長谷川恒男カップ - 竜少年の24時間耐久レース
24時間かけて奥多摩の山稜を歩き続ける「耐久レース」に何を思ったか岳樺クラブから二人のオジサンが参加した。 一人は完走を果たし、一人は途中リタイアの結果となった。これは本人の予定どおりの場所でリタイアした貴重な?記録である。
私が歩いている側を古舘イチロウが実況中継をしていた。所々聞こえなくなるが一寸聞いてみよう。
「この、漆黒の闇の中を、睡魔と闘いながら、己の身体を前へ上へと押し上げる、山を登りそして下る。自らの心と身体の極限を求め、あるいは心臓の鼓動に、呼吸の荒さに自分自身を切り刻んでいく、何が彼をそうさせるのか、何故彼はこの無謀とも思われる行為に挑んだのか、彼の一歩一歩に、己の中に何を求めているのでしょうか、人の、人間の無償の行為を、ロマンと言わずして、なんと言えば良いのでしょうか~・・・。」
このレースは申し込みをした時点から始まった。カレンダーの10月23日に大きく赤で○を書いた。
8月ヨセミテから帰ってからは、酒も控え(ほんの少々控え)、9月になってからは極力体内に栄養を貯えるような食事に心がけた。
歩いているようなジョギングだけど、4キロ~6キロを10キロ走に伸ばし、スクワット100回、腹筋60回を自分に課したが、やったりやらなかったり意志の弱さが表れた。
並行してインターネットでハセツネカップの実走記録、平島 奈緒子さんの昨年の記録を何度も読み返したりした。直前になって岡根様からアドバイスと激が飛んできてこれも有効で、私の考えている事を裏付けてくれたので、とても心強かった。
トレーニングと左足首の兼ね合い、激しくやれば足に痛みが走り、やらなければ痛くないけど、成果は望めない、そのジレンマに悩み、どうすれば効果的なトレができるのだろうか、と考えているうちにスタートの日はどんどんと近づいてきてしまった。
暫く歩く山行をしていないので、試走(試歩)をスタートラインから市道山までやって、靴の状況や食料、水補給を経験して、イメージを掴んだ。
思えば、完走の成否は、当日、スタートラインに立ったときには、もう結果が表れていたのだ。それは、トレーニングをすればするほど、実走記録を読めば読むほど、一層ハッキリしたものになってきた。
自分の身体とトレーニングの状況と成果をハセツネに照らし合わせれば、自分はどこまで行けるか、が初回ではあったが見透かす事ができた。
それは、事前に配られたコースマップのポイントポイントに自分の走破できるタイムを書き込んでいけば、できる数字かどうかで判断がつくのである。
【装備】
- 先ずストック2本は必携。
- 手袋。
- リチウム電池のヘッドランプ。
- 予備電池2個。
- 他にマグライト1本。
- スパッツ(靴の中に土砂の浸入防止と足首保温に役立った)、
- 薬品(アンメルツ、靴擦れ防止用テープ、胃薬、抗生物質など)
【食料】
- 水2.5リットル(水は三頭山までで2リットル消費)
- ビタインゼリー3
- アミノバイタル3
- 葡萄糖
- 赤飯お握り4
- アンパン3
- カステラ
- 衣料他
- お灸セット一式
- オーロン肌着
- いつものシャツ
- 薄手フリース
- ゴア上下
- その他小物類
以上総重量 7kg。
【通過コースタイム】
|
五日市の学校の校庭で1時ジャスト、ヨーイドンのピストルが鳴った。約1300人。噂のニッカーに重登山靴のオジサンも見た。小走りに近い速度で歩いていく。中には長靴の若い人がいたがどうも完走目的とは思われない。
入山峠15:00。奈緒子さんとピッタリ計算通りと話し合う。大会役員が前に1000人、後ろに300人ですよ、と教えてくれる。
赤飯、ビタインゼリー、水補給、アンメルツを塗り込み、飛ばす。
奈緒子さんは言ってみれば、飛び入り、一発参加だが、ピッタリと後ろについてくる。若さと、Y県バドミントンチャンピオンは違う、と感心する。市道山を巻いて醍醐丸に近づく頃ツルベ落しの太陽が一瞬にして沈みヘッドランプの世界となった。
景色を見るでもなく、歩く事を楽しむでもない、ただひたすら時間と闘って前へ、前へと行くだけである。第1関門の浅間峠には遅くも規定の2時間くらいは早めに着きたい、と思い相当早く歩いたつもりだったが、夜間歩行という事もあって、21:25であった。
休むとシンシンと冷気が身を包み身体全体を硬直させる。第2関門まで6時間。通常の山歩きで8時間のコースタイム。走ら無い限り規定時間には間に合わない。
ここでリタイアすれば熱いコーヒーがありますと甘い香りが誘惑する。行くだけいってみようと話し合う。そんな気もちが出たのか、疲れが出たのか多少ペースが落ちる。
西原峠で休んでいると、スイーパーされてしまった。まだ、相当後ろにいると思ったけど、多分第1関門の甘い香りに負けたのだろう。三頭山までスイーパーされたのはぜんぶで10人くらいであった。
三頭山から鞘口峠に下る頃から明るくなって、不思議なもので明るくなると多少元気もでてきた。奈緒子さんの筋肉痛はもうマヒしてあまり感じなくなったらしい、足の豆と筋肉痛でよくここまで来たと思う。
彼女には何度も励まされた。38キロであったが、大休止をする事もなく、勿論眠る事も無くただひたすら歩いた。私は幸い左足首以外どこも何とも無い、大腿四頭筋も尻の筋肉も全く元気で痛くもかゆくも無い。
鞘口峠からのんびりとバスの待つ都民の森の広場へ、眩しい朝の光の中を下った。
【長谷川恒男カップを終わって】
私の場合、足首と体力回復がどれほどのものなのか、自分でどこまであるけるのか、が命題であった。予想どおり、三頭山までであった。これは、前述したとおり、トレーニングと自分の身体の調子で見極めがつく。
特段の身体に故障の無い人なら完走はできる、と思う。したがって岳樺の健脚の清水さん、国本さん、伊藤さん、塚口さん、百合の花さん、ヨリ姫さん、チャコ姉さんなどは間違いなく完走できるのではないかと思うので、来年是非チャレンジして欲しい。
私は、完走はできなかったけれど、自分で計算した通りあるけたので、このなんの楽しみも無いハセツネであったが、ほぼ満足している。もしかしたら、来年またやってみてもいいな、と思っている。
(竜少年 記)