丹沢 大山と表尾根
2003年は右肩を痛めたことなどもあり、終わってみれば冴えない一年だった。山屋にとっては健康なことが何よりの財産なんだと強く感じた一年でもあった。
肩の痛みは少しずつ快方に向かっている。まだクライミングは無理だが少しずつ山歩きをしながら肩を作っていかなければならない。そこで、新しい年に望みをかけての望年新年ハイキングを計画した。
場所はこのところトレーニング山行でよく歩かせてもらった丹沢の表尾根。これに大山をセットにして、さらには元旦の初日の出を塔ノ岳で迎えることにする。
■12月31日 曇り時々晴れ間
久しぶりに大山に向かう。大山へは家族ハイキング以来だからもう10数年ぶりだろうか。大山だけだと軽いハイキングだが、これに表尾根をプラスするとこれはもう立派な健脚向きコースになるのではないか。
9:07 バス終点のケーブル駅を出発。追分までは参道のとうふ料理店を眺めながら石段を登っていく。およそ10分でケーブル駅に着。今回は大山不動に寄り道するために「女坂」経由で登り始める。女坂といっても石段混じりの急坂もありなかなかきつい。途中随所にある「女坂七不思議」の名所が変化を与えてくれて興味深い。また、古い石像なども見られ信仰の奥深さを感じさせてくれる。
ひと登りで着く大山不動(大山寺)は、成田不動、高幡不動と並ぶ「関東三不動」の一つで、上にある大山神社に劣らない風格をもったお寺さんだった。右肩快癒のお祈りをしたのは言うまでもない。
大山不動からさらにひと登りでケーブル終点の下社に着く。明日からの初詣の準備がすっかり整った境内は掃き清められており、静けさのなかに凛とした気配が支配していた。ここでももちろん年内最後のお参りと来年のお願いもしっかりとしておいた。(^^;
下社を後にしていよいよ山頂に向けての山道に入る。いきなりの石段に息を弾ませながら登ると「何丁目」と書いてある石碑がよい目印になってくれるようになる。「16丁目」で尾根に合流し、「20丁目」を過ぎてヤビツ峠からの道と合されば頂上は近い。石段をくぐって登り着いた頂上にはハイカーがちらほらいる程度だった。(10:37)
大山は信仰の山だけあり、初詣をかねての登山者が多いせいか大晦日に登るハイカーの数は本当に少ない。明日からは大にぎわいの山頂なのだろうが。
今日は塔ノ岳までの長丁場なので休憩もそこそこにヤビツ峠をめざして下る。下る途中から先日降った残雪が凍り付いた斜面があらわれて緊張する。一応軽アイゼンは持ってきたがそのまま下る。峠への途中から表尾根が遠望できる場所がある。ニノ塔や三ノ塔は遙かに遠く感じる。ましてや塔ノ岳ははるか先。うーん、さすがに弱気になる。
11:20 ヤビツ峠着。普段の表尾根ハイキングはここが出発点だ。いつもより2時間は遅れている。簡単な食事をとりすぐ出発するが、この頃より空から霰が舞い始める。めざす三ノ塔もガスがかかり始める。
毎回思うのだが、ヤビツ峠の先、富士見茶屋から二ノ塔までの登りが一番つらくていやだ。とりたてて急なわけではないが展望のない一本調子の登りが延々と続く。今回はヤビツ峠以降は三ノ塔と書策小屋以外では休まないと決めているので、ただモクモクと下を向いて登った。この時間に表尾根を歩く登山者はいないので寂しいくらいだ。春秋のシーズンでは考えられない。
二ノ塔を根性で越えて三ノ塔へは12:41着。風がゴーゴー唸っているので慌てて避難小屋に入ると、夫婦連れと単独行者がいた。聞けば大倉から登ってきてここから引き返すとのこと。これから塔ノ岳に向かうと話したら「この風でよく行きますね。」と同情されてしまった。
三ノ塔からは終始強風が吹きまくるコンデションで、下り斜面には残雪が凍結しているのでヤッケと帽子を目深にかぶり慎重に歩く。行者ヶ岳の鎖場に着く寸前に中年女性パーティーに追いつく。見ると足下が危なっかしいので鎖場では先に行かせてもらう。新大日の登りから振り返ると件の女性パーティーはまだ鎖場で難渋しているようだった。「しまった、ついていて下からアドバイスしてあげればよかった。」と悔やむがこちらも急ぐ身。申し訳ないが先を行かせてもらった。
13:43 書策小屋着。振り返れば越えてきた大山、三ノ塔、烏尾山、行者ヶ岳の各峰が視界に飛び込んでくる。けっこう歩いてきたなあとわれながら感心する。ここまでくれば塔ノ岳は近い。とはいえ、雪解けのぬかるみ道と強風に逆らっての歩き疲れでペースはがくんと落ちてしまい、ガスにおおわれた塔ノ岳に着いたときはぐったりだった。(14:31)
大山のバス停から歩きはじめて5時間24分。やはり体力は確実に落ちてきているのが実感できたのはさびしかった。心配していた肩の痛みは少しだけ。ホッとした。
尊仏山荘に泊まるのは高校2年生以来だから実に35年ぶり。今夜は大晦日だというので小屋の中はごった返していた。ある大手旅行会社の「初日の出&百名山ツアー」の団体客やグループ客などで大にぎわいだった。
以前、北八つの山小屋で年越しをした時は、大晦日に樽酒や元旦にお雑煮などが振る舞われたがここでは残念ながらそういうことはなかった。しかし、山頂からの眩いばかりの夜景を眺めて大感激。これ以上はないごちそうだった。
【コースタイム】
大山ケーブル駅(9:07)---大山不動(9:28~31)---下社(9:45~47)---大山頂上(10:37~41)---ヤビツ峠(11:20~35)---三ノ塔(12:41~55)---書策小屋(13:43~54)--塔ノ岳(14:31)
■1月1日 晴れのち曇り

7時ちょっと前に東の空 -江ノ島のすぐ上あたり- から2004年の初日が登った。雲の縁が輝き始めると見る間に太陽が昇りだした。うーん、やはり来てよかった。昨年のいやなことはすべてこの太陽に溶かしてもらって、新しい年に望みを託したいという素直な気持ちになれた。自然と手を合わせている自分がいた。
7:12 塔ノ岳山頂発。今日は昼から年始の挨拶に行かなければならないので最短の大倉をめざす。いきなりの急坂と階段で右膝を軽く痛めてしまい、ペースはスローダウン。たいして歩かない花立山荘で休憩を余儀なくされる。ついでに「名物」のお汁粉をいただく。
あとは小草平までの間、たくさんの人に抜かれながらも足をかばいながらノンビリと下った。9:40にようやく大倉に着いたらバスが発車したばかり。大声で叫んだらバスが止まってくれたので飛び乗り渋沢へ。車中から振り返ると塔ノ岳が翼を広げるように大きく高く見送ってくれていた。
【コースタイム】
塔ノ岳(7:12)---花立山荘(7:32~50)---大倉(9:40) (記:Nob)