10mの距離があり、ロープによる確保無しで下ることは出来なくはないものの、かなり危険を伴う。
■われわれのとった行動
ロープがまったく動かない状況から、下降ルートの傾斜が変化する地点(緩傾斜→急傾斜)でロープがクラック等に挟まったことがある程度想像できた。
幸い、降り立った第一バンドには堅固な下降用の支点が2箇所設置されていたので、ロープの末端同士をエイトノットで支点に結びつけ、固定することができた。
これにより、仮に登り返した時に弾みでロープがクラックから外れたとしても、登高者は墜落する心配はなくなる。
次に、Bがダブルロープ状態のロープに径7mmのプルージック用スリングでプルージック結びをセットして登り返すことにした。
但し、懸垂下降ルートは通常の中央カンテルートより右寄りに離れているため、AはBに対して浮き石など危険性が高いようなら無理しないで下降するよう指示を与えた。
Bはプルージックを上に移動させながらA0をまじえながらの登高を繰り返し、岩角のクラックに挟まっていたロープを引き抜き、原因を取り除いた後、同じ失敗を繰り返さないように2本のロープの結合部をずらして1本のロープを折り返して懸垂した。(再回収時にロープの結び目がクラックに挟まらないようにするための措置)
Bは登り返しの途中で確認してあった真新しいペツルのビレイステーション(終了点から約10m下)にてセルフビレイを取り、そこから再び新たに懸垂をしてAの待つ第一バンドを通過して取付きまで一気に降りた。
最後にAが第一バンドから短い懸垂をして12:35無事に取り付き点に戻ることができた。
■原因
ロープがロックした原因は、やはり最上部の岩の角にある細いクラック部分にロープ1本が挟まってしまっていたためだった。
懸垂下降の出だしは緩斜面だが、すぐに垂直に近い急斜面に変わるため、そこでロープが岩に押しつけられてしまう。
懸垂時に左右に振られた際、ロープがクラック部分を跨いて挟まってしまったものと思われる。
■反省
- 終了点からの懸垂下降は通常行われていることであるが、今回は事前に同ルートの下降でロープがロックした記事をネット上で閲覧していたにもかかわらず、同じ失敗を繰り返してしまった。
- 今から考えると、緩斜面から急斜面に変化する地点にもっと注意を払うべきだったと反省している。
- 今回は懸垂下降支点も第一バンドの固定支点も共に堅固なものだったので、登り返しの決断ができたが、そうでない場合は、後続のパーティーにロープの回収を依頼するべきだったのかも知れない。(但し、この日に関しては後続パーティーはいなかったが。)
(記 Nob)