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房総 鋸山南壁フリークライミング

鋸山南壁再訪 -南壁入門私的ガイダンス-


■1月23日(日) 曇りのち雨(珍しく寒かった) 

 山と同じくらい海の好きな私にとって、城ヶ崎と鋸山は、とても気に入ったエリアである。
 波しぶきをあびて、あるいはきらめく波間を見てのクライミングは、爽快である。
バリエーションルート、アルパインクライミングは、緊張感や達成感があって良いのだが、仕事を緊張してこなさなければならない時期には、ツライものがある。

 精神的・肉体的コンディショニングを自分の納得できる水準でやろうとしても、できないからである。それに、一年の山行における緊張と弛緩のリズムもある。
そんなツライ時期は、テニスやジョギングのつもりでフリークライミングにでかけるのが良い。

 そんな納得の仕方で鋸山に向かう。しかし、鋸山は、湾岸道路の本牧ランプから車で5分の所に棲む私にとっても遠い。、城ヶ崎の方が近いし、八ヶ岳とそんなに時間距離は変わらない。

 内心ブツブツ言いながら出かけるのだが、一年ぶりに行ってみるとなるほど個性的な得難いエリアである。アプローチ5分、トップロープのセットは10分以内、多彩なムーブを要求するルートなどなかなか魅力的である。

 もちろん海をみながらのクライミングである。そして、今日も、南壁100mに続く空にはトンビが上昇気流を受けて、円弧を描いている。

  幕張本郷に4人が集合する予定であったが、カナさんが風邪で不参加となり、<MIKIさん、Nobさん、錦少年という、仏シネマ冒険者達と同じ組み合わせの3人>となる。でも、この3人、足、手が治療中とか病み上がりとかどこか具合が悪い。

 3人ならということで車もレガシィからジムニーに変更となり、シネマ冒険者達のイメージから、ますます遠ざかる。ジムニーでは、同じ仏シネマでも、さようならモンペールの父娘の世界である。仏シネマに興味無い方には余計な話だが。

 鋸山自動車道(有料700円)を途中まで登り、いつものごとく、陽光の中、クライミングエリアに着く。車を降りてたったの5分。今日は開拓者のT師匠と奥さんもお見えになっている。
 トップロープのセットは、あらかじめセットされたトラロープとの入れ替えだから、あっという間に終了。

 まず浮島ロックガーデン南面の宇宙遊泳(5.7)から始める。ここは微苦笑さんの命名で、下部がフェース、上部がクラックである。体を温めるのに良いルートである。今回は登らなかったが、カンテをはさんで反対側フェースをのぼりバンドを左にトラバースしてクラックにいたる宇宙への旅(5.8)も最初のルートとして悪くない。

 その後三つ星ルート、トライアングルを試みる。下部がディエードル(5.9+)、ハングを乗り越え(左10cd、直上11ab)、フェースを登るという、バランスとパワーの両方がいる変化に富んだルートである。

 今回が鋸山デビューとなるMIKIさんがまず取り付く。彼女は、下部で一度テンションとなるが、T師匠の指導の後登り直し、下部ディエードルを難なく通過しハングにいたる。その後リーチが足らないということでハングは左ルートを避け、直上ルート(11ab)を治療中の右足のたち込みと右手引き付けで突破。これには唖然。師匠も力ありますねー!とのコメント。凄いなー!

 これに刺激され、病み上がりとか言っておれなくなった錦少年が左ルートからさんざんテンションの後ハング越え。腱鞘炎のNobさんも、錦少年の「オオオシイー!」との落とすための、かけ声にも乗らず、下部を難なくこなし、数度のテンションの後左からルーフ越え。

 お次は、トライアングルの右のサウスポーにとりつく。グレードは10aなのだが、カンテを蛙スタイルで抱きつきのぼるのである。柔軟性と握力がいる。テンションの嵐の後、とにかくずりあがる。このルート、いまだT師匠以外は登れない、不思議な10aである。

 浮島ロックガーデン南面には、トライアングル左のフェースを直上するトライアングルダイレクト(11ab)もある。上記のルートも含め、これら6本の5.7から11abのルートは、二つの支点(鉄輪)とトラロープが整備されているのでお勧め。

 昼食の後は、林間フェースの右端の無名ルートに取り付く。下部がディエードル、フェース、上部がダブルクラックである。ここは意外と上部で考えさせられるのだが、全員が難なくこなす。5.8で、MIKIさんの命名で「流星群」となる。

 そして、林間フェース中央のダブルマントル(10cd)に取り付く。二回のマントリングと指にくるフェースとなかなかのものである。下部のマントリングに成功するも、結局上半のフェースは全員ギブアップ。去年は登れたのになー!アイゼンクライミングとかアイスクライミングなんぞやっているとたった2カ月でガクンと落ちる。悲しいなー!

 林間フェースには、左端のコーナーに海辺のパラダイス(5.8)、その右のフレークを登るナナドゴブ(5.9)、右端のカンテを登るギャングエイジ(5.7)など合計5本のルートがある。林間フェース右手の踏み跡とトラロープに導かれてテラスに登ると、簡単にトップロープのセットができる。支点は木か、複数の打ち込まれたアイスハーケンを使う。ここもお勧め。

 最後は、ウェットフェースのサソリクラック(10a)である。下部は苔むけしている上、雨がポツリポツリ降ってくる。腱鞘炎のNobさんはバンドにあがり、下部で止めることにする。とりあえず、苔を掃除してくれたことだし。MIKIさんは、下部は軽くクリアーし、上部はもうれつな粘りとファイトで終了点へ。下部は体の振り、上部はハンドジャムがポイントである。ハンドジャムを使わなかったMIKIさんは上部で苦労する。猛烈に頑張ったためか降りてきた時、彼女はほっぺたが真っ赤なMIKI少女に変身。
 この1年クラックに通った錦少年は、昨年初めてとりついた時よりは楽に登れる。

 サソリクラックはすばらしいルートなのだが、南面していないのが欠点である。ここは、浮島ロックガーデン南面の西の雑木林を登りトラロープと踏み後を辿ると支点の鉄輪に辿りつく。乾燥している1月から3月がお勧め。できたら少しでも陽のあたる午前中がよいかも。

 さて、3人がサソリクラックを登り終わったころには、雨も本格的に降ってきたので今日はこれまでとする。鋸山は遠いのだが、アプローチが無く、トップロープのセットに時間がかからないので、効率的だし、余計な作業もなくノンビリとできる。今日は曇天で陽光に恵まれなかったが、普通ならビールでも飲んで昼寝する場所である。南面している左上クラック神奈川(かんながわ)や大平洋を見おろせるアイビークラックの再整備にとりかかりたい。今シーズンはこの二つが目標だ。

 ここのクラックは、小川山、甲斐駒赤石沢ダイヤモンドフランケ、韓国仁寿峰、ヨセミテにつながっている。房総のきらめく海をみながらそう想像するだけで心がはずむ。それに、この景色は、二人の子供を育てた海辺の町を憶いださせ心が和む。ともあれ、たった20mの砂岩のクラックがそんな夢と希望を与えてくれるのだ。

 帰路の車の中で、「今年は、小川山、甲斐駒赤石沢ダイヤモンドフランケ、韓国仁寿峰、ヨセミテ」と三人で話しが弾む。全部は無理としてもいくつかは必ず実現するだろう。そう信じている。夢と希望を与えてくれた鋸山南壁を後にして、春のような雨の中、房総の山々を通り抜け、われら<冒険者達>は、南の海辺から北の街に帰る。
(記 錦少年)                               


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