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北アルプス 前穂高岳・北尾根

滝谷には行けなかったけど、充実した1日半のクラシックルートだった。

 お盆休みに穂高のクラシックルートを計画した。12日に北穂の東稜、13日は滝谷のドーム中央稜を狙って出かけた。11日夜の台風接近のニュースで13日には下山することに決め、12日は目的地を前穂北尾根を経由岳沢下降に変更した。充実のバリエーションクライミングを楽しんできた。

【地図】 「穂高岳」(1/25000図)
【参考】 山と渓谷社刊アルペンガイド(上高地、槍、穂高)、他

【日程、時間、天気】
11日(晴れ)
     12時20分 韮崎出発
     14時10分 沢渡駐車場
     14時40分 上高地
     17時30分 横尾山荘(泊)
12日(晴れ)
      4時30分 出発
      7時     涸沢
      8時50分 56のコル、 
      9時50分 45のコル
     11時     34のコル
     14時35分 前穂山頂、
     15時15分 前穂下山
     17時35分 岳沢ヒュッテ(泊)
13日(晴れのち曇り)
      6時30分 下山
      8時     上高地
      8時30分 沢渡駐車場、乗鞍高原をドライブ
     11時     小渕沢(温泉、昼食)
     13時韮崎戻り 



■8月11日
前穂山頂にて ~京都の仲間たちと~ 昼、韮崎駅に友人達を迎え、車で沢渡に向かう。入山が半日ずれているので、道路、タクシーも混まずに2時間30分で上高地に到着した。この日は横尾山荘に宿泊。風呂に入り、生ビールで乾杯。一部屋で4人、ラッキーだった。

 TVの天気予報で台風情報を見たら、どうやら13日は直撃されそうである。
 今回のメインは13日の滝谷であるが最悪の場合は、山に閉じ込められる恐れもあるので、12日に下山できるエリアとして、前穂の北尾根に予定を変更した。


■8月12日
 3時45分起床、4時30分出発。今日は天気がよさそうである。
 7時に涸沢に到着。涸沢ヒュッテの左のガレ場を上がり、雪渓に降り立つ。V・VIのコルまでノーアイゼンでいけるかどうかが心配だったが、夏道が出ていることを確認でき、一同ほっとする。
 前穂北尾根は今回リーダーの自分も皆も未経験である。しかし日頃ザイルを結んでいる仲間との登攀であり不安はない。

北尾根稜線上からの奥穂高と涸沢岳 8時50分V・VIのコルに到着、ハーネスを装着。V峰はガイドブックにあるように普通の岩稜である。はるか左下には奥又白池、右下には涸沢、正面には霧の中から奥穂から北穂のスカイラインが見える。青空を背景にしてすばらしい景色。

 IV峰の登攀は難しい。ガイドブックによれば涸沢側を巻くとあり、踏み跡もあるがグズグズのトラバースがいやらしい。ザイルを出すほどではないが、長さ数mの危険個所がいくつかあるし、岩が脆くて落石に注意を要した。過去には大島亮吉がこのIV峰から涸沢に転落して亡くなっている。(山と渓谷社アルパインルート集)

 11時にIII・IVのコルに到着。ここからIII峰へのクライミングである。オーダーは私がリード、1本の9mmに女性のOさんをミッテル、Nobさん。もう1本に、クニさんがトップのビレーとフォロー。この順番で3ピッチを行くことにした。

IV峰から望むIII峰正面 コルから15mほど上がった場所が最初のビレーポイントである。ここから1ピッチ目は奥又白側にトラバース気味に上がっていく。残置ハーケンがルートを示すので、わかりやすいし、岩質も安定していて快調である。足元は奥又白側にスッパリ切れ落ちていて高度感たっぷりの登攀を楽しめる。
9mmダブルの流れが悪くなる頃、適当なテラスを見つけた。残置ハーケン2本では不安なので、キャメロットを3箇所セットして、ビレー解除のコール。

 2番手のOさんは初本チャンである。当初の計画で滝谷に行く場合、彼女は我々と別れて一般道を下る予定だった。しかしフリーもやるらしいし、沢登りも経験豊富なので、同行することにした。Nobさんの的確なアドバイスのおかげで見事クリアーできた。

 2ピッチめはすぐ上の狭いチムニ-を登ったが、ルートをミスしたらしくて右側にトラバース、こっちが正解のようだ。上の大きな岩溝を登ってチョックストーンを超えた個所で、岩角にスリングをかけてピッチを切った。ルートミスしたためにロープが重くなり、10m先のビレーポイントまで行けない。

 我々がもたもたしているうちに、脇の岩稜をリッジ通しに追い越していった若い2人のパーテイーがあった。後続の別の2人にも追いつかれた。この方たちは京都の人で岳樺クラブのホームページで我々のレポートを読んで頂いているとのこと。7月の北岳バットレスでクニさんの写真が載ったので、顔を知っているらしい。

 3ピッチめは平凡なルートで終了した。クライミングに関しては1ピッチ目がやや核心、2,3ピッチ目は非常にやさしいルートであった。前穂までに10m程度の下降がありここで懸垂のためにロープを使った。

 14時35分前穂岳山頂に到着。III・IVのコルからちょうど3時間を要した。
 4人で固い握手をして記念撮影。続いて到着した京都のお二人を入れて6人でもう1回記念撮影をして楽しんだ。天気も恵まれ、視界も良好、心ゆくまで山頂の景色を楽しんだ。岳沢ヒュッテでは生ビールで乾杯。脱水気味の体に最初の一口が染み込んでいくのがわかる、おいしいビールだった。


■8月13日
 5時起床、平島さんのケルンを整備してお線香を上げ、上高地に下山。
帰りも順調に車を飛ばして、途中小渕沢の温泉で汗を流し13時に韮崎にもどりSTEPを少し見学してから、仲間を駅に送った。 


【計画のコンセプト】

 岳樺クラブの従来の夏山登山というと、剱・別山平にテントを持ち上げて、そこからサブザックで八ツ峰周辺の岩場にアタックをかける、といった定着登山方式が定番だった。
 最近は、小川山・廻り目平にテントを張って、フリークライミングを楽しんだりしている。これも定着登山そのものだ。
III・IVのコルにて なぜ、定着登山か?答えは簡単。楽だからである。中高年にとって、重荷を背負ってのクライミングシーンはきついことこの上ない。多少、入山時に重荷でも、行動はアタックザックで軽快にいきたい。こういう理由から定着登山方式を採ってきたといえる。

 そこをなんとか変えられないか?軽い荷物で移動しながらの広範囲なクライミングを楽しめないか?
 西湖の湖畔でワインを飲みながら3人で考えたのが、山小屋を積極的に利用した移動クライミングである。
 山小屋で食事の世話にもなり、軽量の荷物で移動しながらのクライミングを楽しみたい。そんなことをまじめに考えた。

第1日:横尾山荘泊まり。
第2日:横尾~涸沢~北穂東稜~北穂高山荘泊
第3日:滝谷ドーム中央稜~吊尾根経由~岳沢ヒュッテ泊
第4日:体力に余裕があればコブ尾根登攀後、上高地へ下山

…というプランを考えた。
第4日目はともかく、第3日目までは無理のない行動計画だと思う。残念ながら、実際は台風の本土接近・上陸の恐れがあったため、計画は大幅に変更され、

第1日:横尾山荘泊まり。
第2日:横尾~涸沢~前穂北尾根~岳沢ヒュッテ泊
第3日:上高地へ下山

…となってしまったが、それなりに充実感・達成感のある山行ができたと思っている。
 来年は、ぜひやり残した北穂東稜、ドーム中央稜をつなげてみたい。


【北尾根IV峰のこと】
 われら4人とも北尾根は初めてだった。
 当初は、北尾根をやるつもりではなかったので、事前の情報収集も不十分なものだった。核心部はIII峰の登攀かな?と漠然と考えていたが、実際に登ってみてらまるで違っていた。ルートの核心は間違いなくIV峰である。リッジ通しで行こうと思ったが、鋭いピナクル状の岩峰が行く手を阻み、やむなく涸沢側を巻くことに。
 しかし、巻くルートは浮き石だらけで落石も頻繁に起きる、いやらしいルートである。大人数での通過は特に気をつけたい。
 そういえば、北穂側から眺める北尾根の中で一番目立つのはIV峰であり、III峰やII峰は主峰のおまけにしか見えないものね。


【山小屋の食事】
 久しく山小屋を利用しないうちに、小屋の食事もずいぶんと良くなった。カロリーなども考慮されたバランスのいい食事が提供されるのには驚いた。
 横尾山荘のお弁当(¥1000)など、クロワッサン3個、サラミソーセージ、チーズ、蜂蜜バター、ジャム、りんごジュース、オレンジなどと、非常にバランスが良い。まさに行動食といえる代物だった。
(記 Nob)
       

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