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岳樺クラブの夏 静かな岩場でクライミング合宿

日程:2008年8月14日(木)~16日(土)
場所:御坂山塊・J岳の岩場
メンバー:竜少年(L)、Nob(SL)、微苦笑、tomo、HINA、Hammer、KAZUTAN(計7名)



今年の夏はどこに行こうかと春ごろから集会のたびに検討を重ねてきました。

穂高や北岳バットレスなどが候補地としてあがり、本チャンに向けた岩トレを三ツ峠などで行うことで気分は高まっていきました。

しかし梅雨の時期はことごとく土日に雨が重なって十分な登りこみが出来ず、本チャンのルートは現実的に難しくなってしまいました。

お盆の時期の混雑ぶりや岩場での順番待ちを考えるとこれはと言える次善の候補地はなく、どうしようかとギリギリまで悩んだ末、今年の夏は秋に向けての登攀技術の向上をテーマとして、2泊3日の予定でJ岳クライミング合宿を行おうという話にまとまりました。

メジャーではないJ岳であれば我々だけの静かなクライミングを楽しむことができるのではないかと予想してのことでしたが、結果的にはとても得ることの多い楽しい合宿となりました。(開拓者への配慮から正式な名前や場所は伏せさせていただき、ここではJ岳としています。)


■8月14日(木)晴れ
予想どおり中央道の渋滞に巻き込まれたものの、キャンプ場に午前10時半ころには到着できた。予定以上に早く着いたので、早速午後からクライミングへと出かける。

キャンプ場から取り付きまでのアプローチは車5分と歩き30分ほどの道程である。アプローチの急斜面にはロープが張り巡らされていて、開拓者には感謝である。

岩場の第一印象は、とても整備されていて静かな環境、岩質もフリクションが良く効きそうな感じで、小川山の喧騒から逃れて来てよかったと思えるような岩場である。

高差20m、幅40mくらいの正面壁を中心にして、さらに右左に回りこむと壁があり、正面壁の右手、小さなルンゼをはさんだ向かいには高差80mのマルチピッチで登れる岩峰がそびえていて、その裏側にもハング帯のある岩場があり、いくつかのルートが開かれているようである。

この岩場のトポはなぜか公開されていず、過去に来たことのあるメンバーが登ったルートと、登れそうなラインを手探りでトライするという結構チャレンジングなクライミングである。

以下のグレードも我々の体感でつけた勝手グレードなので悪しからず。

まずはウォーミングアップ、正面壁の手ごろなルートからということで、tomoさんが右側のカンテ沿いのラインを登ってトップロープをセットする。

グレードはIV級ほどで難なく登る。同時にHINAが、その少し左手の小ハングの間を抜けていくラインを登ってトップロープをセット、グレードは5.7くらいか。

全員でこの2本をトップロープで登って足慣らしをしたり、確保技術の再確認をする。とにかくここの岩場は上部のビレーポイントも非常に整備されているので安心して登ることができる。その後、難しそうな小ハングを越えるラインをトップロープでトライする。

5.10cくらいだと思うが、ハングを小さなホールドで左右から抱え込むようにして左足を上げる1ムーブが非常に厳しく、HINAが数トライでなんとかクリア。

続いて自称肩を壊しているというNobさんも頑張ってクリア、そして最年長の微苦笑さんも驚異の粘りでクリアし、皆を驚嘆させる。


最後は一番右手にある凹角の右側フェースに走るクラック限定ルートをトップロープでトライ。

グレードは5.8くらい。

クラックに慣れていないとフットジャムが少し難しくて、そのあと小ハングを越えるところまでが核心である。

今日のところはこれくらいにして、あとは明日のために他の岩場のルート偵察などを行って下山する。


バンガローに戻り、夕食の支度。メインはカレーライスだが、キュウリやトマトや冷奴のほか、各自の持参したつまみ類なども加えて豪華なメニュー。

冷えたビールも買ってきて、暑かった一日を振り返りながら乾杯する。

酒もご飯も美味しくて大満足の夕食だったが、Nobさんはご飯の出来に少々不満げだった。

明日はどこを登ろうとか話しは尽きないが、翌日のことを考えて今日のところは早々に寝た。

■8月15日(金)晴れ
今日も朝から良い天気、高原の空気は清々しくて気持ちが良い。納豆に生卵、梅干と海苔に味噌汁という日本の朝食を食べて出発する。

今日のメインはマルチピッチにトライということで、まずはHINA・微苦笑・Hammerのパーティで右岩峰の正面3ピッチのルートに取り付く。


【右岩峰正面ルート】
1ピッチ目
III級のスラブで、ボルトもかなり打ってあるのでフリクションを効かせて快適に登る。終了点のテラスまで25mほど、立派な支点がセットしてある。

2ピッチ目
一転して傾斜が急になり、まずは頭上に見える、我等、岳樺クラブが昔セットしたというリングボルトを目指してフェースを直上する。

このピッチは支点の数はそこそこあるもののあまり新しいものでなく、岩も若干アンサウンドな部分があったりして本チャンルートっぽくなる。

特に上部の古いペツルが2本打ってあるあたりは高度感もあって、ホールドも剥がれそうなものがあったり細かかったりと緊張する。


最後は4~5mほどランナウトするが終了点のバンドに到着し立派な支点にセルフビレーを取ってほっとする。

30mほどのピッチでV級のフェース。

しかしこのテラスから見る景色は最高で、湖や山がとても素晴らしく登った甲斐があった。

フォローの2人も緊張しながら登ってきた。

3ピッチ目
テラスから直上するボルトラインがあってフリーでトライしてみるも、若干かぶり気味で難しく、恐くなって降りる。フリーで登ればVI級以上はあると思う。

後で考えたらA0で登るという手もあった。直上はあきらめて、右側へトラバースしブッシュの生えた凹状のラインを登る。しかしここはプロテクションも少なくあまり登られている様子ではないようだ。

10mほど登った立木でビレーをする。グレードはIV級くらいか。フォローの2人を迎えて登攀終了。とても高度感のある本チャン気分の味わえる面白いルートだった。3ピッチを登り終えて、懸垂で取り付きへ下降した。

一方、残ったメンバーは昨日同様にトップロープを張って正面壁を登りこんだ後、3ピッチのマルチルートに取り付く予定であったが、我々の2ピッチ目の最後のランナウトを見て、今回はパスすることとなった。

その代わりに竜少年、Nob、tomoの3人で正面壁の右側を回りこんだ側壁に新しいペツルのボルトが連打してある、面白そうな垂壁フェースの新ルートをトライしに行く。

その間、Hammerさんは新入のKAZUTANさんに確保とトップロープでのクライミングを熱心にレクチャーしてくれている。

【正面壁左スラブルート】
またHINA・微苦笑の2人は正面壁左側のスラブにトライ。小川山のようなスラブ気分で取り付く。

8mほど登ったところにある1本目のペツルのボルトからが核心で、少し傾斜も急になり細かいホールドで体をあげて外傾した小スタンスに立ち込むという微妙なムーブが何度かあり、3本目のペツルのボルトの上まで緊張の連続というルートである。

リードでの体感グレードは5.10aかb位だろうか。パワーはいらないが、バランスと自分の足を信じて立ち込むという思い切りの必要なルートである。

フォローの微苦笑さんは苦労しつつも、いやーすごいすごいと言いながら楽しげに登ってきた。


【正面右側壁ルート】
このルートを登っていると奥のほうでこちらの名前を呼ぶ声が。スラブルートを登り終え、トップロープをセットしてから行ってみると、先ほどの右側側壁の垂壁ルートで手こずっていた。

3人でトライをしたものの見た目と違って難しく、3本目のボルトから上がどうしても越えられないということで、HINAにトップを交代する。

3本目のボルトまでも結構微妙なムーブだが、その上は小さいホールドに耐えて外傾したスタンスに立ち込むというパワーとバランスの必要な厳しいムーブ、なんとか4本目のボルトにクリップ。

しかしそこから上も同じようにパズルを解くような厳しいムーブが連続し、6本目のボルトまで核心が続くというルートであった。

厳しいムーブが継続するので、リードでの体感グレードは5.10d、もしかしてイレブンという感じ。なんとか登り終えるが、3人は暑さもあってトップロープでも登る気力を失っていた。

しかし微苦笑さんは果敢にチャレンジし、見事にトップロープで粘りに粘って登りきり、皆から賞賛を受ける。

そして先ほどトップロープをセットした左側のスラブルートを交替で登る。皆スラブの微妙なクライミングを楽しんでいた。

自分の足を信じて立ちこめば不思議と登れるというスラブ登りは、意外と新鮮なものがある。


【左岩壁のルーフクラックルート】
最後は、正面壁の左側を回りこんだところにあるハングクラックにHINAがトライ。

見た目は若いとき登っていた三倉岳のハングクラックや小川山の最高ルーフを思わせるようなルーフクラックである。

新しいペツルのボルトが打ってあるので、リードでも思い切り登ることができる。核心はハングを越えるアクロバティックなムーブで、アンダークリングから庇のガバをとってルーフを越えるのだが、2回フォールした後になんとかジャミングを効かせたりしてクリアしたものの、ハングの上は思ったようなクラックではなくて苦労した。

その上部にも新しいペツルが打ってあるのでルートを迷うことはないが、あまり登られてはいないようで快適とは言い難かった。

グレードはハングを越えるところの数ムーブが難しくて5.10cくらいかな。トップロープをセットして降りるが、ハング帯の上部の岩が複雑で流れが悪い。

続いて本日絶好調の微苦笑さんがトライ。同じくハングの乗り越しに苦労しながらもまたも驚異の粘りでクリア。他の人たちを唖然とさせていた。本当に年齢を感じさせないすごい人である。

しかし、先ほどから何度かテンションをかけたりした結果、ロープが非常にダメージを受けてしまい、これ以上登ることは危険と判断して他のメンバーは残念ながらトライすることができなかった。

以上で本日のクライミングも終了した。HINAと微苦笑さんは充実したクライミングを楽しむことができ、他の方々もそれぞれ自分の課題や技術などを再確認したりと得ることの多い2日間ではなかったかと思う。

この後はキャンプ場へ戻り、温泉に直行。とてもいい湯で汗と疲れを洗い流すことができた。

そしてお楽しみの夕食、本日のメインはちらし寿司。Nobさんの執念で最高のご飯が炊き上がり、本当に美味しかった。その他、各自持ち寄ったおかずと冷たいビールで乾杯し、2日間の反省と楽しい話で盛り上がった。

計画では明日も登ることになっていたが、予定外に1日目に登ることが出来、明日は下り坂の天気予報なのと帰りの渋滞を考えて朝から帰ることになったので、夜が更けるまで微苦笑さんの美酒に付き合った。


■8月16日(土)
今日も朝から良い天気であるが、帰るのみである。

昨日同様に納豆に生卵、梅干と海苔に味噌汁という日本の朝食を食べて、ゆっくりと帰る支度をする。

それでも7時半ごろにキャンプ場を出発し、行きには4時間かかった道程を、帰りは2時間で走ることができ、西船橋駅に9時半には無事に到着することができた。

今年の夏は本チャンの山ではなかったが、お盆の3日間という時期に、我々だけで岩場を独占することができたというのは他のエリアでは考えられない、すばらしいクライミングとキャンプを楽しむことができた岳樺クラブの夏合宿でした。

トポがないというのはちょっと危険なクライミングのようにも思えましたが、この岩場はとても支点が整備されているので、無謀なことをせずに基本に忠実に登れば安全で、登れそうなラインを手探りで登るというのはちょっと冒険的な面白さもあってとても新鮮なクライミングでした。

最後にこのようなすばらしい岩場を整備していただいている開拓者の方には、心から敬意を表したい。
(記:HINA)



■竜少年の総括
今年の夏合宿の計画については当初北アルプス錫杖の前衛壁から始まって、滝谷、バットレス4尾根上下フランケ、そして明神東稜と候補が幾つか挙がっては消えていった。

その理由として時期的にお盆の真っ最中で混雑が予想されたこと、藤坂RGや三ツ峠で登攀力や確保力にウイークポイントが見えた事、特に確保力の向上が必要と思われた。

そこで本チャンへ行く前に其処のところを訓練する必要があった。

そのため、手近な岩場で、できればマルチピッチもできる岩場でミニ本チャンの経験をして登攀と確保の向上を計るということから今回のエリアを選んだ。


2日間岩場を独占して当初の目的の登攀力と確保力向上のための訓練を行った。

が、全体的な成果として登攀力はある程度向上した、と思われるが以下の点に未達成な部分があったと思われる。

一つには全員がマルチピッチでの確保経験が出来なかったこと。

また、リードクライミングを若手の二人に集中してしまったことである。

これは岩場の性格上、止むを得ないところもあるのだが、トライだけでもすべきであったとリーダーとして反省している。

ただ、個々のメンバーに今後のクライミングについて密かに期待した成果はある程度達成できたのではないか、と思っているし、それは本人が一番理解していることであるので、今後の研鑽にも期待したい。

何れにしても怪我も無く、全員無事であったことは本当に嬉しい限りである。

■微苦笑さんの感想
貸切の岩場でたくさんのルートを登ることができ満足しています。

岩も硬くホールドがしっかりつかまり、乗れて、スメアがきき自分の技術力を考えれば最高のゲレンデです。

右壁の3ピッチの楽しかったこと、景色のすばらしさ、TRでしたが左の垂壁を登ったことが印象に残りました。

また機会があれば参加したく思います。

■Hammerさんの感想
天候に恵まれ、爽やかな岩場でのクライミング、そして、他にパーティーが居らず貸切状態で優雅な2日間でした。

皆さんの限界まで力を振り絞りながら岩に挑む姿勢に、改めて「もっと頑張ろう」と強く思いました。
今後ともよろしくお願い致します。

■Nobさんの感想
超久しぶりの「ご飯奉行」。キャンプ生活はやっぱり楽しいですね。岩場では練習不足がもろに露呈してしまい、クライミング力の不足を痛感しました。

67歳にしてTRながら10dを一撃した微苦笑さんには驚嘆しました。私も肩痛をケアしながら頑張って練習を続けるつもりです。

■KAZUTANさんの感想
今回合宿に参加して、ビレーができるようになりました。
同時に、登れるようになることも大切、それ以上にビレーが確実にでき信頼される様になる大切さを学びました。
今後の課題としてバランス力をつける。
力をつけるためにクライミングジムに行かれるときに、となってしまいますが通うつもりでいます。
皆さんありがとうございました。

■tomoさんの感想
初日は、涼しく快適な練習ができました。2日目は、午前中、暑かったのと、初日の疲れが残っていたこと、また難しいルートを選んで敗退したこともあり、あまり意気が上がりませんでした。

クライミング技術の向上ということで望みましたが、課題だけが浮き彫りになった合宿でした。

  1. 根気よく良いホールドを捜す
  2. 細かいホールドでも保持する力を養う
  3. ホールドを効かす体勢を考える
  4. 体力、モチベーションを維持する
が今後の課題となりました。

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