伊豆周辺 城ヶ埼でシーサイドクライミング
― ライトアルパインのエリアとして考えてみる ―
「城ヶ崎」というと交通至便・温暖なリゾートエリアで、およそアルパインとは対極にある世界というのが常識である。
しかし、ここのクラックをリードするとなると、話は少し違ってくる。すべて、ナチュラルプロテクションだし、終了点・踏み跡・ルート表示なんてものはまず皆無で浮石も人気エリア外では時々登場する。
最初のフレンズをセットする数メートルあたりの高さから、けっこう緊張する世界となる。ちょうど、1ピッチのバーティカルアイスクライミングのような世界であるが、<アイスクライミングのように道具でなんとか>はほとんど無く、毎度、実力不足をしみじみ感じてしまう。
■4月14日 フナムシロック 晴れ後曇り、引き潮
お昼に到着する。めずらしく、他のグループがいる。フリークライマーでなく山屋の集団のようであるが、フレンズをごそっと準備している。こちらも、エイリアン、キャメロットをザックからとりだす。
さて、最初のリードは、鬼殺し(5.7)である。少しのぼり右のレッジに移ったところから再びクラックにもどるのにためらってしまう。まー、これは、テンションもなく終了。MIKIさんは、トップロープで確保されて、フレンズをつかってリードする。
次は純(5.8)で、これが意外と、ややうすかぶり気味のところで苦労する。テンションが入ってしまう。思い切りが悪い。MIKIさんは、ここでも、リードの練習。
3番目は、初孫(5.7)をMIKIさんがリード。大きな松の木にセルフビレイをとったMIKIさんに確保してもらって、錦少年フォロー。懸垂でおりる。
この後、一休みして、オフウイズス、ネッシー(5.8)をリード。狭い体が半分しか入らないチムニーというかフレアーしたワイドクラックというべきか、フレンズが不整形なクラックのため決まらず、おたおたする。ムーブもよくわからずもがき、「怖いよー!」の連発となる。フォローしたMIKIさんは正対してステミングで難なくのぼる。錦少年も正対で再度試みるがダメで、結局さきほどの登り方となる。
最後にフラッシュダンス(5.9)をトップロープでのぼる。MIKIさんは、ジャミングをものにするということで、何度も何度もトライ。
■4月15日 オーシャンロック 快晴、引き潮、波高し
今日は快晴である。たっぷり1日使ってどこ行こうか迷う。昼間は引き潮だし、いがいが根公共パーキングからも近いオーシャンロックとする。行ってみると、波が荒く海側のルートは取り付けない。今日はトップロープでムーブの練習とする。
まず、カラス(5.9)で、体を慣らす。
次にボクサー(10a)にトライ。この10aは、他の10aに比べてえらく難しい。上部のワイドクラックに両方のこぶしをいれて、フィストジャムを効かせ、ボクシングのように登るのが正規のムーブらしいが、手のサイズが合わず、えらく苦労する。腕をクラックに入れてつっぱって登る。たった、1mのワイドクラックで体がよれよれになる。
MIKIさんも苦労する。MIKIさんは、クラック左のフェースを使ってのぼる。
ここで食事をとり大休止する。ボクサーに再度トライするのと、帰りの深夜運転に備え、山屋風に表現すればトカゲとなる。
休息の後、ボクサーにトライ。やっぱりワイドクラックで立ち往生。錦少年もMIKIさんもクラックの右縁をもって左向きレイバック風に登ることになる。
最後のクールダウンに、カラス真下のハング、スラブを登る。長くて変化に富んだ好ルートである。
カラス、ボクサー周辺はオータムカンテ(10a)やその右のフェース(11a)もあり、楽しめるところである。
■ 感想
今年の夏は再びヨセミテに行こうと思案している。それまでに5.8~9のクラックを20本ほどリードするつもりである。
そうした目的意識の有無に関わらず、城ヶ崎ではわずか20mにも満たないクラックが、緊張と楽しさを提供してくれる。無数のクラックをこれから何年もかけてトレースしたい。
城ヶ崎は、それ自体がヨセミテに匹敵するエリアである。花薫る日本の春を満喫しつつ、フレンズを腰にぶらさげクラックをリードするスタイルは、行動体力も防衛体力も寂しくなってきた私には、ぴったりかもしれない。
(記 錦少年)