【PreGW】阿弥陀岳北稜&赤岳主稜

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山   域: 南八ヶ岳 阿弥陀岳北稜および赤岳主稜
日   程: 2015/4/25
メンバー: Nobu、Muu
2015 年の GW、岳樺クラブでは北アルプス白馬岳への山行(3ルートからの登攀)が予定されています。そこで GW 直前の土日には、PreGW 登攀と題してトレーニング山行が行われました。(Muu 記)
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私(Muu)が報告する今回のルートは、美濃戸を早朝に出発し、行者小屋経由で阿弥陀岳北稜を登攀。その時点で時間に余裕があれば、赤岳主稜を登攀、文三郎尾根を下山し美濃戸まで戻るという日帰りの欲張りコースです。もともとは3月初めに予定されていたものですが、事情により延期していました。
メンバーは、Nobuさんと私(Muu)。私は昨夏に入会して以来、初の2人だけでのアルパイン挑戦なので、計画時から緊張していました。その主な理由は、ロープワークです。そこで、リードで登ることはないにしても、セカンドとしての最低限の役割を果たせるように、事前に出来ることはやっておかないといけない。そう考えて、ロープワークは毎月実施している会のトレーニングを思い出したり、個人的に訓練をお願いしました。また、Nobuさんの脚に付いていく脚力も大事だと丹沢へも登りました。
やれることはやったという状態で、前夜発の待ち合わせ場所である都内某所へ夜10時頃に集合しNobuさんの車で出発!緊張して普段以上におとなしい(!?)私に、運転手であるNobuさんが話しかけるという、自動車教習所の教官が聞いたら注意したくなる状態で八ヶ岳PAに到着。PAで仮眠をする予定であったが、まだ12時前だし暖かいので美濃戸まで入ろうと判断し、美濃戸へ移動。途中、美濃戸口で登山計画書をポストに入れて再出発。出発してみると凄い悪路で、Nobuさんと2人で笑ってしまうほどの車の揺れ。この揺れで私は、雪の無い美濃戸へ行くのは初めてだったことに気付きました。
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美濃戸で、駐車場へ車を滑り込ませ、早々に就寝。・・・が、暖かいので窓を少し開けて寝ることにします。朝4時過ぎに起きて、5時前の明るくなり始める時間に出発。先頭はNobuさん。最初から速いペースです。私は最初から飛ばしてバテないように気をつけて足を進めます。「そろそろ身体が温まってきたかな」という時間を過ぎても、呼吸の苦しさや足の疲労は変わらず・・・。要するにNobuさんの脚ですね。F1風に言うと「Nobu脚(注:セナ足より)」です。そのスピードでルート確認しながらのNobuさんに対して、私は足元だけを見る余裕しかなく、何も考えずに付いて歩きます。
行者小屋までの半分を来たあたりから雪が残っていました。雪道は岩や段差を消してくれて有難いといつも思っていますが、この時期は踏み抜きが多く苦労します。特にルートを外した(道を譲ったり、ルートを間違えた)瞬間に片足が膝まで埋まり、スピードが出ていると危険を感じるほどです。突然、F1のハンガリーGPを思い出しました。コースであるハンガロリンクサーキットは、レコードライン以外はコースが汚れていて、追い抜きをしようとコースを外れた瞬間に、タイヤのグリップがなくなりコースアウトしてしまうのです。(例えが悪いので、分からない方はそのままで良いです。本題はこれからなので。)途中で阿弥陀岳や赤岳が見えてきました。そこには、雪は所々にしか残っておらず、それぞれ北稜と主稜の岩場付近は、完全に雪がないように見えます。そんな感じで行者小屋に到着。ここで登攀具(ハーネス、ギア類)とアイゼンを装着し、まずは阿弥陀岳の北稜を目指します。それにしても、今日は登山者が少なく感じます。美濃戸から行者小屋までは、誰にも会いませんでした。さすがに行者小屋にはテントが数張りありましたが、ベンチには誰もいません。今日のルートでは混雑で渋滞があると、待ち時間が長くなりそうだったので、空いている方が良いのですが・・・。
準備を整えて北稜へ。まず、稜線へ上がるのが急登でピッケルを使いながら登りますが、ここで頭の中に「ピッケル、足!ピッケル、足!」と言うある人の声が大きくなってきました。それは雪上訓練で同じような急な斜面を歩く際に竜少年が「ピッケル、足!ピッケル、足!」と言っていた声です。まさに同じ状況だったので、落ち着いて登っていけました。そして、それに応じてなのか、運動会の入場行進の練習で、息が合うまで校庭を行進させられていた時に、体育の先生が笛を吹きながら「左!左!」と叫んでいたことも思い出します。
そんな風にしながら稜線に上がりますが、稜線上でも急登は続きます。そのうち、雪が無い場所も出てきました。ここでNobuさんがアドバイスをくれます「ピッケルを泥に刺して、確保しながら登ってね。ドライツーリングならぬドロイツーリングかな。。。」、私はそういうのに弱いので笑ってしまって、緊張の場面も無駄な力が入らずに、リラックスして登ることができました。登り始めは、はるか遠くで登山者を待ち構えていた岩峰も間近に迫ってきました。近づくにつれて忘れていたロープワークへの緊張感も出てきます。まずは、第一岩峰。左側から見える範囲は雪や氷もなく、割と登りやすそうな感じです。ロープをザックからはずしていると、まずはNobuさんが登って様子を見て、私もそのまま登れそうならロープを使わない。逆に危なそうなら上からロープを下ろすということに決めます。そしてNobuさんは、スルスルと登って「大丈夫!」と声をかけてくれます。私も3点確保を頭に入れながら、慎重にクリア!続いて第2岩峰も同様にクリアしました。クリアしたと同時に、頭の片隅には「次の主稜では必ずロープを使うはず!そこがポイントだ!」という思いが湧き起こります。その不安が頭の片隅にしかなかったのは、岩峰を過ぎてからナイフリッジを超え、山頂までの登りで余裕がなかったからでしょう。山頂は無風で、360度のパノラマを楽しみながら、しばらく座って食事をしたり、Nobuさんから南稜や各ルンゼの説明をしてもらったりと、まるで全てが終わったかのような、まったり具合でした。
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しかし、時間はまだ朝の8時半を過ぎたところ、次の主稜に向かいルートを山頂上から確認。まずは急激な下り、そして中岳への登り返しと下りを経て、登って文三郎尾根へ合流、「んっ!?ここも、ほとんど雪がない道」。しかし、どこか危険なポイントが隠れているかもしれないので、アイゼン装着のまま出発。Nobuさんの言葉を借りると「アイゼンが可哀想になるくらい」の状況です。F1で例えると、路面が乾いた状況の中を雨用のタイヤで雨が降るか?降るか?と我慢して走っている状況である。(今度は分かり易かったかも♪)
阿弥陀岳から中岳への下りは、思い出すと一番嫌な区間でした。急激な下りでガレた岩場、そしてアイゼン装着状態。緊張の連続が続きました。しかも、アップダウンが続き脚の疲労が蓄積されていく・・・。遠くに見えていた文三郎尾根との合流地点に到着し少し下って、いよいよ主稜へ取り付きます。北稜から主稜の順番は、陽のあたる時間をNobuさんが考慮して選びました。朝から陽のあたる北稜は最初に済ませて、西面の主稜を後にする。ちょうど主稜への取り付きで有名なチョックストーンに着くころにお日様がのぞき始めました。ここで、アンザイレンしNobuさんリードで登攀開始。最初のチョックストーンを乗っ越すのは、下に雪があれば雪の高さの分だけ楽なはずだが、雪が全く無いので左右の脚を開いてジリジリと上げていく。乗り越えたNobuさんから「もう大丈夫(というような)」声を聞きました。また、Nobuさんの姿は見えなくなりましたが、シュルシュルと一定の速度で引き出されていくロープを見て安心して自分のするべきことに取り組めました。そのうち「ビレイ解除!」の声が、岩だらけの壁に響きます。私は落ち着いて「解除しましたー!」と叫びます。すると手元に僅かに残っていたロープがスーッと引かれて「ロープいっぱーい!」と叫ぶ、Nobuさんから「どうぞー!」の声、チョックストーンの乗っ越しだけは、Nobuさんの動きを見れて良かった。とにかく同じようにして乗っ越す。そこからは、ロープの進んでいる方向へとひたすら登って1ピッチ目が終了。2ピッチ目も最初は「ちょっと角度があるな」という感じで高度もあるので、私はドキドキしないように振り向かずに登った。そこを越えてからはコンテで登り、最後にもう1回Nobuさん私の順で確保しながら登った。今回は風も少なく私たちだけなので、声も良くとおりました。すんなりと縦走路へ合流できてホッとしました。赤岳山頂では、穏やかな風に当たりながら食事休憩とともに、ロープやハーネスをザックにしまいます。今度こそ終わったという安堵感に包まれます。・・・が、時間は12時にもなっておらず、Nobuさんも「小同心とか予定に入れておけば良かったな~♪」と呟いています。私も調子に乗って「そうですね~♪」なんて言いながら実は、体力は限界です。2人ともそんな冗談が言えちゃうくらい順調だったということで、文三郎尾根で行者小屋に下りてアイゼンを外します。ここから美濃戸までは、意外と面倒な道のりで、何度も踏み抜いてしまって体力的に余裕のない状態で、時間的な余裕がカバーしてくれて何とか美濃戸へ無事に下山しました。
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車に着いて、まずは残置しておいたコーラを飲みます。冷えていなかったけれど、とても美味しい!美濃戸口までの悪路を進む際、大きく揺れるたびにコーラから泡が浮かんでは消えていく。その様子を見ていると、まるで疲れが消えていくような・・・はずもなく、下山した時間も早かったので、もみの湯で疲れを取って帰りました。いよいよ次回GWは、白馬岳です。今回の経験を活かして、安全で楽しい登山を目指します!

(NOBU感想)
2月以降、まともな長い登攀をしていなかったので、連休前のトレーニングをかね、かつ若干欲張ったつもりで計画しました.この数年の連休時八ヶ岳で一番雪がなかった分、時間的には予想以上に早くこなせたものの、若干欲求不満.でもMuuさんの成長を感じることもでき、二人で楽しませてもらいました.主稜は雪がないと岩がボロボロで、かえって難しいかも、という気もしました.体力はもう下り坂一方だけど、今回は取り付きまでと終了点以降でMuuさんにザイル持ってもらい楽させてもらいました.このスタイルを今後の会山行時のスタンダードにしてもらえるかな…!!?」
よろしく。