秋晴れの八ヶ岳・小同心クラック
■日程:2008年10月18日(土)~19日(日)
■場所:八ヶ岳 横岳西面小同心クラック
■メンバー:竜少年(L)、HINA(SL)、tomo、Hammer(計4名)

「今年の秋は小同心クラックを登ろう!」というのが今年の会の目標の一つでした。
とにかく今シーズンは週末になると決まって天気が悪くなるというパターンが続き、なかなか満足のいく山行ができません。
その鬱憤を晴らすべく小同心クラックを9月に登ろうという計画を立て、メンバーも決まり、よし行こうと思ったら、またしても週末の天気が悪いという予報となってしまって一旦は延期となった計画でした。そして再び計画を立て直して今回の山行に臨んだというわけです。
スケジュールの都合で行けなくなってしまったメンバーもいて残念でしたが、結果はお天気の神様がやっと許してくれたのか、今年一番のすばらしい秋晴れの中で最高のクライミングと景色を満喫することができた、チョー気持ちいい山行でした。
10月18日(土)晴れ
午前7時に西船橋駅に集合して車で出発。多少の渋滞はあったものの、3時間半ほどで美濃戸口へ到着。
ゆっくりと身支度を整えて歩き始める。山の中腹は紅葉真っ盛りでのんびりと景色を楽しみながら赤岳鉱泉を目指す。
午後2時前には赤岳鉱泉に到着するが、少し遅れて到着したtomoさんは調子が悪くて寒気もするようである。
小屋は個室にチェックイン、tomoさんには明日の朝までに良くなってもらうために、すぐに布団を敷いて横になってもらう。
後のメンバーで大同心稜の取付まで偵察しに行くが、踏跡は簡単明瞭である。
赤岳鉱泉の泊り客は30人程、混んでいなくて快適、夕食はサンマの塩焼きと鶏の鍋という下界と変わらぬ立派な食事であった。
夕焼けに染まる大同心と小同心はとても綺麗で素晴らしかった。
10月19日(日)晴れ
今日も朝から快晴。赤岳鉱泉の気温は零度。
納豆、焼き鮭、海苔に味噌汁という山小屋の朝食。朝食の時間が6:30からということで、出発は7:00と、ちょっと遅め。
残念ながらtomoさんは体調を考えて今日のクライミングは諦めることにしたので、3人パーティで登ることとなった。余計な装備は小屋に置いて出発する。
硫黄岳に向かう登山道を3分ほど歩いて大同心沢の踏跡のほうに入る。登山道と言ってもいいくらい良く踏まれた霜柱の立った大同心稜の急な踏跡を大同心を目指して登る。
最初のうちは林の中で景色は見えないが、高度をあげて次第に木々がまばらになって視界が開けてくると、正面には大同心の岩壁が迫り、右側には赤岳と阿弥陀岳、そして背後を振り返ると北アルプスから中央アルプスにかけてのパノラマが広がり、素晴らしい景色である。
約1時間ほどで大同心の基部へ到着。小同心には既に登っている人が見え、さらに小同心の取付に向けてトラバースをしている4人のパーティもいて、やはり人気ルート、我々だけではなかった。
ここからは大同心ルンゼのガレ場を少し下って小同心に向かって登り気味にトラバースしていくのだが、踏跡は結構分かりづらくトップを歩いていたHINAが少し登りすぎてしまいミスコース、懸垂下降でトラバースルートに戻ることになってちょっと時間を食ってしまい、小同心の基部まで結局2時間ほどかかってしまった。
それでも先行パーティがまだ1組、これから登り始めるところだったため、広い取付でゆっくりと景色を楽しみながら支度をする。幸い取付は陽が射して風もなくてポカポカと暖かくて気持ちいい。しかし先行パーティの登るほうから小石が時々落ちてくるので、決して気を抜いてはならない。
40分ほど待ってようやく先行パーティが見えなくなったので、トップHINAで登攀開始。
1ピッチめ(Ⅳ-)
左上のチムニー状のところを目指して登る。ホールドは豊富で思ったよりもずっとしっかりしていて登りやすいが、念のためホールドチェックをしながら登る。
ハーケンは少ないが、岩角にシュリンゲを巻いてランニングビレーを取ることができ、上のほうには確保支点と思われるペツルボルトも2箇所あるので安心である。
上部のチムニーもホールドは豊富で技術的に特に難しい所もなく40mほどでテラスに到着。確保支点はペツルが2本しっかり打ってある。
終了点にはまだ先行パーティが詰まっていたので待っている間に少し話をしたが、どうやら一番先頭のクライマーがソロで登っていて時間がかかっているらしい。
2ピッチめ(Ⅳ)
テラスから右に回りこんでチムニーを登る。やはりホールドは豊富で中に入り込まずに両手両足を突っ張って登る。
またビレーピンは少ないが、岩角やチョックストーンなどを利用してランニングビレーを取っていく。
上部は直上するクラックと右上するルートに分かれるが、直上するほうが面白そうなので真っ直ぐ登る。高度感はあるが楽しい。
40m弱で稜線上のペツルボルト2本のテラスに到着。ここからは横岳頂上から稜線にかけての縦走路が見えてたくさんの登山者が歩いているのがよくわかる。
Hammerさん、竜少年もとても楽しそうに登ってくるのでうれしくなる。
3ピッチめ(Ⅲ)
左上するバンドを登ると10mくらいでヒョコっと小同心の頭に着く。あまりに短くて拍子抜けするくらい。
ここにもしっかりとペツルボルト2本の確保支点がある。
小同心クラックとしてのルートはここが終了点である。クライミングシューズを脱いで靴を履き替え、ここからコンテで岩稜伝いの踏跡をしばらくたどっていくと、横岳頂上直下の急な壁に突き当たるので、最後にもう1ピッチロープを出す。
30mほどのⅢ級のピッチ、今まででこのピッチが一番ハーケンが多かったかもしれない。
しかし特に難しいところもなく、横岳の頂上に直接飛び出すことができるのでとても気持ちが良い。
頂上の岩角にシュリンゲをかけてビレーをする。後続のHammerさん、竜少年を迎えて登攀終了。皆でがっちりと握手、お疲れさまでした!いや~楽しかったです。
頂上からの眺めはまさに絶景、360度、全方位見渡すことができる。
白馬から槍穂高連峰、御嶽山に中央アルプス、甲斐駒、北岳などの南アルプス、富士山も秩父の山々も全部見せてくれた。
今年の天気の悪かった週末の分を、まとめて全部お返ししてくれたような天気である。
いつまで見ても飽きない景色だけど、帰らなくてはならないので少し食事をして登攀用具をまとめて硫黄岳経由で下山を開始する。
横岳直下の鎖場を下ると、あとは景色を見ながら気持ちの良い稜線歩きが硫黄岳まで続く。
硫黄岳の頂上で最後の眺望を楽しんで赤岳鉱泉へと降りていく。
赤岳鉱泉でデポしておいた荷物を回収して、あとはひたすら美濃戸口まで歩くが、最後は結構荷物が堪えた。
ちょうど今、四国でお遍路をされている微苦笑さんは毎日毎日これ以上の距離を歩いているんですよね~、すごいですよね~などと話をしながら少しでも気を紛らわせる。
そしてようやく美濃戸口の駐車場で、体調が悪くて先に下山したtomoさんと合流して無事に山行を終えることができた。
帰りの高速は小仏トンネルで事故があったらしく大渋滞になったが、思ったよりは早く(21時前)に西船橋へ到着して解散したのでした。
無雪期の小同心クラックルートは、全体の行程からみると実質的なクライミング部分は短いけど、それを差し引いてもロケーションは最高だし実に気持ちの良い、楽しいアルパインクライミングができるお勧め3つ★のルートでした。次はぜひ冬に登りたいですネ。
(記:HINA)
■タイム
1日目 美濃戸口(10:50)---美濃戸(11:40~12:00)---赤岳鉱泉(13:40)
2日目 赤岳鉱泉(7:00)---小同心取付(9:00~9:40)---小同心の頭(11:00)---横岳(11:30~11:50)---硫黄岳(12:40~12:50)---赤岳鉱泉(13:50~14:05)---美濃戸(15:30~15:40)---美濃戸口(16:30)
■感想
【竜少年】
今年春以降、天候に恵まれず中止山行や転進ばかりが続いた。が、今回はこれ以上無い天候に恵まれ山行することができた。多分、神様が哀れんで、「ま、久しぶりに登らせてやるかー。」やっぱり神様はいるんだ、と思えた。
さて、小同心クラックであるが、従来、八ヶ岳西面の登攀は“冬季”と決まっていて無積雪期に登れるとは思わなかった。
思った以上に岩場そのものがしっかりしていて、浮石など殆ど無く、チェックした岩は全て硬くしっかりとしたホールドを与えてくれた。
肝心のところにはベツルがバシッときめてあり、ホールド、スタンスの豊富さに加えて安心感がまるで違うのである。多少被っているところでも難なく越えられる、嬉しい限りだ。
まあ、アイゼン、手袋での登攀とは比べ物にならないが、岳樺クラブの推奨ルートの一つにし、岳樺12景に加えたい位だ。
赤岳鉱泉から急登で2時間、登攀終了後美濃戸口まで4時間半はチトきつい。が、それはそれでアルパインの香りが楽しめるのではないか、と思う。
さて、TOMOちゃんは残念ながら体調不良により赤岳鉱泉でお留守番になってしまったが、次回はやってくれると期待している。
【Hammer】
広い取付けから見上げると、右斜めから朝陽が射しているが、左上のチムニーへと向かっているラインが黒い影になっていた。
HINAさんがリード、流れるようにランニングビレィをセットしながら登ってゆく。コースのハイライトは2P目のチムニーで、ホールドとスタンスは沢山あるがすばらしい緊張感・・・
縦走路のある横岳の頂上に飛び出した時は感動!!無風・快晴で360度の展望は、これまで何度も縦走時に見た風景とは全く違って見えました。
余韻を楽しみながらの下山途中、竜少年が「来年は全員で、大同心登ることにするか!」と言う。tomoさんが体調不良になったのはとても残念でした。過去、縦走していてもほとんど意識しなかった小同心・大同心が屹立していた。
皆さん、本当にお疲れ様でした。