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不完全燃焼の乾徳山・旗立岩中央岩稜

■日程 2008年11月9日(日) 前日に乾徳山大平牧場に車で入りテント泊
■目的地 奥秩父 乾徳山・旗立岩中央岩稜
■メンバー 竜少年(L)、tomo(SL)、HINA、Hammer

■コース
大平牧場→大平登山口→国師ヶ原→扇平→旗立岩中央岩稜頂上(支点整備)→乾徳山頂上→(迂回新道)→国師ヶ原→大平牧場


奥秩父の南部に位置する乾徳山には頂上付近に「旗立岩」というなかなか立派な岩稜帯がある。ロープスケールで3ピッチ90m程あろうか。
旗立岩を中心とする頂上岩壁群は、幾本かのリッジで構成され、山頂部西面をぐるりと支える形となっており「ミニ滝谷」といった様相をみせてくれている。

この岩場はかなり古くから登られているようであるが、近年では「岳人」2000年11月号の特集で一般に知られるようになった。
当会でもこれまでに数度訪れているが、残置支点の類はほとんど腐食劣化しているため、今回確保支点の整備を行うためにはりきって入山したのだが・・・



■11月8日
11:30 西船橋駅/集合・出発 →(HINA車)→ 15:00 大平牧場

■11月9日 曇りのち雨(頂上付近はガス)
4:40 起床。
5:50 大平牧場を薄暗い中、ヘッドランプを点灯し出発。
大平登山口から、枯れすすきをかき分けながら、林道まで進む。林道に出ると、木々は葉を落とし、落ち葉が敷き詰められていた。静かな晩秋(初冬?)の雰囲気を満喫しながら登った。
しかし、気分良く登っていたためか、林道から道満尾根に上る分岐を見過ごし、国師ヶ原まで下ってしまい急斜面を扇平まで登ることとなった。扇平は、野焼きの後が残り、見上げると、乾徳山頂上方向はガスで視界が閉ざされていた。

急斜面と岩稜帯(クサリ場)を通って、しばらくすると、旗立岩中央岩稜の頂上部に着く。(8:30)
旗立岩中央岩稜は、風の通り道になっていて、とても寒い。
視界15~20m程度のガスと吹き上げる風、気温1.8度C…。皆、アウターと手袋を装着。素手で長時間岩を触っていられないため、登攀は難しいと竜少年の判断だが、2・3ピッチ目終了点の支点整備(ボルト打ち)はやろうということになった。

ボルト打ちはHINAさん、後のメンバーはフォローに回った。ガタガタ震えながら、鼻水を垂れ流しながら(汚い…)作業を開始。
まず、3ピッチ目の終了点(頂上)に電動ドリルで岩に穴を開け、ボルトをセットし支点を作る。寒さでバッテリーが弱っているせいか、岩にドリルがなかなか入っていかない。割れやすい岩なのに、岩自体は硬いのか…。ここに2箇所の支点を作った。

2ピッチ目の終了点には、懸垂下降で移動する。懸垂で移動するには、トラバースが多いので、時間がかかる。
まず、HINAさんが移動した後、私が移動した。懸垂姿勢でさらにバックアップも取ったので、のろのろとしか移動できず、非常にもどかしい。

2ピッチ目の終了点は、比較的、風の影響を受けず過ごし易かった。ボルトの位置決めを行い、いざ、ドリルを取り出そうとした瞬間、ドリルの先端部が落下…。
ここで、作業終了となった。あっけない幕切れ。残念。

3ピッチ目の整備した終了点を使用して、竜少年にビレイをしてもらい、私、HINAさんともに、アプローチシューズのフリクションに気を使いながら登り返し、撤収した。

10:30 旗立岩中央岩稜の頂上から乾徳山頂上へ向けて出発。途中の15m程度のクサリ場で渋滞。
クサリ場では、4人ともクライマーの片鱗を見せ、クサリを使用せずに登った。今回の中でクライマーらしかった瞬間だった。

10:45 乾徳山頂で少し休憩を入れて、11:00過ぎには、原生林の迂回新道を下山。国師ヶ原経由で大平牧場まで戻った。
迂回新道は、思ったより、岩や大きな石がごろごろしていて険しかった。途中で小雨が降り始め、しっとりして非常に静かな下山になった。
13:35 大平牧場着。
(記 tomo)



■感想
旗立岩中央岩稜の終了点は乾徳山の縦走路という絶好のポジションである。
が、今日はガスが巻いて風も強く寒い。カラビナに触るとペタペタと手にくっ付くような感じがしてとても素手で触る気にならない。
縦走路から少し岩場を横に進んだ地点のハーケンにビレイをとってFIXを張る。その一段下にボルトを2本懸垂用として打つ。HINA君ガンバル。まるで「白い巨塔」そこのけに、ドリル、ボルト、ストローと外科の先生が言うと看護婦がメス、などと言って手渡すシーンが目に浮かぶ。
そこから懸垂で更に下って(2ピッチ目の終了点)にボルトを打ちに降りる。アシストとしてtomoちゃんが続く。岩場が横に走っているので、思うように進まない。
寒さのせいか。あぁっ!という声がする。ドリルの錐が落ちたーッ。う、落したか。ここで作業は終了。あー、無事でよかった。
いやいやそれにしても寒かった。やはり2,000mあたりでのクライミングはこの時期は適当でないなー。
また、終了点からの懸垂下降による支点工作は、ラインがほぼ真っ直ぐなルートには向くかもしれないが、ここのように一部水平トラバースなどがあるとなかなか難しいものがある。次回はやはり下からの工作が望ましいと思われる。
(記 竜少年)

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残念ながら寒さとガスのためにボルト打ちのみとなってしまったが、下山途中に雨となったので、無理して登らなかったのは賢明な判断であったと思う。
それでも旗立岩の上部1ピッチ(3ピッチ目)だけでも登ることはできたので、アルパインっぽい雰囲気は味わうことができた。

また、眺望はほとんどなかったものの、国師ヶ原から稜線にかけてのハイキングは気持ちよく、頂上も踏めたのでけっこう楽しい山行だった。
ドリルの刃を落としたのは反省。
(記 HINA)

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夕方になり、晩秋のテント場は肌寒くなってきた。夕食はHINAさんが用意してくれたつくね、豚肉の入ったきのこ鍋。竜少年のおごりの地元ワイナリーで買った新酒・無ろ過白ワインがこれにピッタリだった。
アルコールに弱い私もすっかり気持ちよくなってしまった。最後に玉子入りの熱々雑炊が、これまた美味だった。あっという間に胃袋の中にすっ飛んでいった。
翌日、頂上直下は厳しかった。寒さで全身がガタガタ震えて止まらない。激しく吹き付ける寒風の中、岩頭で支点整備するHINAさんとtomoさんが流れるガスの中に浮き上がって見えた。「もう終りにしよう」と竜少年が言った。

下山途中、霧雨から冷たい雨に変わった。道は雨に濡れた枯葉の絨毯。時々、濡れて一層鮮やかになった赤と黄の落ち葉が一面に広がっている所があった。そこだけパッと明るかった。テント場は静まり返っていた。山はもうすぐ冬だった。
(記 Hammer)

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