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横岳西面 中山尾根 1999/12/31

前日(30日)、岡部さんに追い飛ばされながら赤岳から横岳、硫黄と縦走した竜少年はまだ疲れが残っている。錦少年も前日再度の入山で少々寝不足気味のようでもある。それでも何とか起床(3:15)。具沢山味噌汁というよりもトン汁を腹いっぱい食べて岡部さんの見送りを得て中山尾根に向かって出発した(6:05)。

まだ、未明の暗さでヘッドランプを頼りに歩き出す。中山峠から右に踏み跡をたどって樹林帯を行く。程なく明けて赤岳・阿弥陀岳の向こうの空が青く輝き始めた。

07:30 第1岩峰の取り付き着。先行パーティ4名の2番手が登りはじめている所だった。正面の少し右のフェース状のところが登れず苦労している。

竜少年の見たところそこはどうも難しいラインで、本来のルートは右のカンテ状から行くのではないかと錦少年に確認したところやはりカンテ状が第1歩らしい。正面の凹角もありそうだ。

08:00 待つこと暫し。ビレイ点にビレイをとる。リードの錦少年が右のカンテ状からスタート。雪や氷のかけらも無く、薄い手袋で十分だ。セカンドは竜少年。第1歩第1手を越えればあとは凹角にそって登るだけだ。

第2ピッチ目 竜少年がそのままツルベで行く。本来は岩峰をそのまま行くルートもあるがバンドから左に回りこんで、雪壁状を這松の根にランニングをとって稜上にでる。

錦少年を迎えてそのまま2ピッチ程潅木と岩の混じった雪稜を攀る。すると上部岩壁と言われる第2の岩壁に突き当たる。例の先行パーティのやはり2番手が苦労している。少しお腹をこしらえている間にようやく朝日があたってき始めた。この第2岩壁が本ルートの核心部。凹角状のルートやカンテ状などラインが2~3は取れそうだ。

11:15 先行パーティの4人目が上り始めてこれも苦労しているので、錦少年は凹角の左のフェースというかカンテを登り始める。

ハーケンにランニングをとって念のため岩頭にシュリンゲを巻く。このランニングビレイが後で役に立つとは思いもよらなかったのだが…。

その岩頭下のスタンスに左で乗り込む、右足が決まらず右左交互に足を取り替えたり落ち着きがない、下から見ている竜少年は「え~、アイゼン履いて足の交差か~。」と少々不安で見ている。

錦少年左手を伸ばしてやや強引に身体を左側に振ろうとしている。竜少年「え~、一寸、ちょっと、少し強引じゃねーか。」と不安が増幅する。と、その瞬間、錦少年の左手の向こうに青空が広がったのと竜少年が右に身体を振ってロープを握り締めたのと錦少年が竜少年の頭上で止まったのと殆ど同時に起こった。

一瞬の出来事である。空中で錦少年が「え~、落ちたか、ホンチャンで落ちたのなんて初めてだ。」と意外に冷静に話している。まるでT-WALLのような雰囲気である。あの岩頭に巻いたシュリンゲとハーケンが良く効いてくれた。

ゆっくりとバンドに降ろす。掠り傷ひとつ無いという、ひとまず安心する。これで錦少年の闘志が燃えたらしく、小休止後再チャレンジ。同じところを難なくクリア。

竜少年は思った。「何で先ほどはあんなに強引だったのだろうか、何の気持ちの表れなのだろうか、彼をしてあの強引な行動を起こしたのは何だったのだろうか?」「これは後でゆっくり自己分析してもらわなきゃならないな~。」

核心中の核心。凹角の出口。ここはビレイヤーからは見えない。ゆっくりとロープが伸びてビレイ解除。今度は竜少年の番。

先ほど錦少年が落ちたところに来る。意識的にゆっくり攀る。岩頭下のスタンスに左足を乗せ乗り込む。良く見れば右足も乗る。

少し細かいけど慎重に行けば超えられる。そこを過ぎると出口はチムニー状でかぶっているように感じるが手、足が豊富なのと残置ハーケンがたくさんあるので落ちるようなことは無い、と思うが少し怖い。

しかし腕力と体力はメチャクチャに使う、ようやく出口から顔をだして「錦さん、ちょっと休ませて。しっかし、錦少年さん、よくこんな所リードできるな~。」と思わず泣きと感心で息が切れる。

ここを過ぎれば、易しい岩交じりの雪稜を3~4ピッチ行くと縦走路に飛び出す。「お~、やったか。」堅い握手をしたのが12:15であった。

見渡せば、富士山、南アルプス、中央アルプス、御岳、白山そして屏風のように連なる北アルプスが白く輝いていた。



【コースタイム】
行者小屋B.C(06:05)---中山尾根第1岩峰取り付き下(07:30)---登攀開始(08:00)---終了点(12:15)


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