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北アルプス 錫杖岳・前衛フェース1ルンゼ

錫杖岳の岩場初見参

錫杖岳全景 錦少年さん、Nobさん、竜少年と丁度日程が合って、3人で錫杖岳へ出かけることにした。
 この3人でのパーティはよく考えたら初めてなのである。錦少年は先々週錫杖岳へ行って来たばかりなので、サーベイはバッチリだ。錫杖岳が初めての竜少年、Nobさんにとっては心強かった。

 錫杖岳は僕の偏見かもしれないが、昔開かれた山で一寸暗くて不遇をかこっているのではないか、と思っていたが、全然正反対で明るく魅力ある岩場であるということがよくわかった。



■9月22日(土) 曇りのち晴れ

3ピッチ目をリードする竜少年 14時にNobさん宅へ集合。レガシーに乗り換えて習志野を出発。3連休とあって道路渋滞は覚悟の上、とは言いながら運転してくれたNobさん、錦少年は少しお疲れの様子。栃尾温泉側の道の駅に着いたのは、20時を廻っていた。早速テントを張って宴会に突入、22時を過ぎたころ「静かにして下さい。」と注意されてしまった。(^^;
 少し飲みすぎたようだ。いかんな~こんなことでは。


■9月23日(日) 快晴 

3~4ピッチは明るいフェース登りが続く。 前夜のお陰で調子がイマイチである。午前6時10分、槍見温泉側の駐車場に車をとめ、槍見温泉の脇道に入る。暫く行くと「笠が岳へ8.0Km」と指導標があった。クリヤ谷から笠が岳への縦走路なのだろう。やがて縦走路は錫杖沢へ降りる踏み跡になる。縦走路から見上げる錫杖岳の前衛フェースが折からの朝日を受け、樹林帯の上に真っ直ぐに起立している。お~スゲーッ、立ってるぜ!

 そこからは踏み跡の急登を木の根と笹につかまって約40分程で前衛フェースの基部に着く。
 左方カンテには既に2、3組のパーティが順番待ちの様子。アブミのカチャカチャさせている音も聞こえる。岩壁の基部を右に回りこんで、登攀の支度をする。

振り返ると初秋の穂高連峰が美しかった。
 狙いは1ルンゼ。錦少年の提案で、6ピッチ(3~8ピッチ)あるから3人で2ピッチづつリードしよう、と言うことになり、最初の2ピッチを竜少年、真中を錦少年そして最後の2ピッチはNobさんと決まる。









前衛フェース 1ルンゼ(本流)ルート [4級 V、A1 285m ☆☆☆]

 本来ルートはIV+の1ピッチ目40mからであるが、岩壁の基部のバンドから取り付くと3ピッチ目からとなる。

9時10分 登攀開始。
3ピッチ目 竜少年リード (スラブ IV- 30m)
 『竜少年さんにとっては易しすぎるんじゃないですかネ~』などと見え透いたお世辞を背に直ぐに錆びたハーケンにクリップ。スラブとフェースの混在のような、しかし花崗岩のしっかりした快適な登りになる。
 V字岩壁の左が本流ルートと思いつつ登り、もっと左かなーと考えていると案の定、先行パーティが左のテラスでビレイをしている。
5ピッチ目をリードする錦少年。
「1ルンゼですか?」と聞くと「そう、1ルンゼはもっと左、こっち、こっち。」と親切に教えてくれる。やっぱそうか、と思い左にトラバースして小広いテラスの少し上でビレイ解除。

4ピッチ目 竜少年リード (ルンゼからスラブ III 40m)
 ホールド、スタンスとガバが豊富な斜面から階段状を登ると大テラス。本来の1ルンゼの1ピッチから登り始めた中年の男女パーティがあがって来る。その後このパーティとは最後まで殆ど一緒に行動することとなる。
 振り返れば奥穂高岳の峰々が真っ青な空にスカイラインを描いている。

5ビッチ目 錦少年リード (凹角からルンゼ左上 IV+ 40m)
大テラスでロープを結び直し、今度は錦少年リードの番。クラック状から右上し、V字岩壁との間のルンゼに入る。ルンゼといっても殆どフェース状で、ハーケンもあるが、フレンズを噛ませて再び中央にでて、ルンゼを登り顕著なピクナル状の岩の右側を乗り越す、立っているので、ちょっといやらしい。もっとも左側に回り込んだ例の男女パーティも同じような事を言っているので、右、左どちらでも大差は無さそうだ。40mを5mほど超えている。

6ピッチ目 錦少年リード(左のルンゼからハングを越す V、A1 40m)
1ルンゼルート核心部である6ピッチ目をリード中の錦少年。 前のパーティが左から右上する狭いルンゼでアブミでハングを乗り越しているのが見える。

 左右のステミングでハング下へ。効いているハーケンと効いてないハーケンが入り乱れる。核心部のハングにでる。「竜少年、いくぞー、ビレイたのむぞー!」「よーし、いいぞー。」ハング下の比較的新しいボルトにスリングでA0,左の奥を取ってガーッツと左からハングを乗り越す。オー、乗ッ越した、ヤッター。アブミA1かと思っていたがリードでA0は凄い。後に続く二人もアッと言う間にA0で核心部を超えてしまった。

 後続のパーティはフリーで超えてくる。聞けばトゥエルブ(12)クライマーだそうだ。『いやー、気持ちよかったー!』だと。(^^;

7ピッチ目 錦少年リード (フェース IV+ 40m)
 本当ならNobさんリードの順番であるが、レッジが狭いのでロープの交代が少し窮屈。もう1ピッチ錦少年が行くことにする。直上ルートもありそうだが、左トラバース気味から再び右トラバース。力は一切いらないが微妙なバランスでテラスへ。

8ピッチ目 Nobさんリード (ルンゼから横断バンドへ IV 35m)
最終の8ピッチ目をリードするNob。  V字岩壁側のチムニーが本来ルートと思われるが。7ピッチ終了点のテラスがチムニーより左上したところにある。チムニー基部には適当なビレイ点が見当たらなかった。

 正面のルンゼ状の途中が少しハングしている。Nobさん構わず正面から突破。左右の足を開脚してアット言う間に真っ青な空に吸い込まれて行ってしまった。横断バンドの立木でビレイ解除。フィナーレを飾るに相応しいクライミングであった。時間は13時45分であった。

 横断バンドで後続の二人のパーティに今のピッチでのエイリアンを回収してもらう。5人で談笑に花が咲く。結局当然の成り行きで懸垂は一緒にすることにする。50mイッパイの懸垂2回をいれて4回の懸垂で基部のバンドに16時10分無事到着した。



■登攀を終わって

終了点にて 錫杖岳については、故木村譲治氏と知り合ってから、一度は行かなくては、と思っていたところであっただけに感慨もまた一入であった。今回は1ルンゼのルートのみ登攀としたが、ルンゼというよりも明るいフェースで、花崗岩のホールド、スタンスともカチカチでその上高度感もあり穂高の峰々に見守られての登攀は何事にも代えがたいスッキリとした登攀が出来たと思う。

 取り付までの約2時間の歩程と、帰路の1時間半程度の歩行でアルパインの香り漂うクライミングとなった。左方カンテや3ルンゼなども是非チャレンジしてみたいと思う。しかし、もっと錫杖岳を楽しむには、フリーの力をもっと付けなければ!!と思うようになった。素晴らしい快晴と錫杖の峰に感謝を送ろう。
(記 竜少年)

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