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奥秩父 乾徳山・旗立岩中央岩稜

草原の上に屹立する岩稜での快適クライミング

 むかし、高校生の頃だったか。新田次郎の短編小説を読んでいたら、乾徳山で岩登りをするシーンがあった。妙にそのことが頭から離れなかった。
 時は過ぎ、乾徳山の岩場を初めて意識してから30数年。昨秋、岳人11月号(以下「岳人」)に乾徳山の岩場に関する記事が出たので、行ってみる気になった。
 パートナーの錦少年とは99年冬の小同心クラック以来の組み合わせとなった。



■7月14日(土)

中央岩稜1ピッチ目の切れるようなカンテライン 20時半に習志野市の自宅を出発。都心の大渋滞に見事につかまり、高井戸通過が23時、今宵の宿泊地と定めた道の駅「まきおか」には、なんと午前1時着。
 渋滞疲れでビールを飲んで早々に寝付く。千葉の人間にとって東京通過こそが大核心なのだ。

■7月15日(日)
 早朝テントを撤収して、国道140号線を走り三富村から大平牧場に向かう。舗装された道だが狭くてジムニー向きだった。国道を離れて快適に高度を上げながら約6kmで民宿大平荘の駐車場に着いた。(駐車料金¥500)

2ピッチ目をリードするNob 身支度して出発。朝から太陽が照りつけているが、高原のためか吹き渡る風はさわやかだ。牧場の草原帯から山道に入る。登山道をゆるやかにたどりながら扇平の草原に出る。ここは本当に気持ちの良い所。ここだけを目的に来ても後悔しないと思う。

 さて、扇平からは岩混じりの道に変わりハイボルダーが林立してくる。フリークライマーやボルダラー達が見たら登りたくなる岩もたくさん登場してくるが、ここまでで約1時間40分。アプローチを考えたら来ないだろうなあ。

最終ピッチを登攀中の錦少年
 念仏岩、雨乞岩を越えると、目的の旗立岩に着く。約50~60cmの高さのケルンがあるのですぐにわかる。ケルンのある場所のすぐそばが右岩稜の終了点だ。ここから眺める旗立岩中央岩稜をはじめとした各岩稜、岩壁群は見事な眺めだ。予想以上の岩場に二人とも息を呑む。

 ケルンでクライミングギアをつけて取り付きまで下降する。この下降がいやらしく、中央岩稜の取り付きがなかなか見つからず閉口した。急斜面と樹林のくぐり抜けが続き、いいかげんいやになる頃やっと、取付点らしき所にたどり着くが、どうもトポと雰囲気が違う。岳人P23のカラー写真と同じ場所だったが、本文P49のトポとどうも違うようだ。

 トポによれば快適なカンテ状とあるが、目の前にある岩壁は末端壁のフェイスといった感じだ。そこで、さらに岩場を回り込むとようやくカンテの末端に着いた。

■岩場に着いた。さあ登るぞ!

旗立岩中央岩稜1ピッチ目(35m V-)
 11時35分スタート。めでたく扶養家族のいなくなった錦少年がトップで取り付く。左右共にすっぱりと切れ落ちた見事なカンテだ。
 あれれ、錦少年の動きが遅い。
「どうですー?」とNob。
「いやー、逆層ですよー!」と錦少年。

最終ピッチ終了点目前! 逆層のカンテで見た目よりも難しそうだ。残置ハーケンもあるにはあるがどれもみな赤錆びている。
 慎重な錦少年がいつもより以上に慎重に高度を上げていく。

 トポでは途中のハング帯を右にトラバースするはずだが、錦少年は果敢にもハングの突破を目指している。残置ハーケンは全く信用できないのでフレンズをセットし、さらにハーケンを1本打つ。
ピトンの歌声が岩場全体にこだまし、われわれ二人だけの劇場空間を大いに盛り上げてくれた。
 ハングを越えてしばらくしてから「ビレー解除!」のコール。

 続いてNobがフォローで登る。ハング下の核心部ではやっぱり緊張する。しっかりと残置ハーケンをスタンスにしてA0混じりで登る。ハング下を右にトラバースするとIV級A0らしいが、ハング直上のこのルートはV級マイナスはあるかもしれない。

2ピッチ目(35m III)
 ツルベで行くことにして、ギア類を預けられNobがバトンタッチする。最初は鋭いナイフリッジで後半は易しいフェース登りとなる。高度感もあり登っていて思わず「ヤッホー!」って声が出そうになるほど快適な登りである。(^^)
終了点にて握手、握手!  あんまり快適なんで、つい中間支点をとるのを忘れてしまい、下の錦少年から注意を受ける。(^^;

3ピッチ目(20m III+)
 本ルート中もっとも快適なリッジとフェースからなるピッチだ。高度感バッチリでしかも最後のフェースはクラックが発達しておりフレンズのセットの練習にも最適だ。
 順番からいって錦少年なので、悔しいけどトップを譲る。登っている錦少年の身体中から楽しさが伝わってくるのが下からでもよくわかる。

 快晴に恵まれて青い空の中の白い雲を追い求めるように高みにザイルのばして無事終了。続いてNobが登る。じっくりと岩登りの楽しさを噛みしめながら終了点に手をかける。登り着いたところはハイキングコース脇。二人連れのハイカーが驚きながらも私たちを笑顔で迎えてくれた。
 終了時刻は13時20分。
 3ピッチで1時間45分もかかってしまったが、「クライミング」というよりも「岩登り」をしたなあ、っていう感じだった。



■感想
美しい高原を擁する乾徳山  乾徳山の岩場はスケールは小さい。
 スケールは小さいし、残置のハーケン類は30年以上前の雰囲気だし、浮き石もある。
 しかし、三つ峠や幕岩といった整備されたゲレンデではなかなか味わうことのできない「本チャンの歓び」がここにはある。

 徒歩2時間の壁がフリークライマーの訪問を遠ざけているようだ。それに各岩稜の側壁にはフリーのいいルートがたくさん作れそうだ。
 秋になったらドリルを担ぎ上げてフリーのフェースルートを作ってみたい。クラックもあるのでフレンズの練習もしてみたい。
 われら10&アンダークライマーでも納得できるルートができそうな予感がする。
(記 Nob)

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