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長谷川恒男カップ - 佐々木貴之の24時間耐久レース

山道72km,24時間山岳耐久レースなんて、恐ろしいタイトルを聞くと震えあがるし、最後まで参加意欲は湧かなかった。

今年はヨセミテを目指してクライミング中心で行動してきたし、山道を歩きだしたのも9月下旬からである。
8月下旬からトレーニングを開始したものの、自信がもてない。当日は好天で、一ノ倉に行きたいというのが正直な気持ちであった。

そうは言っても、参加宣言し、お金も払いこんだし、メールで激励されるし、体調も良いし、ヒロリンさんは応援にまで来てくれるし、止める理由が見つからない。まー、自分の体力がどの程度か知るには絶好の機会である。

それに、24時間歩いて煩悩を絶ち、これまでの人生を反省し、これからの暮らし方を考えるのも良いだろう。 有難き地蔵さんが描かれた日本手拭頭を頭に巻くことにする。地蔵さんに助けられ、歩く座禅を試みることにする。この手拭は広島で二つ買って、一つを平島さんに何かのお礼に渡したはずだ。

快晴に恵まれバーンという懐かしい音を合図に、ヒロリンさんの声援で、竜少年と平島さんのお嬢さんと一緒に、完走と歩く座禅をめざそうとスタートする。



■ 行動概要
20時間タイム組に入るが、山道までの道路では走る人もいる。時々、その人達のペースに乗せられて私も小走りする。変電所あたりで、足のつけねあたりが重くなってきたので、ヤベーと思って歩くことにする。トコトコ快調にあるく。

荷物は軽いし、天気は良いし、空気は旨く、あたりは紅葉、まわりはレース参加の美女で溢れているし、なんの不満があろうぞ!歩く座禅はおろかレース気分もふっとび、雑念と妄想と煩悩を朋とし、ハイキングを楽しむ。5時30分ころヘッドランプを用意し、オーロンのジッパーつき冬用下着を着込む。

喉は渇いていないが循環機能維持のため水を200cc飲み、おにぎりと餅をそれぞれ二つ食べる。それからスタコラ歩きだす。
とにかく、山道72kmというのがどんな疲労をもたらすか想像もできないので、いつものゆったりした山歩きのペースで進むことにする。6時35分に第1チェックポイントに着く。ペースに余裕を持たせたせいか、カーボンローディングやバームの効用か全然疲れていない。高級サロメチチールを足に塗込む。さらに、リゲインを飲みカステラと三笠を食べる。

休息もそこそこに歩きだす。浅間峠から三頭山まで667mの登りはけっこうあるし、途中登り降りもある。三頭山の手前で一休み。みんなハーハーいいながら登っている。若いとあんなにきついペースでも持つのかと感心する。おまけに山道の登りをツマ先立ちで歩いている。フクラハギが疲れるだろうに。こちらは、ガニ股、フラットフッティングでゆっくり山屋スタイルで登り、三頭山に22時30分に着く。ナムアミダブツと唱えながら修行僧のつもりで歩くつもりが、気がついたらナムカンノンボサツと唱えていて、いかんなーと反省している内に、なんとなく着いてしまった。いまいちレースの実感が湧かない。ホンマカイナと思う。遊さんの家に電話する。かなり寒いので、薄手のフリースをさらに着込む。これは失敗。下りで暑くなってしまった。下りにそなえ、再度サロメチチールを塗る。

三頭山から 第2チェックポイントまで気分的にはけっこうあった。三頭山の下りではストックの世話になりっぱなし。時々満月を見ては気分転換し、平らな道ではナムカンノンボサツと唱え妄想にふけったりする。ツクズク、煩悩絶ち難き身と実感する。それから自動車道路に出たり入ったりして、関西弁のお兄さんに『月夜見山の駐車場の前の道はアブナインヤ』と言う話を聞いたりして、午前1時に第2チェックポイントに着く。ここで水1.5Lを受け取る。またしても、高級サロメチチールをたっぷり塗込み、カステラ、餅を食べ、バームを飲み出発する。

第2と第3のチェックポイントの間では気分が一転する。ドット疲れが出てきて、足も重く、敗残兵状態になってしまう。午前1時に第2チェックポイントに着いた時は、まだまだ調子良く、ひょっとしたら20時間以内にゴール到着という気分だったが、この区間では完走だけが目標になる。周りでは、若者がハーといって一人また一人とすわりこむ。父の世代から聞いたインパールやレイテの話を思いだす。

御前山の登りでは岩場のある山道になってきて、『なんでこんな道があるんや』と心中ぼやく。下りもヨロヨロが目立つが、気を引き締め転倒しないよう注意する。わずか300mの標高差と思った大岳山の登りも、疲れた体に堪える。このあたりでは緩い坂道にもかかわらず、数十人の青年に抜かれ、悲しく老いた身を知る。やっと、ナムカンノンボサツでなくナムアミダブツを唱え、ひとりトボトボ寂しくストックにすがり暗闇の中を歩く。
これからの人生を暗示されているようだ。ハイキング気分もすっとび、やっぱりレースも人生もキビシイーと感じる。やっとのことでたどり着いた大岳山では、餅を食べ、今まで心臓に悪いと考え使用しなかった、強力ドリンク剤を服用した。そこで夜が明ける。

大岳山での 朝の訪れとともに体調は回復し、強力ドリンク剤の効用もあってだんだんエラク元気になってきた。陽はまた登るである。下りは走り始める。第3チェックポイントに午前6時15分で500番。受け付けの女の子にスゴイとか煽てられ、スタッフに小走りすれば2時間でゴール到着と言われ、カステラ食べて、6時30分にゴール目指して動きだす。根が乗せられ易い性格なので、要注意と思うのだが、なんとなく絶好調なのである。
緩い下りは走り、それ以外は歩くということにする。20時間を切ることが目標だ。小走りでかなりの人数を抜き、快調にゴールを目指す。山道を抜けた所でストックをたたみ格好をつけ、本格的に走るスタイルでゴールイン。午前8時29分着。男子419番だった。

なにもかも、ヒロリンさんのマネだったけど、予想以上で満足。さっそくヒロリンさんに電話で報告。ヒロリンさんに、エッー!20時間を切ったのですかと言われたけど、 第2と第3のチェックポイントの間以外では、そんなに苦労しないで気がついたらゴールというのが正直なとこです。ヒロリン監督のお陰です。

道中ほとんど、ナムカンノンボサツを唱えナムアミダブツを唱えたのは体調の悪い時の暗闇トボトボ歩きの2時間位です。本当は、ナムアミダブツを唱え人生を深く考えながら歩こうと思ったのですが、歩く座禅は失敗でした。

それにしても、この前の一ノ倉とか3年前の別山平からCフェース往復の方がきつい感じです。どうも、そのあたりの比較が良くわかりません。



■ コメント…歩き通して感じたこと…
今回は何も考えず完走だけを目標に、ヒロリン監督の指示どおり、行動して良かった思います。これをタイムを意識したり、ペース配分を自分で考えると途中で疲労困憊リタイアーです。なにもかも、ヒロリンさんのマネですが、わたしには合っていたと思います。

それに、エネルギー補給です。カーボンローディング、脂肪燃焼、行動食です。アルパインクライミング常用の赤飯、すあま、饅頭に、新しく塩味豆餅とカステラを試みましたが、カステラは失敗でした。水はザックから出すのは大変で、やっぱりネットのサイドから取り出せる方法が良いと思います。飲んだ水は合計3Lほどで、1L余りました。のどが渇いた感じではないのですが、意識して飲みました。

夜道は、ヒロリンさんのアドバイスでライトを二つ使いました。ヘッドランプを頭とお腹に着け、少し先と足元を照らしました。ストックは必携です。この二つで足腰の負担は相当軽減されます。

このレース、タイムを競わないなら、山屋に有利です。山道を行動食をとりながら長時間ユックリと歩くのは、山屋の技術です。私は10~15分の休憩を9回とり後は歩き続けました。山道をツマ先立ちで、薄着で体熱を奪われ消耗し、オーバーペースで回復できないまで疲れ、行動食もあまりとらないというのが、山に慣れてないランナーです。山とレースの両方の経験が必要なのでしょう。私自身の感覚では、内臓に関しては20kmほど平地を走りこんだ時の方が疲れるし、足腰は30kg余をかついでベース入の方が堪えます。

竜少年さんの記録はすごいと思います。足首に弱点のある竜少年さんにとっては、作戦やトレーニング方法を自前で考えなければなりません。帰りの電車でトレーニング方法の話しをいろいろしました。かなり専門的治識が必要なのでしょう。

特別の弱点が無い人にとっては、トレーニングしヒロリンさんの方法を取り入れたら、完走は十分可能と思います。Nobさんやクニさんなら16時間で完走できるでしょう。
                                        

(佐々木貴之 記)

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