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笛吹川 東沢 東のナメ沢溯行 (日帰り) 1998.7.28の記録

<杉>さん、若き日?のレポート。釜ノ沢を登りに行ったのが、間違えて東のナメ沢に入り込む。それでも登り切ったのはさすが。でも、よい子のみなさんは真似しないでね。(98年07月28日)


去年の秋に朝のNHKテレビで東沢の沢登りを紹介していた。これをみて無性にやりたくなり、今年も7月になったので、20数年ぶりに沢登りを復活させた。いきなり本番では不安なので、まずは7月11日に植松氏が主催した濁り沢の素人向け講習会に参加して基本をおさらいした。

この後、渓流シューズを買い、カラビナ,シュリンゲを買い足して準備して28日実行した。この日はあいにく小雨だったが、11時間のハードな、しかし充実した山行となった。同行のH氏は沢や岩は未経験であるが、体力や精神面に不安はないので、現地で確保法を習得してもらった。



■ 行動概要

朝5時韮崎を出発、甲府のH氏宅でどうしようか迷う。今日の天気は曇りか雨。釜無川の水嵩も増えていないし、山はそんなに降っていないと判断し行ってみることにした。

6時40分、西沢渓谷の入り口駐車場に車を置く。7時に東沢の入口でシューズを履き替える。私は渓流シューズ、H氏は本格的な地下足袋。 雨の降るなかを東沢の遡行がはじまった。

3回ほど渡渉すると、道が左岸の斜面に沿って延びている。しばらく行くと有名なホラ貝の淵の上を通過する。1時間後に山の神、昔はここから西沢渓谷に至る登山道があったとのことで、大岩のうえに崩れかかった丸木橋の残骸が残っている。ここが下山時の左岸の登山道への入り口の目印となる。

8時すぎに、東沢の右斜面(鶏冠山側)に巨大な岩壁を見つける。ガイドブックでは東のナメと呼ぶらしい。入り口に滝がありその上に4段くらいの巨大なナメがはるか霧の中まで延びている。

でもまてよ。これは釜の沢だろうか? それにしては本流と比べて水の量が少ない。とH氏の読み。釜の沢は甲武信小屋のすぐ下まで続く長い沢のはずである。しかし気持ちははやくもこの岩壁に取り付かれてしまった。雨も降っているし、今日は途中で敗退しそうだ。それならこのナメ岩を登ってみよう。

まずは左の林の中を登り、高さ100mくらいで、ナメの緩斜面に出た。ここで記念撮影。ここからが核心部である。
どろどろの体でやっと一服

傾斜もきつくとても直登できないので、再び右岸を高巻くつもりで少し登ると、垂直の岩壁に行く手をはばまれた。やむなくナメ滝にトラバースで戻る。ここからザイルを使い、確保してもらいながら棚を進む。ナメに出ると、残置ハーケンやボルトの登攀コースを見つけたのでここを登ることにする。H氏に確保のしかたを教え、トップで登る。

20m上の棚までは問題なく登れたが、ここからトラバースして樹林帯まで1.5mほどジャンプしなければならない個所があった。すぐ手前にボルトがあるが、あいにくカラビナを使い切ってしまった。思い切って飛び無事着地。今日のザイルは8.5mmx30mの補助ロープである。ここをダブルの懸垂では下れない。

核心部の標高差200mを2時間もかかってクリアして、ここからは快適な沢登りがはじまる。ほとんど人の踏跡はない。途中1個所古い焚き火のあとを見つける。ナメの廊下、10~20mの滝をいくつもクリアーする。今日は日帰りだし、時間もないのでここから先はザイルは使わずひたすら高度を稼ぐ。

標高1900mをこえ、水も消えるころ最後の30mほどの大滝にでる。迷わず高巻き12時30分、標高2050m付近で稜線に出る。霧でなにも見えない。

鶏冠山は山梨100名山なのに稜線にはかすかな踏跡しかない。名のように鶏のとさかのように、ゴジラの背中のようにぎざぎざした山稜である。30分くらい南北に歩いてみたが、25000分の1の地図もあてにならず、道標も無く、薮漕ぎも疲れるので午後1時に登ってきた沢を下降することに決めた。

皮肉なことに雨も激しくなってきて、時間との戦いになった。H氏は2足めのわらじに履き替え、滝を巻き、ナメをどんどん下る。途中1.5m以上もある大木の根につかまると根もろとも2m下に落下、タッチの差で
下敷きにならずにすみ肝を冷やす。

午後2時30分、さっきの大岩壁の上にでる。右岸を懸垂で下るにはザイルが足りないので左岸にルートをとった。ナメのところどころに立ち木があり、なんとか懸垂で繋いでいけそうである。部分的には届かないが草付きと棚のトラバースで約100mをつなぎ、最後の30mは滑り降りた。そして残り50mはナメを横切り、再度右岸の林を下って、午後3時30分にやっと河原に降り立つ。午後4時雨もあがった山の神に戻った。

写真はどろどろの体でやっと一服。午後6時に西沢渓谷駐車場戻り。11時間のハードな行程がやっと終わった。


■ コメント…東のナメ沢を溯行して感じたこと…

 今回は20数年ぶりの沢のぼりだったが、天気はいまいちだったものの、満足のいく山行だった。反省点は、やさしい釜の沢を登るつもりだったので登攀装備が不十分だった点である。

 しかし、あの東のナメの大岩壁をみたらだれでも登ってみたくなるはずである。
家に戻ってから山梨100名山のガイドブックで調べたら、鶏冠山は鋸岳とならんで唯二の登山道のない山らしい。暇を見つけて再度チャレンジである。

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