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北アルプス 唐沢岳・幕岩大凹角ルート下部~右稜ドーム壁


― オールフリーを目指して ―

 クライミングを中断する20年以上前から唐沢岳幕岩のことは「岩雪」の記事などで知っていたが、アルペン的な風貌に欠けていて奥鐘ほどのスケールもないところから、とりたてて食指が動く岩場でもなかった。
 ところが今回、会の小川山山行が中止となり、さあてどこへ行こうかなと思っていたときに、幕岩の大凹角ルートが私の技術でもなんとかオールフリーで行けそうなことに気づくと俄然、魅力のあるルートに思えてきた。



■7月27日(土) 晴れ

 七倉の駐車場でごろ寝から目覚めると、けっこう大勢の登山者が出発の準備をしている。みんなどこへ行くのだろう。幕岩も混むのだろうかと心配になる。高瀬ダムまでの舗装道路の歩行では、ふくろはぎを伸ばすと昨日の富士登山競争の疲れが感じられて果たして取り付きまで行けるだろうかと不安になる。

いくつかのトンネルを過ぎて目的の幕岩が姿を現すが、逆光のせいかあまりインパクトは感じなかった。
 ダムの下を横切ってカラ沢に入るが、ここで送電線の鉄塔へと延々と続いているアルミ梯子の道を間違って登ってしまい、だいぶ時間をロスする。

 カラ沢に戻って遡行を開始。堰堤を越えてしばらく行くと、「金時の滝」が現れる。左側のフィックスを伝わりながら、崩れやすいガリーを登っていく。高巻きを終えてしばらく行くと幕岩が見えてくる。

 A沢を過ぎ、B沢に入り、「ワシの滝」を右から越えてすぐ右の小沢を右稜のコルへ目指す。荷物を「大町の宿」にデポするつもりであったが、初めてのため「大町の宿」がどこだかわからない(後で調べると右稜をもう少し下降した地点だったらしいが)。やむをえず、右稜上にデポしてツエルトをかぶしてクライミングを開始する。

 正面はブッシュ混じりの壁で実際の取り付き点はもう少し上のようである。左から廻りこむか右から廻りこむかでちょっと迷ったが、右の上昇バンドが登りやすそうだったので、私がトップで右を行くことにする。III級程度の草付き混じりを登り、2ピッチ目はMさんがリードするが、どうもこのままでは壁から離れてしまいそうだということで、懸垂で元に戻る。今度は左の方へ行ってみると、ちゃんとしたビレイ点があり、取り付きであることがわかる。

 だいぶ手間取ったこともあり、スタートは12時半となってしまう。
1ピッチ目は私のリード、グレードはIV、A1であるが、今回はオールフリーが目的なので、その場合は5.8となっている。簡単な岩場を抜けて、人工で登られている部分に入る。最初は左の凹角から登りだすが、今一つムーブがわからなかったので、正面の垂壁を直上する。ホールド、スタンスとも細かい上に乏しく、「これが、5.8というのは辛すぎる」と思ったが、最初からアブミを出しては話にならないので、フリーで登りきる。

 2ピッチ目はMさんのリードであるが、正規のルートを外して左に行きすぎたようで、きわめて悪いピッチのようであった。ハーケンを打とうとするが、適当なリスがないようなのであきらめて、ランナウトしたまま正規ルートに向けてトラバースを始める。ここで墜落すると相当やばいことになるのはわかっていたが、Mさんには全幅の信頼を置いているので、ビレーしていても不安は感じなかった。

 フォローの私は正規ルートを行くが、ホールド、支点ともしっかりしており問題なく3ピッチ目に入る。順番では私のリードであるが、1ピッチ目の5.8で苦戦したため弱気になっていることもあり、私だけがフリーの核心部をリードするのではMさんにも悪いという気持ちあって、Mさんに先に行ってもらう。

 フリーでは10aのピッチであるが、Mさんは淀みなく進んでいく。私もフォローしてみると、人工壁のようにホールドがしっかりしており、ボルトの間隔も短いので思いきって登っていける。1ピッチ目よりもやさしく感じるほどであった。

 4ピッチ目はスラブで快適にザイルを伸ばしてボサテラスに着く。まだザイルの長さに余裕はあると思ったが、この先、安定したテラスはしばらくないように思えたので、ピッチを切る。

 そこから先はスラブを登ってからカンテを回りこむと傾斜も落ちて、ブッシュ混じりのコンテでも行けそうな斜面が続く。慎重を期してスタッカートで数ピッチ行くが、このころから西日をまともに受けて暑いことこのうえない。

 やがて上部岩壁につきあたり、いよいよ大凹角に入っていく(はずであった)。Mさんが大凹角目指してトラバースを開始していく。ルート図では右ルンゼ(実際はそんな顕著なルンゼではないようであるが)を通り越してから大凹角に入っていくようになっていたので、大凹角を右ルンゼと見誤って右稜まで行ってしまったようである。後続する私も、トラバースの途中に極めて悪い所があったりしたため、大凹角の位置の確認を怠ってしまった。

 Mさんのいるテラスまで辿りつくと、テラスから上はボルトラダーとなっていた。ただ壁の形状が凹角となっていなかったので、おかしいとは思ったが、上部で凹角に入るのだろうとそのまま登りだす。ガバの連続ではあるが、ややかぶりぎみのため、疲労気味の腕にはつらかった。

 ジムでのクライミングのようにテンションをかけながら高度を稼いでいく。しかし上部に行くにつれてホールドが細かくなっていき、フリーで登り続けることが困難となり、ついにアブミを取りだす。これでオールフリーの夢は絶たれてしまったが、アブミも最上段に立たないと次ぎのボルトに届かないほどで人工も楽ではなかった。
 特に最後のアブミから終了点に移るところは思いきりがんばらないといけないところであった(そのため、アブミは残置してしまった)。

 終了点に達して、大凹角でなく右稜ドーム壁を登ってしまったことに気づく。どおりで難しかったはずである。大凹角ならフリーでいっても、せいぜい5.9+であるが、ドーム壁の上部は10の後半はあると思われた。Mさんはがんばって私が残置したアブミのところまではフリーで登ってくるが、最後だけはアブミを使用して、こちらもオールフリーは達成できずとなる。

 終了点から見下ろすとS字状ルンゼの下部にワンパーティーがいるのが見える。登りだしてから初めて見る他パーティーの姿である。今頃あんなところにいるなんてどうしたのだろう。下降しているのだろうかと思ったが、我々が右稜の懸垂を始めるとS字状ルンゼもみえなくなってしまった。5~6回の懸垂で暗くなる直前に右稜のコルに達し、デポしてある荷物を回収して水を求めてヘッドランプをつけて下降。

 B沢に降り立つと、運良く対岸に絶好のキャンプサイトを見つける。簡単な食事を済ませると、満天の星空を眺めながらの贅沢なごろ寝となった。



■ 感想

 大凹角を最後まで登らなかったので大きなことは言えないが、中間部に数ピッチのブッシュ混じりの緩傾斜帯さへなければもっと充実した気分を味わえたと思う。上部でルートを間違えてオールフリーは逃したものの、それに近いクライミングができたことは満足してますし、いかにも本ちゃんらしいワイルドな環境も楽しめました。こんどまたくることになったら、畠山ルートやS字状ダイレクトを登ることになるのでしょうが、いつになることやら。
(記 vibram)

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