年末の北アルプス 西穂高敗退記
■12月29日 曇り時々雪
スーパーあずさ1号は混雑が予想されたが、意外と空いていて楽々と座れる。新穂高温泉から、ガスの中ケーブルをおりると雪がサラサラと降っている。ma3nobuさん、NobさんそれにT嬢に少し余計に持ってもらう。お陰で少し楽ができた。
予想より積雪もあり、歩きやすいトレースを1時間半で西穂山荘に到着。小屋の前にテントを張る。風と雪が間断なく吹きテントを揺らす。時折突風が吹き、夜が更けるのにつれて心なしか強くなっていくようだ。
稜線上で突風には遇いたくないなー、と心配しながら眠れぬ夜を過ごす。
■12月30日 曇り時々雪 強風
4時に起きる。テントの外は相変わらず風雪が強い。突風もある。積雪も一晩で20センチはあったろうか。外気温はマイナス15度C以下ではないかと思われる。天気は時間がおそくなれば晴れ間もでるのではないか、と予想される。
午前8時。予定の出発時間6時はとうに過ぎているが、風も収まりそうも無いのでアイゼンを着ける。少なくとも独標には行きたいものだ。テント場からほんの少し登ると樹林帯が切れるので西風がまともに吹き付ける。雪がツブテのように顔に当たって痛い。ピッケルを持つ手が寒さで痛い。ごうごうと風がフードにあたる。急登で息が切れる。
先頭は竜少年、ヨーコさん、ma3nobuさん、T嬢、そしてSLのNobさんと続く。時折耐風姿勢をとりながらゆっくりと登る。昨年の爺ヶ岳のときはこんなもんじゃなかったなー、でも、今日も結構吹くなー、などと考えながら登る。後ろでma3nobuさんが「竜少年!」と呼ぶ。振り返るとT嬢とSLのNobさんがなにやら相談している。出発間際まで元気だったT嬢が気分が悪くなったという。吐き気もするという。
どうしたのだろうか、元気そのものだったのに。昨年の爺の時もよく風に耐えて登ったのに。本人は「登って」と言う。自分のために山行が中止になることをとても申し訳ない、と思い、自分が下りて、皆には登って欲しいと言う。
気持ちは良く分る。しかし、こういう場合、僕は迷わず山行は中止し、下山する。そして、仲間が本当に安全かどうか見極めがつくまでは行動したくない。本人も早めに申告してくれた。幸いパーティ全体が同じ考えでいてくれている。誰からも「登ろう」というメンバーはいなかった。いい仲間達だと思う。
山はまたいつか来れば登れる。命あっての登山だ。独標の手前だった。(記 竜少年)
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■感 想
昨年の爺に引き続き、2年続けて強風に阻まれた。聞けば今年の八ヶ岳も天候が荒れていたとか。このところ年末年始は天候に恵まれる確率はとても低い。特に北アルプス方面は。来季は考えないとイカンナー。というところだ。
さて、今回は、たまたま、メンバーの一人が不調を訴えたので安全の為に引き返したが、それを差し引いても、強風が吹き続いたことを考えれば、独標までいけたかどうかは分らない。
多分、行けなかったのでは、と思っている。更に、31日の荒れた天気を避けて30日に下山したことは、結果的ではあるが正解であったと思う。事故も怪我も無く帰宅できたのはパーティ全体の協力があってこそ、と感謝している。
■データ編
- 12月29日新宿07:00発スーパーあずさ号の混雑は少ない
- 新宿―松本間には往復とも京王バスの長距離バスがある。
片道3,400円。4人揃えば回数券(4回で11,900円が使え、一人3000円以下)京王高速バス予約センター 03-5376-2222
- 新穂高温泉から西穂高へのケーブルは風が強いと欠航するので要注意。
片道1500円。荷物代300円
- 西穂高小屋周辺のテント場は小屋への届けが必要だが、テント代は無料。