北岳バットレス第4尾根 ~2021.7.22-24~

dakekanba-admin

山域:南アルプス
日程:2021.07.22-24
メンバー:すけちよ、Qちゃん、レイザー

行程

7/22(木) 7:00 広河原 → 白根御池小屋 → バットレス下部岩壁(偵察) → 白根御池小屋(テント泊)
7/23(金) 3:30 白根御池小屋 → 5:30 バットレス下部岩壁 → 10:00 第4尾根 → 17:00 北岳山頂 → 20:00 白根御池小屋
7/24(土) 8:30 白根御池小屋 → 広河原 → 帰着(バス、電車)

 


今回、念願の北岳バットレスに行ってきましたので備忘録と感想をレポとして残しておきます。

■ギア、装備類
・アタック前日に取付きを下見する際は装備類を現地にデポすると翌日が楽。(食料は入れないこと)
・ピバーク装備がクライミングに負担がかかる程の重さになったのは反省。
・カムは1セット(定番の5~6サイズ)あれば十分。その他のギアは小川山マルチピッチ同等でよい。
・私個人、水2リットルでは肩の小屋までギリギリだった。(登攀時期によります)

■クライミング技術、体力
・小川山の左稜線程度の体力と技術、高度感の経験があるとよい。
・カムが使えること。
・難しい核心ピッチはA0であればクリアできるのでおかしな言い方だがA0ができること。
無駄な力、時間を費やさないことも大事。

■ルートとルートファインディング
・新しいピトンはない。あるのは岩の色と同化したかなり古いピトンしかなかった。
・四尾根下部の横断バンド(切り立った崖のトラバース)を横切るとCガリーの大滝のガレ場に突き当たるのでそこを四尾根沿いに登りつめると左側に「4」のペンキの箇所がヒドンガリー(ヒドンスラブ)の入り口と思われる。
ここを突き進めば四尾根の取付きテラス(1P目)に出るはず。
我々は「4」のペンキの前に左上したので四尾根の取付きテラス(1P目)の下で少し迷ってしまいました。

■感想
やはり、四尾根の取付きテラス(1P目)までが核心でした。いかにここに早くたどり着けるかがキーになります。
(SNSやネット情報がない頃の会長や微苦笑さんはルーファイに苦労したのだろうと思いました)
我々もこのテラスの下部で少し迷ったものの、先行した3パーティよりも我々が先にテラスに着いたのには驚きました。
というよりも3パーティの方がビックリしていました。
岳樺クラブがこの1P目を最初に取付けるのは気分がよかったです。

ちなみに今回取付いていたパーティー、岳樺クラブ以外はみんな若い。おそらく私が最年長ではないか。女性も半分はいたと思います。
1P目から進むとクライミング本やネットで見たフェースやクラック、マッチ箱、リッジが次々と現実となって現れることに感動しました。
午後になるとガスが出始め、遠くでは雷の音が聞こえてきた。頼むから降らないでくれ、と何度も願う3人。
その願いが叶ったのか、雨が降り出したのは終了点から登山道に向かう時。ご褒美に鮮やかな虹まで見ることができました。

未明3時出発、20時御池小屋着の17時間におよぶチャレンジが無事終了。冷えた祝杯ビールは最高でした。
今回のバットレスは2月の腰の手術後初の重山行となるため不安であったが、レイさん、Qちゃんのフォローがあって行けたのだと感謝してます。
またバットレスは毎年会長が何度も勧めてくれたコースだったが、行きたい人が集まらずくすぶっていたところにレイさんが計画して実現できたことに重ねて感謝したい。
こうして念願のバットレスに登れたのも会の皆さんのおかげです。今後ともよろしくお願いします。

@すけちよ

 


一面のお花畑に虹🌈
こんなに素晴らしいゴールが待っていたなんて…

新田次郎の〝銀嶺の人〟
そこに出てくるバットレス。あんな場所攀じることができるんだということを知り、いつの日にか攀じてみたい!と思うようになった。
今回ようやく本格的にチャレンジする事が決まった矢先になんと!
ぎっくり腰をやってしまい毎日指圧と針治療をしてなんとか普通に動けるようになったものの途中で動けなくなったらどうしよう💦という不安を抱えながらの参加となりました。

竜少年、微苦笑さんからの情報、トポをみると四尾根の取り付き迄が最初の核心。
今回いくつもある取り付きの中から選んだ五尾根支稜からの取り付きを入山日に偵察に行き、立ちはだかる岩壁を前にし、私がリードできる場所は限られていると思った。

翌日、五尾根支稜に着いた時には既に何パーティも取り付いており長丁場が予想された。

いよいよ我々の番、憧れていたバットレスへの挑戦だ。1p目をリードさせてもらい、その後はすけさん、レイさんにバトンタッチ。


ザレたバンドのトラバースや源次郎尾根のようなブッシュの中の踏み跡を辿りようやく四尾根取り付きに到着、意外にも広く安定したテラスで大休止。
ここまで来たからにはもう1pリードさせてもらおうという気持ちになり2p目をリード。この頃から晴れていた空にはだんだんと厚い雲が立ち込めはじめ雷も轟きだした。
〝神様、仏様〜どうか我々を安全に終了点までお導き下さい”

もう祈るしかない。この先には核心の城塞ハングがあるというのに…
四尾根の取り付き手前で抜かしたパーティも含め、我々の他3パーティが混戦状態。皆考えている事は同じで我先にと割り込んでくる。

確かに時間との勝負ではあるがロープが絡んだり、ほとんど同時登攀で危険極まりない場面もあったが、かつての枯れ木のテラスまで辿りつき見下ろすと崩壊した岩が堆積していた。
ひぇ〜まるで岩の墓場みたいな感じである。かつては城塞ハングを通らなくても終了点まで行けたらしいが…見上げると先行パーティがロープをしまっている。
あともうひと踏ん張りだ。でもその前にナイフリッジのトラバース。腰引けながら通過して最後はなりふり構わずAOしまくりで終了点へ。と同時に雨が降り出した。
あ〜やっと終わったんだ。感無量というより放心状態に近かった。

一般登山に出た時には18時近く。肩の小屋のテン場でビバークも想定していたが皆の体調も良く白根御池小屋のテン場まで帰ろう!となった。
山頂を踏まず最短の八本歯経由で帰る予定だったが、視線の先に人の姿が見えすぐ近くに山頂がある事が判明。
北岳山頂にて記念写真を撮った時に完登できたんだな。という気持ちになった。

どんな場所でもそうだが、実際に行ってみないとわからない事はたくさんある。
今回も無事に完登し下山できたのは信頼できる仲間がいたからこそ。
ビビリで蝸牛のような歩みの私ですが、これからも宜しくお願いします。

@Qちゃん

 


ああ、憧れの北岳バットレス♪
バットレスを目標に、この1年間少しづつグレードを上げて山行経験を重ねてきた。

不安材料は、会長曰く「第4尾根取り付きに辿り着くまでが最大の核心である!」
そこで7月初旬にドリさんと下見に行ったが、生憎の大雨で広河原にさえ辿り着けなかった… (^^;

そこで、初日は白根御池小屋にテント張った後、休む間もなく早速下見へ。
c沢-d沢間から一般登山道を外れ、踏み跡を頼りに樹林帯を抜けると「ド-ンッ!」とバットレス下部岩壁が現れた。


「おー!あれがピラミッドフェースで、あれが十字クラックか!」テンション急上昇⤴ ♪(´▽`)
しかし、至る所に抜け落ちたハーケンが転がっており不安が募る...

第5尾根支稜の取付きで岩と同化した残置支点をQさんが発見!
すけさんリードで1ピッチだけ攀じり、岩やルートの感触を掴み安堵する。


ここで他パーティが荷物をデポしにやってきた。
我々も見習って、ガチャ類とロープをビニール袋に包みデポしてテン場に戻る。

翌朝3:30出発。星空がきれいだ。「どうか、今日1日天気が持ちますよーに!」と願う。
直前までビバークセット(約2kg)を持参するか悩むが持っていくことに。
二俣の分岐を過ぎる頃から夜が明けてきて、振り返ると鳳凰三山が綺麗なシルエットを映し出していた。

前日に荷物デポしたお陰で体力消耗せずに5:30頃取付きに到着。
モルゲンロートのバットレスにウットリ、心奪われる。

第5尾根支稜は既に1パーティ(4人組)が1ピッチ目を登り終え、3パーティ(2人組、4人組、2人組)が待機していた。

<6:30 第5尾根支稜の登攀開始>
1ピッチ目(Qさん):20m(Ⅱ)
この半年間のQさんの成長ぶりは凄まじい。
今回もダブルロープでトップバッターを志願してくれた。

2ピッチ目(私):50m(Ⅲ+)
カンテ~リッジ~平坦なテラスに出る。

ここからロープレスでdガリーのルンゼを攀じる。


すると途中から異臭がし、上からウジムシがコロコロ落ちてくる…
息を止めてdガリーを攀じり終えると「ウギャー!」、腐敗したカモシカの死骸が、、、
「ここは地獄か?」 ( ゚Д゚)

気を取り直して、ここから横断バンドのトラバース。


ロープを出し、ザレザレの崩落箇所を慎重にトラバースするのだが落石は免れず「ラクー!」の連呼。
下に人が居ないのが幸いだった。
トラバースを終えるとcガリーにぶつかり、ロープレスでcガリーをつめて赤ペンキらしきものを発見、
「ここがヒドンスラブ入口だ」と踏跡を辿っていくと、先行パーティ(4人組)にバッタリ出くわす。
どうやら我々と異なるルートから攻めているようだ。
後日分かったことだが、我々はヒドンスラブ入口手前の樹林帯ルートを経由して第4尾根取付きに辿り着いたようだ。
何はともあれ、ここで先行パーティを抜いた。

<10:00 第4尾根の登攀開始>
1ピッチ目(すけさん):40m(Ⅳ+)
4尾根核心の一つ、ツルツルのクラック
すけさんがリードしてくれたお陰で、躊躇せずにフィスト+ハンドジャムを利かして攀じれた

2ピッチ目(Qさん):20m(Ⅲ-)
cガリー側のフェースを攀じる

3ピッチ目(私):45m(Ⅲ)
白い岩のクラック。緩斜面で快適に攀じれた

4ピッチ目(すけさん):40m(Ⅳ+)
小垂壁(A0せずに攀じれなかった)を越え、リッジを辿るとマッチ箱の頭
この辺りからガスってきた!

5ピッチ目(マッチ箱の懸垂下降):15m
最初どこに降りたら良いのか迷ったが、すぐ下に次のビレイ点を発見
国内最高地点での懸垂ポイント、3人で写真撮影に盛り上がる

6ピッチ目(私):40m(Ⅳ)
右側コーナーを登り、途中から左のフェイスに移り直上してクラックを行く
ルーファイに戸惑ったが快適に攀じれた
振り返ると切り立ったマッチ箱が!

7ピッチ目(すけさん):30m(Ⅳ)
凹角を上がってリッジに出て枯木テラスへ
ここで3パーティが重なり渋滞発生(我々はトップで終了点に到着)


しかも、遠くでゴロゴロ雷が鳴っている!
「神様、どうか終了点まで雨が降りませんよーに!」と祈る (>_<)

8ピッチ目(私):20m(Ⅳ)
城塞ハングのトラバース。
リッジに手を伸ばして体を預け、足場はフリクションを利かしながらトラバース


途中左手に掴んだ岩がグラっと動く! ( ゚Д゚)
ビレイ点はやや傾斜が強く、マッチ箱を背後にハンギングビレイ

9ピッチ目(すけさん):30m(Ⅳ+)
最終ピッチ、薄く被ったチムニーで核心の一つ
残置ハーケン多く、迷わずA0で攀じる

<16:00 登攀終了!>
ガチャ類・ロープを片付ている途中でパラパラと雨が降り始める。
靴を履き替え、北岳山頂に向けて歩いている途中で振り返ると虹が!


「あー神様、祝福してくれてありがとう!」 (^^)/

<17:00 北岳山頂>
ラッキー!登山客がいたので、会旗を広げて記念撮影♪

<20:00 白根御池小屋へ無事帰還!>
ビバークせずに済んだよー (´Д` )

<所感>
昨年の前穂北尾根と同様、ビッグウオールのアタックは
スキル・フィジカル・メンタル・天候・時の運、
そしてチームワークの材料が全て揃って達成できるものだと改めて実感しました。
すけさん、Qさん、ありがとうございました!

北岳バットレスに憧れ、岳樺クラブの門を叩いて早2年。
ついに念願が叶いました! (^^)v
これまで鍛えていただいた会の皆様に深く感謝します。

@レイザー