北アルプス 錫杖岳・前衛フェース左方カンテ
韮崎で杉さんの車に乗りこみ2時間近くで栃尾温泉に到着。
数時間の仮眠の後、槍見温泉まで行き、暗いうちから出発。前衛フェースの直下には6時半に着き、しばらくウロウロして取り付きを捜して7時に杉さんのリードで登攀開始。
1、2ピッチは傾斜の緩い凹角を行き、3ピッチ目(Ⅴ+)の下部の核心は杉さんがリード。
一見したところホールドがないが、手をのばすとガバがあるので、それを掴めばなんなく乗り越しが可能。
4ピッチ目は私のリードで凹角へ。凹角はチョックストーンでふさがれており、ルートは左のフェースにとられているが、ここで一度ピッチを切る。気持ちのよいフェースを杉さんがリードして、レイバックで右に回りこむ。
6ピッチ目はバンドを伝って核心部の7ピッチ目に移る。順番では杉さんのリードだが、下部の核心部は杉さんがやったので、上部の核心部は私がリードさせてもらう。出だしからボルダームーブである。何回かトライするがうまくいかない。こんなところでムーブの研究をしているわけにもいかず、一か八かでやるにしては失敗したときのグランドフォールの危険が大きいのでA0で乗り越す。まあアルパインではしかたないか。
フェースの次ぎはチムニー状からクラックに移る。クラックも背中のチムニー上部の壁がオポジションに使えるので楽である。最後はカンテに出てスラブ状を登り、フレークを掴んで体を引き上げるという実に多彩な技術を駆使するピッチであった。
8ピッチ目は杉さんのリードでスラブ状を登って事実上は終了であるが、もう1ピッチ簡単な岩場を登って槍から穂高の大展望がほしいままにできる平坦地まで着いたときは10時半近かった。
槍穂の山麓は紅葉の真盛りであるが、あいにく雲っているため、今ひとつ映えないのは残念であった。
左方カンテは我々の貸しきり状態であったので(前日は大盛況だったらしいが)、懸垂で降りることにする。杉さんが支点工作して先に降りて私が続くが、久しぶりの懸垂なので慎重に行く。最初はATCを使い、後のピッチではエイト環に代えてみるが、使用感に大きな違いはなかった。ザイルへの負担はどちらが小さいのだろうか。いずれにしても下降器がかなり熱くなっていたので、意識的にスピードを抑え気味にする。
取り付きに戻ったのは12時を少々回っていたので1ルンゼは時間的に厳しいものの3ルンゼならば継続も十分可能であったが、小雨も降ってきたので槍見温泉へ一気に降りることとした。温泉で汗を流して夕方には韮崎に着くことができ、すべてが順調に推移した山行であった。
(記 vibram)