北アルプス 黒部源流~雲ノ平 渓流釣り紀行
源流での豊漁。1時間で1年分を楽しんでしまったような気がした。
去年の同じ時期に新穂高温泉から三俣蓮華岳~黒部五郎岳~赤木沢を巡る山旅を楽しんだ。そこで今年は黒部源流を遡行、雲ノ平まで登ることにした。
雨で半日停滞したが、源流では岩魚釣りも楽しみ今年も充実した山旅になった。
【メンバー】 杉(47歳)単独
【山域】 北アルプス北部
【地図】 「三俣蓮華岳」「薬師岳」(以上1/25000図)
【日程、時間、天気】
28日(雨) 6時有峰林道ゲート
6時40分折立駐車場
9時50分太郎平小屋
10時10分薬師峠キャンプ場 幕営
29日(晴れ) 4時15分出発
6時15分薬師沢小屋(ここから源流歩き)
7時40分赤木沢出合
9時15分五郎沢出合
11時40分源頭
13時30分雲ノ平キャンプ場 幕営
30日(快晴) 3時10分出発
4時55分薬師沢小屋
7時15分太郎平小屋
9時20分折立駐車場
10時50分北陸道立山IC 13時木崎湖ユープル温泉
15時15分韮崎戻り
■詳細
27日の朝自宅を出発したものの、数日来北アルプスの天気は思わしくない。
そこで寄り道して中央アルプスの木曽駒ケ岳と宝剣岳に日帰りで登った。そして富山県に向かった。車中で仮眠して28日の5時に有峰林道入口のゲートにつく。
ゲートが開くのは6時とのことで、コーヒーを沸かして朝食を摂る。
6時40分に折立登山口に駐車して出発。重量は18kgくらいだろうか。
途中で雨が本降りになった。古いゴアの雨具は中まで濡れてしまう。
コースタイムより速く3時間で太郎平小屋に着く。まだ時間が早いが薬師峠のキャンプ場に向かった。トイレ、水場ともに非常にきれいな幕営地である。
さっそくテントを張り、中に逃げ込んで、着替えてホット一息いれる。
豪華な昼食を作り、満腹になると眠くなってきた。連日帰宅が遅く睡眠不足、昨夜も車で仮眠しただけ。午後はぐっすりと眠て過ごす。いくらでも眠れる。
雨は激しく降っているが、テントのなかはまずまず快適である。
夕方目覚めて、夕食を作り、ホットウイスキーを飲む。小豆島産もろみ味噌のピーナッツがおいしい。心に染みる味がする。夜7時にはまた深い眠りに落ちた。
29日3時に目が覚める。北アルプスの天気予報は曇り時々霧とのこと。
雨もあがったので、ヘッドランプをつけて4時15分に出発した。
雨に濡れたテントや着替えでずっしりと重い。黒部源流への出発点となる薬師沢小屋に向かって、なだらかな山を下っていく。
小屋でトレッキングシューズから渓流シーズに代えヘルメットを着用する。
昨日までの雨で水量は多いが、危険はないと判断して、踏み込むことにした。
本流を何回も渡渉するのでストックが役立つ。源流とはいえ、この付近の流れは急で水量も多い。赤木沢出合まで、数カ所左岸の淵の上を高巻くが踏み跡はある。
最後の高巻きは30mほどあり、草付きの下降が悪かった。初心者がいれば、ロープを出して懸垂が必要な個所だろう。
2時間あまり歩いて、赤木沢の出合についた。この付近でフライフィッシャーマンに出会う。唯一出会った3人だった。
しばらく行くと、足元を黒い影がひんぱんに走ようになった。岩魚である。
さっそくテンカラ竿を出して毛ばりを振りながら遡行する。左にストック、右手に釣り竿。頭にはヘルメット。これが黒部源流の正しい歩き方であろうか。
いきなり25cmの良形がヒット。写真を撮ってリリース。しばらく行くとまた釣れた。このあとも全てキャッチアンドリリースで、結局全て放流した。
当初は源流で幕営、岩魚を塩焼きにして一杯の計画だったが雨で断念した。
渓流釣りもこんなに釣れると1時間で1年分を楽しんでしまったような気がする。
この後、右から五郎沢、左から祖母沢、祖父沢を過ぎて、大きな雪渓に出会う。
数100mの雪渓が何箇所もあり、シュルンドが開いているし、いつ崩壊するかわからないので、端の方を慎重に進む。単独だから落ちたら終わり。
正面に三俣蓮華小屋付近のなだらかな稜線が見える頃は雪渓歩きに終始してフィナーレも近い。そして5時間と少しで一般道に出て遡行は終了した。
雲ノ平で幕営の予定であり時間もあるので、ゆっくりと景色を眺めながら歩く。
豊富な残雪、青空、高山植物、正面には薬師岳の大きな山容が見える。左には雲がかかった黒部五郎。南を振り向けば、三俣蓮華岳と北鎌尾根。
午後の1時30分に雲ノ平の幕営地に到着した。昨日雨で濡れた衣類やらを乾かし小屋で買ったビールを飲む。夕方の6時までテントの外にいてコーヒーやホットウイスキーを飲んだりして、のんびり時間を過ごした。
30日、朝2時起床。テントの外に出てみると風は強いが空には満天の星。
太郎平の稜線の向うに富山市街の明かりがうっすらと見える。
テントを徹収して3時10分、真っ暗な中を出発する。しばらくは良く整備された木道であるが、薬師沢小屋に向かう急降下の山道は、ヘッドランプだけでは手ごわかった。
明るくなった頃、薬師沢小屋は見えてきた。ここで沢登りの人達がいたので赤木沢までのアプローチ情報を教えてあげた。雲ノ平から来たと言ったらビックリしていた。それはそうだろう、まだ朝の5時前だから。
朝日が差し込む明るい笹の原を太郎平まで登り返す。時々振り返り写真を撮る。
そして黒部源流の山々に別れを告げて、折立までを駆け下った。
■感想
下山日30日の富山県地方はフェーン現象で40℃近い猛暑だった。
それでも天気は快晴で、北陸道を北に走りながら、剣、立山の姿が素晴らしい。
薬師岳も太郎平も見えるが雲ノ平はもちろん見えない。わずか7~8時間前に雲ノ平にいたことが夢のようである。高速道が黒部川を渡るとき、川の水が少ないのに気がつく。あれだけ豊富な源流の流れはどこへ行ってしまったのか、不思議な気がした。途中しっかりと昼食を取り、糸魚川から大町に向かう道では渋滞に会い、木崎湖のユープルで汗を流しながらも、午後3時15分に帰宅。
雲ノ平から12時間で帰宅できたなんて、信じられないような気がした。
2泊3日で北アルプスに入りながら、全くピークを踏まない山行もはじめてである。たまにはこんな山旅もいい。 山梨の<杉>