北アルプス 剱岳・別山平(別山北尾根)
憧れの剱岳
昨年春に久し振りに後立山縦走、しばし剱岳を眺める。剱が語りかけてくる。「もやもやしているようだな。そんな時はいろんなしがらみを忘れて、願望をストレートに思い出してみな。」
がつがつと山に行きたい。重荷に喘ぎ、雪を踏みわけながら長い道程を越える。何の助けもなく己の力でルートを見極め、頂を極める。今回の山行は私の願望そのままを実現するものであった。
春の岳沢は天候悪く停滞、7月のバットレスは出張と重なり不参加。
“チンネ”…相手にとって不足はない、挑戦者の私はちょっと実力不足か、なにはともあれ万難を排して夏合宿に参加しよう。
雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ?
8月7日夜、新宿から直通バスで室堂へ。8日ターミナルから外へ出ると雨と風。先が思いやられる。雷鳥沢までのハイキングコースでは雨で滑る。別山乗越への登りは雨水が溢れ、まるで沢登りである。
剱沢到着後富山県山岳警備隊事務所へ登山届提出。当初真砂沢ベースとし、ハシゴ谷乗越~内蔵助平~黒部ダムという下山予定であったが、ルート状況が悪く帰りのことを考え剱沢ベースに変更した。
8月9日
濡れた登攀具乾かした後、別山の岩場で体を慣らす。ザイルオーダーは4人1パーティーということで 金田さん-平島さん-荒井代表のラインと金田さん-国本の2本のラインとする。
2ピッチ程度のルート核心部2個所に金田さんの設置したアブミを使用して終了点へ、一般道をたどり、剱沢小屋でビールを買い帰幕。夜、雨と風強く潰れるテント多し。我々のテントも強風によりフライが裂けてしまった。夜中にキャンプ場管理者からテント破壊されたものは登山研修所に避難するよう勧告あり。親切なキャンプ場である。春の何処かとは大違い。
8月10日
夜が明けてから見るテント場の惨状は目を覆うばかり。今日も天候不良、雨が上がるとあちこちのパーティーがテントの側で観天望気、空をじっと見上げる。荒井代表の言う通りまるで“ミーアキャット”の集団である。雨が再び降りだすとミーアキャット達はすぐにテントに引っ込む。終日雨、停滞である。翌日から2日晴れてほしい。
8月11日
朝から天気は良くない。下山の決定。後ろ髪を引かれながら室堂へ向かう。帰りは、立山黒部アルペンルート。重いザックを担いでの交通機関の乗り換えは今回の核心部か、ヘロヘロで扇沢へたどり着く。大町温泉郷で入浴の後、特急あずさで一杯やりながら帰路へ着く。
もう一つハプニング
一眠りして目を覚ます。あれーまだ富士見だおかしいな。場内放送によると、落雷による信号故障でダイヤが乱れているらしい。やばい帰れない。これなら大町で民宿に泊まれば良かったか、それとも小川山に転戦すれば良かったか。
甲府を過ぎたあたりから順調に流れ出す。終電に乗れそうである。八王子で金田さん横浜線に乗り換え、桜木町行き最終に乗れた。橋本で京王線に乗り換え上り最終皆な走っている。よたよたと切符売場にたどり着いたその時電車は行ってしまった。いつもは走ってくる客を待っているのに今日は行ってしまい、結局タクシーで帰ることになった。
今回剱岳にはまったくタッチできなかったのな残念であったが、久し振りに目の前にして新たにチャレンジスピリットが沸いてきた。
特上の鰻重を注文し、肝吸いだけすすって帰ったような気分である。また、ぜひチンネに挑戦したいが来年はヨーロッパアルプス?再来年か。
当初下山予定の、真砂沢よりハシゴ谷乗越経由内蔵助平から黒部ダムへというルートもぜひ辿ってみたい。剱の余韻にひたりながらの約6時間の歩行も味わいがあるだろう。
別山の岩場、花崗岩の快適なクライミングであった。ルートは無数にあり人も少ない。今回は貸し切り状態であった。テントから取付きまで近く、剱を見ながら登れる贅沢な岩場である。 (記 クニ)