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南アルプス 北岳バットレス・下部フランケ~上部フランケ

「バットレスに行きませんか」と錦少年から声をかけられた時には二つ返事でOKをだしたものの、めざすルートが下部フランケということを知ってからは不安と心配ばかりが先行してどうも気持ちが落ちつかなかった。
しかし、久しぶりに出かける錦少年との山行への期待の方が勝りその日を迎えることになった。



■8月2日(土) 晴のち曇り
5尾根支稜を目指す
 スーパー林道が土砂崩れで崩壊して、夜叉神峠経由のルートは通行止めのため、前夜奈良田経由で広河原に入山する。
 起床3時40分。広河原を4時半過ぎに出発する。荷物は極力軽くしているので快調に歩けた。二俣には6時半に着く。
さらに大樺沢を登り詰め、左岸から流入してくるバットレスC沢の右岸につけられた踏み跡に入りしばらくで下部岩壁取付きに着いた。今回は迷わずに効率よく行動できた。

【第5尾根支稜から下部フランケ取付へ】
第5尾根支稜2ピッチ目を登る。 Dガリー大滝のすぐ左手にのびているカンテ状の第5尾根支稜を登路とする。
Nobトップで取り付く。最初はDガリー大滝下を迂回して支稜末端へ(II)。ここでトップを錦少年に譲りそのまま登ってもらう。支稜2ピッチ目は残置支点も適度にあり快適なカンテ状の登りである。(III)

さらにNobが下部フランケ取付点まで草付きをトラバース。最初、左手にある顕著なDガリーを詰めようと途中まで登ったが、錦少年に注意されあわててクライムダウンで戻る。よく見ると、ここが下部フランケの取付きだった。


【下部フランケ】
1ピッチ目(Nob,40m+草付き帯5m V-)
Nobトップでスタート。見た目はどうってことないスラブ状のやや急なフェースだが、残置ピンがほとんどなく、最初の登りということもあり結構いやらしかった。
登るほどに傾斜が緩くなり、やがて草付き状の横断トラバース帯に達したところでピッチを切る。高山植物が咲き広々とした気分のいい所だ。ここで一休みし食事を摂る。

2ピッチ目(錦少年,30m VI)
下部フランケの核心部である2ピッチ目をリードする錦少年。<br />
1ピッチ目の終了点から5mほど上がった場所に確保支点があり、そこからスタートする。
ここは本ルートの核心部といわれているピッチである。トップは錦少年に交替。
フリーで越えればVI級といわれるだけあって、小ハングの乗越しから始まって急なフェース、草付き、くさび形ハング、クラックと実に多彩なピッチである。
行く前はここでアブミかな?って心配したが、登ってみるとピトン連打でアブミを出すまでもなくA0で登れそうだ。

トップの錦少年はA0をまじえながらも快調にロープを延ばしていく。上部のくさび形ハングの乗り越しではハンドジャムも使えたし岩も硬いのでフォローの私にとっても快適なピッチだった。

3ピッチ目(Nob,20m IV+)
 再びNobリードで登る。
このピッチは顕著な凹角をブリッジングで登る。手足を両サイドの壁に押しつけながら登るのだが意外と滑りやすかった。ま、いざというときには「残置ハーケンのスタンス技」があるのでなんとかクリア。最後にハングを左から越えて灌木の支点に確保を求める。

4ピッチ目(錦少年,25m IV+)
下部フランケ3ピッチ目の凹角をリード中のNob。 トップは代わって錦少年。ガイド本にあるとおり3ピッチ目とほとんど同じ形状の凹角を登る。上部のハングを左から回り込んで越えるところの岩庇下に、腐食して役立たずの残置ピンに代わって新たにハーケンを打つ。
しかし、これが災いのもとに。どうした訳かふだんは慎重な錦少年がハーケンにヌンチャクを直掛けしたため、ロープの流れが極端に悪くなってしまった。
庇状のすぐ下だったため、上の錦少年からも下の私からもロープが流れない原因がわからず、時間ばかりを浪費してしまった。
仕方がないのでロープ1本の確保で登ったNobが岩の隙間に挟まったヌンチャクを発見。外したら簡単にロープが流れてくれた。

5ピッチ目(錦少年,40m IV)
スラブと草付きジェードルを約10m登って、右に草付きバンドを左に30mトラバースする。
この頃よりガスがあたりを覆い始める。

6ピッチ目(Nob,15m 草まじりの外傾したフェース III)
左上方向に上部フランケの取付点らしい確保支点が見えるぞ、という錦少年のコールでNobが登り始めたが、再び濃いガスに閉ざされて確保点が見つけられない。
ルート上には残置ピンがほとんどなく、すでに10m以上ランナウトしている。この状態に怖じ気づき、いったんDガリー側(左下方向)にクライムダウンして錦少年に選手交代する。
おそらくIII級程度の傾斜の緩いピッチなのだが20m近くランナウトすると正直のところ怖い。こういうところは悪場慣れ?している錦少年にかぎる。

7ピッチ目(錦少年,30m 草まじりの外傾したフェース III)
選手交代した錦少年はNobの最高到達点を越えてさらに外傾したフェースを約15m上がっていった。このピッチはほぼノーピン状態であった。
幸い岩は比較的しっかりしているので気持ちを落ち着かせれば何てことはないピッチなのだが。さすがは錦少年である。
ちなみにNobの6ピッチ目は間違ったルートであり、霧が晴れていれば錦少年の7ピッチ目が6ピッチ目となる。

ここで下部フランケは終了し、上部フランケ(凹角ルート)の取付点となる。確保支点のリングボルトには青いロープスリングが残置されていた。
時間は押してきているが下部フランケも越えたことだし、行動食をとり休憩する。


【上部フランケ】
上部フランケ1ピッチ目の錦少年。


 上部フランケには2ルートあって、シュバルツカンテと呼ばれる丸いカンテ状のスラブと、その右手にある大きなジェードルを登るものらしい。
本当はカンテの方を登りたかったが、取り付きがよくわからなかったのと時間が押しており早くマッチのコルに着きたかったので後者の凹角(ジェードル)ルートを登ることにした。

1ピッチ目(錦少年,20m V-)
凹状のフェースを右側から回り込むように登って、凹角の中に入っていく。錦少年はバチバチに支点をとって慎重に上がっていく。最初の2~3mが微妙だった。
ふだんは「節約型人間」との評判が高い?錦少年だが、やばいところでは惜しげもなくクロモリのハーケンを打ち残していく。後続の私はハンマーを忘れてきたので残置されたままだ。クリーンクライミングには反するがそういう事情なので勘弁してほしい。
上部になると凹角内のクラックをたどっていくが楽しいピッチだった。

2ピッチ目(錦少年,40m III)
上部フランケ2ピッチ目の大ジェードルを登攀中の錦少年。 ここで錦少年の指に異常が。痙攣して指が動かなくなってしまう。先ほどの下部フランケ4ピッチ目での無理がたたったらしい。仕方がないオレがトップやるか。でも苦手な凹角だし、やだなあなんて思っていたら「何とかなりそうだから私がやります」と言ってくれたので内心ホッとする。
このピッチ、グレードIII級らしいのだが、最初の10mで残置ピンは錆びたのが1本だけ。仕方がないので錦少年は中間支点としてハーケンを1本打つ。

凹角のコーナーには数cm幅のクラックが走っているので、そのクラックにキャメ2を掛け替えながらソロリソロリとずり上がっていくしかない。おまけに左右のフェースはツルツルときている。クラックの中にシューズを突っ込むと痛いのなんのって。昔は登山靴だったのでかえって楽に登れたのかもしれない。
上からはさかんに4尾根主稜方向からのクライマーの声が聞こえる。マッチのコルが近いのか。

3ピッチ目(錦少年,30~40m III~IV)
4尾根主稜に出合い、ホッと一息というところ。<br />
 2ピッチ目同様の凹角登りだが、こちらの方が登りやすい。いささか疲れも見えてきたがフォローの身なので贅沢は言えないのがツライ。
錦少年さんに迎えられて確保点に着いたら、そこはなつかしいマッチのコルだった。やったー!ついに主稜に合流できた。

4ピッチ目(Nob,45m III)
枯木テラスを目指して主稜のリッジ左手を登るが、約10m手前で届かず。仕方なく浅いルンゼ状の中にあった中間支点のリングボルトでピッチを切る。

5ピッチ目(錦少年,45m III)
錦少年に交替して枯木テラスを経て城塞ハング上をたどりハイマツテラスに着きめでたく終了。
後でトポを見たら上部フランケの最終ピッチは枯木テラスから城塞ハングの下をバンドトラバースして6mのチムニーを登ってハイマツテラスに出て終了するのが正規ルートらしいがまあいいとしよう。

【タイム】
広河原(4:35)・・・二俣(6:30~40)・・・C沢出合(7:23~30)・・・5尾根支稜取付(8:05~33)・・・下部フランケ取付(9:30)・・・上部フランケ取付(14:00)・・・上部フランケ終了(15:30)・・・ハイマツテラス(16:30)・・・北岳(17:35~40)・・・肩ノ小屋(18:00)



■感想
私にとっては初めてのロングルートだ。標高差1600m、クライミング部分も下部岩壁帯を含めると15ピッチになった。

ザイルを仕舞い夕暮れの北岳山頂に立った時、しみじみとした満足感、充足感を感じることができた。
しかし、課題も多かった。
易しいIII級程度のピッチに残置ピンはほとんどなくランナウトはザラだった。こういうピッチでセルフコントロールを効かせて落ちついて登ることこそ本チャンルートを登る上での前提条件かもしれない。
また、ためらいなくハーケンを打ち足したりする柔軟な対応も大事な技術だと、錦少年のクライミングを見ていて感じた。

岳友Hさんの遭難後、その報告書にまとめた中高年クライミング愛好者がとるべき今後の方向性の一つに「本チャンでは標高差1000m以内、頂上付近に山小屋があるルートでのクライミング」というのがある。
それに加えてピッチ数10ピッチ以内を「ライトアルパイン」と自ら定義付けして実践の目標にしてきたが、今回のルートはその定義をちょっぴりはみ出したものであり、駆け出しの私にとってはいささか背伸びしたクライミングだった。
(記 Nob)

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