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越後 八海山~中ノ岳縦走

 越後三山のうち八海山だけは過去2回失敗して登り損ねている。1度はGWに行ったときに、途中の小屋で「鎖は撤去してあるので、ザイルなしには登れない」と言われ、スゴスゴと退散し、2度目は夏に荒沢岳から入り八海山へ抜けるつもりが、荒沢岳から先の藪漕ぎで時間を食いすぎ八海山は断念する羽目となった。今回は八海山から入山し、何年かに渡る宿題を果たすこととした。



■6月16日(土) くもり、一時小雨
 八海山神社で安全登山を祈願してから登山を開始。しばらく登ると、前方の登山道を猿の群が占拠している。私の気配に気づいた1匹が道の脇の木を伝わってこちらに近づいてくる。一瞬襲われるのかと身構えたが、以前に屋久島で同じ様な状況でボス猿が歯をむき出して突進してきたときに比べ、今回の猿の顔には敵意は見られず私の様子を窺っているようであった。

 群には子猿もいたので、自分がオトリとなって注意を引きつけておき、その間に子猿を避難させようとしているのだなと察知し、子猿が避難し終わるのを確認してから前進したところ、問題なく通過できた。とんだハプニングであったが、無事に終わったのは安全祈願の御利益かな。これからもこの調子でいってほしいものだ。

 千本檜小屋には13時半に到着。これから中ノ岳まで小屋はないので前進するかどうかを検討する。ここに泊まってしまうと2日の行程では駒ヶ岳までの縦走は不可能となる。体調も天候もまずまずなので前進したいが、中ノ岳までは8時間以上かかるのでビバークとなる公算が強い。稜線には残雪が豊富なので水場の心配なくビバークできると考え、前進することとしたが、このときの判断の甘さが後で重大な問題を引き起こすとは…。

 八海山の岩場は鎖が整備されており問題はないが、雨で濡れていてフリークライミングとは別の難しさがあるので、慎重に進んで行く。大日岳から五竜岳までの間は問題がないが、五竜の先からオカメのノゾキまではイヤらしい下降が延々と続く。オカメのノゾキあたりで暗くなってきたが、ここで初めて岩稜帯は雪がないことに気づく。

 今回は残雪があることを前提に食料計画をたててきたので、水なしビバークとなると、満足な食事は望めないこととなってしまう。ライトをつけて1時間程度前進するが、依然として雪はあらわれてこない。今の時間は21時、朝から連続13時間の行動である。

 体力的にはまだしばらくは歩けそうであるが、コースタイムでは2時間となっている祓川の水場まで行くとなると、ライトをつけての岩稜と迷いやすい難路は危険すぎると考え、水なしビバークを行うことする。幸い灌木に囲まれた平坦な土地で、転落や落石の危険もない絶好のビバークプラッツを見つけツェルトを張る。とっておきの缶ビールだけを飲み終えて横になる。


■6月17日(日) くもりのち晴れ
 夜中に息苦しくなって目がさめる。ツエルトが重みで垂れ下がり、ツエルト内の空気がほとんどなくなっていた。あわてて外の空気を入れた後、ツエルトを張り直すのも面倒なので上半身を起きあがって体をポール代わりとして夜が明けるのを待つ。なさけない格好ではあるが、今まで経験してきた苦しいビバークを思い出して、今日は上等の部類だなと自分を慰める。と同時に、いい年をして昔と同じことをやっている自分が可笑しくもあり、反面いとおしくもなってくる。

 夜が明けるとともに、菓子を食べ、水筒のわずかばかりの水を飲んで出発する。皮肉なことに100メートルも進むと、豊富な雪田があるのを発見。荷物を下ろすのも面倒なので、そのまま行き過ぎる。祓川の水場は雪渓の下であったが、雪を溶かして遅い朝食を摂り、中ノ岳への最後の登りに備える。ここでまたミスを犯してしまった。雪渓には多数のトレースがあったが、下から見る限り、それらはすべて藪の中に消えていたのである。よく考えれば、今見える藪が雪に覆われていたときのトレースなのであるが、そのときは気づかず、一番はっきりしているトレースを通って藪の中に突っ込んでしまった。

 格闘すること2時間で頂上直下の草原に辿り着いてみると、下から見ていた雪渓の左端が上部までつながっており、その雪が消えているところからしっかりした登山道が頂上に延びているのであった。
 体力と約1時間の時間のロスの影響を中ノ岳頂上で検討する。このまま駒ヶ岳まで足を延ばすと最終の新幹線ギリギリとなってしまう。明日は仕事もあることだし、駒~中ノ岳は駒から尾瀬へ縦走したときに歩いたこともあるので、今回は駒ヶ岳は諦め十字峡に下ることとする。

 頂上で写真をとってから下降を開始。ところが、緊張の糸が切れてしまったのか、十字峡への下りでバテバテとなってしまった。中ノ岳を往復してきた高齢の登山者と抜きつ抜かれつをする有様であった。でもその彼の車に乗っけてもらうことになり、炎天下の車道を1時間以上歩くことをせずに済んだのはラッキーであった。



 今回は豊かな自然に巡り会え、念願も果たして充実した山行であった。上越の山々は北アルプスほどの派手さはないが、高度の割には実に懐が深く魅力的な山域である。今回の山行で主要な稜線は登ったこととなるが、この山域を本当に知るためには、利根川や只見川の源流に深く入っていかなければならない。

 それは私にとって荷が重すぎるので、せめて上越国境尾根完全縦走を成し遂げたいと思っている。残すは巻機-朝日岳と三国峠-白砂山ですが、近いうちにぜひやってみたい。 残雪期には快適な稜線漫歩が可能ですし、夏期は藪漕ぎの楽しさ(苦しさ)が味わえます。どなたかお付き合いしていただける方がいらっしゃいましたら、声をかけてください。(記 vibram)

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