.トップページ -> 海外登山 -> 仁寿峰クライミング 2001

*掲載内容についての注意がございますのでこちらをご覧下さい→

仁寿峰クライミング 2001

■6月14日 日本は雨 韓国は晴れ。
仁寿峰
ユナイテッドのオーバーブッキングの影響で朝0900を成田フライトの予定が、1450になって6時間の遅れとなってしまった。その代わり座席はビジネスクラス、お詫びとして一人¥1500相当のお食事券と諸費用代$100の申請書を貰う。早速成田でインスボンツアー結団式を挙げる。

ビジネスクラスに乗ると、搭乗も最初に乗せてくれる。座席に座った途端、スチュワーデスがひざまずいて「シャンペンになさいますかそれともジュースでしょうか」とうやうやしく席に来る。

皆ビジネスシートは初めてなものだから、ボタンやらなにやらで暫く格闘して漸く、目の前の液晶テレビが見られた。

ワインも「こちらはスペイン産の少し濃い目のワインで、こちらはフランスの軽めのワインですが・・・。」テーブルに真っ白いクロスを引いて優雅にワインを嗜みました。これが韓国まででなく、ニューヨークくらいならいいのになー、と出発前の大騒動をすっかり忘れて少し酔ってしまった。あっという間に仁川国際空港に到着。ここでも最初に出られる。

両替所は到着ロビーの目の前にあって10000円ごとに袋に入って用意してある。¥1000:W1050.

10番出口を出て23番ポール。602系統のバスに乗る。仁川国際空港カラ東大門までW5500.乗るときに「トンデーモン、トンデーモン」と大騒ぎで乗る。そのため、乗客も運転手も「東大門」に着くと「ここ、ここ」と教えてくれた。

約1時間。東大門から地下鉄4号線でスユまで乗る。W600.スユから一般タクシー、一般タクシーは世に言う悪名高き、とあるがどうしてどうして、なかなか親切。

トソンサまでW4000.トソンサには午後7時45分。まだ随分と明るい。この分ならヘッデン無しでペグンサンジャンへ行けそうな雰囲気である。最後はヘッデンの厄介になったが、午後8時45分ペグンサンジャン着。「アンニョンハセヨー」李さんの息子の健さんが迎えてくれた。

PageTop


■6月15日 快晴。
朝7時40分。トクハンシーが元気なら当然トクハンシーなのだが、彼はこの正月に右足骨折後ペグンサンジャンには来ていない。金基定氏(キテシー)もサラリーマンになってしまって今はソウル。馴染みの顔ぶれがいないので少し寂しい。

下からガイドのSON YOUNG SIK氏が上がってきた。筋肉質でその上しなやかな身体、ネコのような身のこなし。35歳。SON氏をオーナーの李さんは「SON?サイコーヨー。」と絶賛する。コンロンクライミングスクールの先生である。

韓国語、日本語、英語のチャンポン語で、何とか意志が通じて今日は午前中シュイナードA,午後は隣接する「ポッキル(友)ルート」。明日は弓形クラックとシュイナードBに決定。パーティはSON,竜少年、オカベさんの3名。

PageTop


◆シュイナードA(キバウイD 5ピッチ 130m 10a)
取り付きは大スラブを回り込む。このルートはずっとクラックが続く。スタート前にテーピングの講習を受ける。 

1ピッチ目 (20m 5.6)
SON氏がスタート。セカンドの竜少年がビレイしようとすると「ノー、ノー、ノンビレイ」と約20mを中間支点なし、ビレイ無しで登る。竜少年の番。こちらはそうは行かない。

"スターツ(スタートするぞと言う意味でスタートと言うと上でスターツと言いなおす。以後スターツで統一)"竜少年の感覚では、ビレイ点がないのでIV級からV級くらいだと思う。

ここで、ザックを置いて空身になる。次のルートの「ポッキル」がここからスタートするからだ。

2ピッチ目 (20m 5.7)
今度はビレイする。しかし、ビレイ点は一箇所。このピッチは竜少年、オカベさんとも快適にこなす。

3ピッチ目 (30m 5.8)
段々グレードが上がってくるが、特に問題とするようなところも無く快適。青い空が迫ってくる。

狭いクラックでは、親指を向こう側の壁へ強く押し付ける、残りの指はホールドを手前に引く。オポジションで持て。とSON氏。

4ピッチ目 (40m 10a)
核心。核心は4ピッチスタート直後の少ハングの乗り越し、不覚にも青いシュリンゲを乗り込むときに掴んでしまった。

ハングの後はクラックが続く、気持ちよくジャミングとレイバックが決まる。ガイドブックではジャミングが決めづらく10aは辛め、とあるが、なぜか気持ちよくサッと登ってしまった。

SON氏が「竜さん、クラッククライミング、GOOD」とお世辞をいう。ま、悪い気はしないもんだ。オカベさんもハングの乗り越し以外は問題なく、さっさとあがって来る。

本来はこの後5ピッチ目5.6から耳岩下に行くのだが省略。4ピッチ終了点から50m1回、30m1回のラッペリングでザックのある所に下降する。9時に登攀開始して下降終了が11時20分であった。

後で考えれば、このルートは各ピッチも短く、グレードも程ほどなので、疲れの出る午後あたり方がいいように思う。

PageTop


◆ポッキル (友ルート 5ピッチ 150m 5.10d A0 )
ポッキルルートはシュイナードAとシュイナードBの中間のスラブ。「オカベさん、だんだん難しくなってくるぜ、オイ、オイ10dなんて登れるかなー」

今度はスラブ系である。SON氏はニュートンに履き替えている。お、お、同じジャン、竜少年もニュートンだぜ。

1ピッチ目 (30m 5.10a)
耳岩(10b)取り付きの一歩
微妙な立ち込みが続く。細かいホールドを持つときには、人差し指、中指、薬指、小指をほんの少し重ねるようにして、人差し指の爪の上に親指の第一関節まで重ねて持て、と指示される。そのように持たないでホールドすると「フィンガー、フィンガー」と上から声が飛んでくる。

2ピッチ目 (20m 5.10d)
オカベさんが持ってきた3段のアブミをみて、「?」と言っている。「ラダー、ラダー」と説明する。これが翌日意外なところで役に立つのである。

ルート図では左上になっているが、実際は直上する。スラブの10dはなにしろ細かい。それに斜度もキツクなって、どうしてこんな難しいところ来るっていたんだ~と泣きが入る。その上爪先に全体重が掛かって悪い左足が痛くなってくる。え~い、ボルトにも乗っちゃえ、息も絶え絶えでビレイ点に着く。

3ピッチ目 (30m 5.10b) 
今の2ピッチ目の10dもこのピッチの10bも難しさの比較が良く分からない。左上、左上と連続する。振られ止めに架け替えの時もヌンチャクを情けなくも掴む。

4ピッチ目 (40m 5.9 A0)
10dスラブのあとの5.9は、気分的に楽になる。一箇所段差というかハングの乗り越しにヌンチャクを掴んでA0。ここはA0公認だから気が楽。

5ピッチ目 (30m 5.8)
最終ピッチで疲れも出て、もう、肩で息する状態。それでもスラブを越えて耳岩下に到着。レスト、レスト。

SON氏は「Go to Summit.」といっているが、「No,no Very tired.」頂上は明日、明日。

懸垂2回でオアシステラス。テラスから懸垂1回で大スラブ下に着き、両足で歩ける感触に安堵する。 へろへろになりながらペグンサンジャン。メクチェ、メクチェ。

PageTop


■6月16日 晴れ 高曇り
SON氏と同じコンロンクライミングスクールの先生がもう一人とその生徒が上がってきた。今日は、竜少年、オカベさんパーティのビレイマンをやるのだという。

ビレイマン?竜少年とオカベさんは今日一日ビレイをしなくていい、ビレイマンが全てビレイする。と言っている。う~ん、それは有難いがどうするのか良く分からない。

どう見てもSON氏が大きい先生でもう一人の先生が小さい先生(若くていい男、ちょっぴりキノッピーに似ている、何故か二人の先生ともGIカットだ)後一人は実習生で、先生見習いと言った所で、多分勉強で来たのだろう、と勝手に想像してあまり深くは追求しなかった。

ビレイマンの役どころは後でよ~く分かる事となる。

PageTop


◆弓形クラック(クンヒヨンキル 4ピッチ 120m 10a )
パーティは、SON氏-竜少年-オカベさん。小さい先生-実習生の2パーティ。

ルートは大スラブを2ピッチ登ってオアシステラスへ。オアシステラスから耳岩の左ハング下をA0,A1で耳岩下にでるのだ。

大スラブ2ピッチ(ピッチ数には入らないが、竜少年としてはピッチ数にいれたいな~。)SON氏のビレイヤーは小さい先生。次にセカンドの竜少年スターツ。

竜少年に少し遅れて、小さい先生スターツ。竜少年がビレイポイントに着いて、セルフビレイを取ると、SON氏が竜少年のグリグリを使ってオカベさんのビレイをする。小さい先生がビレイ点に上がってくる。

やがて、オカベさんも上がってくる。小さい先生はすかさずSON氏のリードをビレイする。本当だ、ビレイマンだ、竜少年もオカベさんも只ボーッツと見ているだけである。小さい先生に「ビレイやる。」と言うと「no,no、ビレイマン。」と言ってにっこり笑う。笑顔がいい。

この調子で、今日一日ビレイ無し。これが本当の大名クライミングだ。

弓形クラック1ピッチ目(30m 5.8)
オアシステラスから医大ルートの1ピッチ目と同じで、1ピッチ目の核心はフェースへの左側への乗り込みの一手一足。

2ピッチ目(30m 5.7)
医大ルートから左のクラックに入る。右側の側壁に身体を付けてのレイバックとフェース登りが入り混じってくる。

3ピッチ目(30m 5.10a)
右壁のレイバックの連続。上から圧迫されるようで苦しい。核心は流石にフレンズを2m間隔で取る。

4ピッチ目(30m 5.8 A0,A1)
アンダーフレークに添って左カーブを描いて耳岩下に回りこむ。そのまま、今度は右カーブ。ロープが明らかにZ状態。

右カーブは耳岩直下のオーバーハング下を人工でヌンチャクの掛け替えとスリングへの乗り込み。ロープがZになっているので、引けない。ようやく耳岩下のテラス。SON氏と二人掛かりでオカベさんのロープを引く。

オカベさんもあがって来る。小さい先生、実習生も上がってくる。懸垂2回でオアシステラスへ。レスト。レスト。

ここで、例の地元の73歳のクライマーに合い、若僧、ヒヨッコと激励される。充分休んだ後懸垂50mでシュイナードBの取り付きまで降りる。

PageTop


◆シュイナードB(キバウイC 5ピッチ 180m 5.8)★
1ピッチ目(35m 5.7)
ロープを60mに取り替える。そんな長いピッチは無いのになー、と内心。昨年ここで微苦笑さん達と別れた所だ。ガリー状のようなところから右上する。ゆるいレイバック気味とスラブ状を行く。

2ピッチ目(60m 〔2ピッチ目と3ピッチ目を一気に〕 2ピッチ目 40m 5.8+) 

3ピッチ目(25m 5.6)
カチカチのアンダーフレークを右にゆるくカーブして、30m地点のポイントでビレイするのか、と思っているとそのまま登り続ける。ヒエー60m一杯だ。

ロープの意味が此処で判明。ロープの余長が1mとない。そのかわり、緊張しての60mは高度がぐんぐん上がって、岩登りをやってるッツ、と感じる瞬間だ。ビレイ点に着いて下を見ると3rdのオカベさんが豆粒のようだ。

3ピッチ目(通常の4ピッチ目 40m 5.7)
SON氏が「ハイライト、ハイライト。」という。本日の核心ピッチ。左アンダーレイバック、チムニー状に潜り込んで背中のフリクションで攀る。50~60センチのチムニーで、中に入れず、殆ど潰されたカエルの如くペタリと壁に張り付く。

どうも5.7とは思えないな~、クラック&チムニーで5.9~10aはあると思うけど、と内心。ビレイ点は先客3名がいるので、その上にフレンズ1本、キャメロット2本でビレイ点を作る。ハンギングビレイ。

竜少年がじっとフレンズのビレイ点を舐めるように点検していると、SON氏が「OK,OK」と言って、各3本のフレンズに均等に過重が掛かっているから安心しろ、と説明する。全てに過重が係り、バックアップで遊んでいるフレンズは無い、ので少し安心するが、それでも心配でジット見つづけていた。

ここのピッチでオカベさんのアブミが役に立った。先客の3名のパーティの中に初心者と思われる女性がいて、なんとハイキングシューズで登っているが肝心の所が登れない。そこで、アブミをセットして登らせてあげる。エライ感謝をされて、夕方ペグンサンジャンまでお礼をしにきた位だ。

60mいっぱいの懸垂下降4ピッチ目(通常の5ピッチ目 40m 5.5)
実際には、ビレイ点より上でビレイしたから 30mといったところか。潰されたカエル状態で少し登ると耳岩下に着く。

耳岩下で日本語の堪能な若い女性と知り合う。フジゼロックスに勤めているとか。日本人かと思えるほど日本語が巧い。

ホントは行きたくなかったが、頂上まで一緒に行きましょう、と綺麗な彼女の誘いに乗って行くことにする。

日本語も巧いけれどクライミングもまた上手い。コンロンクライミングスクールの生徒だという。なんだ、みんなSON氏の仲間じゃないか。

耳岩をA0で登ってまあるいピーク。懸垂10m。登り返してインスボンの頂上。「おー、懐かしの頂上だーッツ。」例によって白雲台(ペグンデー)に向かって雄叫びをあげる。

懸垂地点まで降りて、60m一杯の懸垂1回で地上に降り立った。

PageTop




■感想
今年でとうとう4年連続のインスボン訪問となった。インスAを始めいろいろなルートを登らせてもらった。インスボンの岩場は、多数のルートと優しい人達がいるまだまだ魅力いっぱいの岩場である。

さて、来年以降はどうするか。是非5年連続にチャレンジ、という気持ちもあるが、その一方でやはりガイドクライミングは岩登りの魅力を半減させる。

今までは良く分からなかったことや力も無いこともあってガイドクライミングであったが、やさしいルートでも自分達で攀るのがボクにはあっているような気がする。

お気楽クライミングで緊張感も登攀意欲も達成感もみな薄いように思う。ただ、ガイドが一流で、一流のワザを見るのは参考になるし、確保の方法やフレンズのセットの方法を目のあたりにすれば、これはまたこれで勉強にもなることは確かだ。

しかし、幕岩の易しいルートでも自分でリードしたときの方が感動は大きい。そんな事を考えながら、さて、来年はインスボンをどうするか思案中である。

(竜少年 記)


PageTop

海外登山の最近記事(5件)

上記以外の記事は「海外登山」のカテゴリーページをご覧下さい。

PageTop

Copyright © 2006-2024 山の会「岳樺クラブ」 All Rights Reserved.