まさかのラッセル!阿弥陀北稜 ~2019.4.20~

dakekanba-admin

山域:八ヶ岳 阿弥陀北稜
日程:2019/4/20(土)
メンバー:ムー(L)、すけちよ(SL)、Qちゃん


記憶に残る山行を目指して・・・
4年前のGW前、Nobuさん(OB)に“連れて行ってもらった”阿弥陀北稜+赤岳主稜(その際の記録はこちらをクリックください。)
たった1日の山行でしたが、経験したことで、「連れて行ってもらう」から「自分でルートを探してチャレンジする」ために必要な自信や経験を得られ、その後の登攀への挑戦へとつながった!と言えるくらい、最も大きな影響を受けた山行の一つです。今回は、ただバリエーションルートを登攀するだけでなく、私がしたような「経験・きっかけ」をすけさん、Qちゃんにも与えられたらと思い計画しました。

2月までほとんど積雪の無かった八ヶ岳も、事前に調べると3月以降は積雪が増え、一週間前にも積雪があったので念のため美濃戸口に車を停め出発する。美濃戸から先の残雪は「融ける→凍る」を繰り返した結果、斜面だろうが関係なく地面の全てを氷の世界に変えていた。想定よりも早いがアイゼンを装着して進む。

行者小屋でハーネス・ガチャ・ヘルメットを装着し北稜へ!予想はしていたが、北稜へのトレースは僅かな痕跡程度しかなかった。「北稜であれば大した距離・標高差ではないさ!」とラッセルを開始するが、これが想像以上に深い。樹林帯部分の急登では膝以上まで埋まり苦しめられ、森林限界を超えても脛程度までは埋まる。何度も登って「近い」と思っていた北稜が今日は遠い・・・。

第1岩峰手前の急登になる所から、ロープをつないでグズグズの雪面をジリジリと上がる。4年前は、ここで「ドロイツーリング」なんて冗談に、笑いをこらえながら泥にピッケルを刺して登っていたのがウソのようだ。さすがに岩峰には雪は無かったが、雪でビレイ点が隠れていたので岩にスリングをかけてビレイする。快晴無風で岩は素手で触ると暖かかったので素手で登るが、今まで印象には残らなかったナイフリッジでは、リッジ部に積雪があり、そこに手を置き進んだので「雪が崩れるのでは?」という事と「実際に手が冷たい」ため、Wでヒヤヒヤでした。

人間と言うのは不思議なもので、1つ心配事が解決すると次の心配事が生まれてくる。あれほど遠かった山頂が迫ってくると、今度は下山のことを考え始める。元々の計画で行けば中岳方向に下りるのだが、もう、この時点で主稜をやろうという気力も体力もなかったので、どうすれば安全で体力的に楽なのかと・・・。

北稜を懸垂するのは50mロープ1本で時間はかかるが、ラッセルの心配はなく、想定外に疲労し残りエネルギーの少ない我々にはベストの選択か・・・、中岳への激下りは、グズグズの雪なので危ないし、その後に文三郎道への合流までがラッセルで少し登る、文三郎道を下りていくと距離も長くイマイチ・・・。

悩んでも解決しない悩みは多いが、今回の悩みは悩んでいたら答えが浮かんだ。御小屋尾根だ!御小屋尾根ならば、山頂から摩利支天付近の岩場を越えてしまえば、比較的安全なルートだ。ただしラッセルとなると下りだが距離は長い。これ以上は、ここで悩んでも仕方ないので山頂で考えることとし、最後の登りを進んでいると、山頂に人が・・・人がいるではないか!山頂は、お地蔵さんのみが雪上に現れているだけの雪だらけ、初めて見る光景でしたが、初めて見る光景よりも嬉しかったのは山頂にいた方が「御小屋尾根を上がってきた」と聞いたことです。

そして、覚悟はしていましたが、長~い御小屋尾根を下って車に戻ったのは日没直後。出発してから13時間も経っていました。翌日は、阿弥陀南稜に行こうかと計画を立てていましたが、もみの湯でサッパリしてから3人で相談した結果「GWに影響のないようにしよう」ということで全員の意見が一致して帰宅することにしました。
将来、自分の登山史を振り返った時に、転機となるような山行になればと今回の山行をイメージしていましたが、今年の忘年山行で今年の山行を振り返った時に「苦労した!」山行として思い出せるかどうかという、記憶に残らない山行だったかも知れません。(行動時間ベスト10にはランキングされるかな(;^ω^))

山(特に雪山)は「毎回登る度に違う山なんだ(それくらい条件が変わる)」という事を、今シーズンは体験させられることが多く、GWも例年どおり岳沢を予定しているので、山がどんな姿を見せてくれるのか楽しみです。そして、山の条件が変わっても対応できる能力を身につけないといけないと感じた山行でした。
ムー

昨年のクリスマス山行で天候不良で途中敗退した阿弥陀北稜。
今回は快晴無風の中、楽しむことができました。・・・と、言いたいところですが、この4月になってから積雪がかなりあったようで、行者小屋の先の分岐からラッセルが始まりました。

途中でムーさんがわずかな踏み跡を発見して、そこに追従していくとやっぱり足の沈み方が違います。そこから少し楽なラッセルになりました。

途中、傾斜がきつくなった半ピッチもないところでも無理せずロープを出してクリアします。

おととしの無雪期には登ったことはあるのですが、すっかり忘れている私。
ムーさんはコースを知り尽くしており、リードする私に対して
「この先は大きな岩があって、そこにペツルが打ってあって・・・」
「この上にはナイフリッジがあって、その先はビレイポイントがないので・・・」
とアドバイスをしてくれてとても助かりました。

山頂に着くと御小屋尾根から来たという2人の登山者に記念写真を撮ってもらいました。
計画書ではここから文三郎尾根を下り、赤岳主稜を登ることになってましたが、ラッセルのせいかけっこうな疲労を感じたのと、右足カカトに違和感(靴ズレ)を覚えていたのでここで下山としました。
下山は文三郎方面の積雪が多いことから御小屋尾根を選択。

御小屋山から美濃戸山荘に向かうショートカットの林道はあの昨年の爺ヶ岳(記録はこちらをクリックください。)の最後の100mを彷彿させるような急斜面で、途中はアイスバーンとなったため無理せずアイゼンを履きなおし無事、美濃戸山荘に到着できました。
先日の上州武尊山は不参加でしたが、今回の阿弥陀といい、同じ山でも積雪、雪質によって難易度が変わってしまうことに驚きました。そういう意味ではよい経験となりました。
帰りのお風呂でカカトを見ると、1円玉大の水ぶくれが。あら~、来週からのGW山行、どうなるんでしょう?(^^;)

前回のリベンジが果たせたとはいえ、終わってみれば結構疲れました。
靴ズレができても楽しめたのはこれまで会を築いてきてくれた会の皆さんのおかげです。
今後ともよろしくお願いします。
すけちよ

前夜発1泊2日で阿弥陀北稜、赤岳主稜、阿弥陀南稜をやるという“てんこ盛り”な計画をすけさんとむーさん2人で行く予定を3月に立てていたが天候不良で中止となり、GW前にリベンジするというではないか。この三稜をこなすのは私には無理だが、昨年末に登れなかった阿弥陀北稜だけでも登りたい!と参加表明をした。
仮眠場所から八ヶ岳山荘へ。美濃戸山荘までの道路は凍っている箇所もあるとの情報を得て、ここから歩き出す。美濃戸山荘までの道はなんとか先頭を歩くむーさんに付いて行けたが、行者小屋までの道では間が空くばかりだ。「この先大丈夫か?」と早くも不安になる。

やっと行者小屋へ到着する。テントがひと張りもない⁇…むーさんによると以前この時期に来た際(記録はこちらをクリックください。)にも同じような状況だったらしい。GWに向け山行を控えているのではないか?とのこと。ギア類を装着し北稜へ向けて歩みを進め、しばらくするとトレースはなくなりラッセルが始まった。重く湿った雪に足を取られ、なかなか前に進まず体力は消耗するばかり、先頭になっても直ぐに交代^^;思い返せば今年はラッセルをしてばかりの気がする…

北稜灌木帯~核心部岩稜まではかなりの急傾斜でロープを結ぶ。立木で支点を取りながらリードのすけさんが順調にロープを伸ばしていく。ロープがいっぱいになり私が登って行くと、「次リードできる?」と。ここなら大丈夫!

のはずだった。第一岩峰が見えそこまで行けるかと思いきや目測を誤りまさかのロープが足りない事態に💦私はスタンディングアックスビレーでロープを固定、中間のむーさんが腰がらみですけさんをビレーする羽目になる。これが岩だったらと思うと命取りだ。

その後、すけさんがリードで第一、第二岩峰を超えて頂上が目前となった。「トレースがある!」とむーさんが歓喜の声をあげる。今まで全くトレースもなく北稜は貸し切りだったからだ。山頂に着くと先客がおり、聞けば船山十字路から御小屋尾根を登ってきたとの事。ここに来るまでかなりの時間を要し体力的にも赤岳主稜は諦め、最短で下山するコースを決めあぐねていただけに下山コースは直ぐに決まり、暫く山頂で360度のロケーションを楽しみ下山した。

今回天気に恵まれ、渋滞もなかったが「ロープワークなどスムーズに行う。」「積雪期に行くルートは無雪期に登っておく。」ことの重要性を感じた山行となりました。全くペースが上がらず最後まで足でまといでしかない私を始終気遣って下さったお二人に感謝です。
Qちゃん