小川山 烏帽子岳 左稜線 ~2019.8.17~

dakekanba-admin

■日程:2019/8/17-18
■参加者:KOO、すけちよ

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今年も猛暑日と熱帯夜に項垂れ、クーラーは連日フル回転の下界ですが、夜中に着いた小川山は、快適な21度。少ない睡眠時間を快適に就寝。
4:30に起床して5:30にテントを出発。6:30にスタートです。
今回すけさんと2人でのクライミングになったので、長いピッチを確実にクリアーする為にロープを9mmダブルから9.7mmのシングルロープに変更して登りました。
1ピッチ目すけさんリード。アップに丁度いいグレード感に、緊張感というよりは朝一の涼しい小川山でクライミングをを楽しんでいる感じが、心地よかった
2ピッチ目は私のリード。ちょっと立ってきた岩壁にジャミングぐロープを付けた手を入れ、登りやすそうなルートを探りながら、新調したカムを掛けつつクライミングシューズのフリクションを試す。
3ピッチ目すけさん、軽く流す。
4ピッチ目の私。ここで小川山左稜線の初洗礼。
10mほど上がったところで、直登ルートのスラブ面にハーケンが打ってあり、そこにヌンチャクを掛けて見上げるが、どう見ても私の技量で上がれるグレードではない。
右に1mほど逃げて優しいルートを登るがこの時、何かにひっかけてしまったのかロープが流れてこない。
ピッチを抜けるのに必要な7m分ロープを左手で手繰りながら、頭上1mの切り株に有る残置ロープスリングにカラビナを掛け、落ちたらグランドはしないがダメージが大きと思い、止む無くA0で突破。
辛いのか未熟なのか全体を通して一番しびれた場面でした。
その後も交互にリードを交代しながら、一瞬怖いトラバースのポイントで先行パーティーが間違って上に登った為に先に行かせてもうことに。
すけさんリードで13Pのハンドクラックも無事通過し、垂直ポイントへ。
トポの20mを信用して私が切ったテラスのさらに、下に抜けなくてはと気が付いた時には、すけさんの降下が始まっていた。
そのまま1段下に行ってもらうと、やらかした感が漂い始める。
前方1.5mの場所に降下用のロープスリングが有り、私が居る場所はどうやら50mだと、1回の垂直では降りきれない場所だったようである。
すけさんが下りた場所は登れる感じの場所では無いので、180cmぐらいの高さにある松の木に3分の1システムを作り手で引いてみるが上がらない。
マイクロトラクション、タイブロック、プーリーを使ってシステムを構築したが、3分の1では70kgを手で引いて上げるのは至難の業。
マッシャーとハーネスをつなぎ、腰に体重を預けて壁を足で蹴りながら15cmづつ何とか引き上げる。脱出できたが時間と体力を大分ロスしてしまった。
16Pの垂直は慎重に見極めてから降下し、17Pを私がリード。クラックをハンドとレイバックで突破。
18Pはすけさんがリード。ザックを下ろし、チムニーに体を入れて上がった所を右へトラバース。右端の辛めのクラッを上がって終了点へ。
ザックを末端と中間25mに括り付けて、私はタイブロックをセットし、ザックを引き上げられるようにカムを外しながら上って行く。もう少しで終了というところで、右手がつりだして手が開かなくなった。
手がつるのを初めて経験したが、足場の安定している場所だったから良かったものの厳しいところだったらやばかった。
18Pを抜けたのは15:00。結構やり切った感と天気に恵まれた小川山の風景を堪能した。
ルートの見極めの甘さは有ったが、不測の事態には何とか対応できたのではないかと思う。
ただ引き上げの時、高さ180cm、テラス巾60cmで70度の角度が付いたロープがテラスの端でこすれ摩擦による負荷がかかっているのを処理し忘れていた。
100円ショップで売っている1mm厚のプラスチック板を適当な大きさでザックに入れておけばこういった場合の摩擦軽減とロープ保護になると思った。
また、今回すけさんがしっかり立った状態で私はテラス上を自由に歩ける状態のシステム作りだったが、これがロープに体を預けた状態からの救助者確保とシステム構築には研究が必要と感じた。
小川山の良いところにクラーボックスを持ち込めるところ。
16:00にテントに戻り山荘で風呂に入った後はキンキン冷えたビールに有りつけた。
翌日予定していたセレクションはコンディションを考え次回に持ち越しとしたが、左稜線は1日でおなか一杯になるくらい、ほんと長くて登りごたえのあるルートでした。

@KOO

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帰りのクルマの中で、KOOさんが、
「左稜線はマルチピッチというよりもアルパインだったよね」という言葉になるほど、とうなずくほど左稜線は長くて奥の深いコースでした。
今回、そんな左稜線20P(実績17P)を最後まで登りきることができましたので、印象に残ったピッチと反省点をレポします。
1P目は私からで、ツルベで進みます。
10P目の「一瞬怖いトラバース」をKOOさんがいとも簡単にクリア。自分には「ずーと怖いトラバース」でした。。。(汗)
自分の核心は2つ。
ひとつめは13P目の10メートルほどのクラック。
クラックそのもののレベルは5.7とそれほど難易度は高くないものの、取付きの一歩目から空中に身を投げなければならない。下を覗くと先が見えないほどの高度感のある崖だ。(空中にあるなんて聞いてないよ~、が心の中のホンネ)
しかも近くに立ち木もないため自分がセットしたカムに頼るしかない。取付く前から緊張感で喉がカラカラになった。
緊張の一歩目を踏み出す。(もう戻れない)カムをセット、ハンドジャム、フットジャムで確実に進む。途中、あろうことかロープをカムに掛けようとしても下からロープが出てこない。なんと自分の足とクラックに挟まっていたようだ。焦る。
「落ち着け」と息を整え、カムでA0をしようかと悩むが、カムに体重を委ねることも恐怖でもある。カムが外れたら奈落の底だ。
それでもジャミング自体は快適でなんとか上のテラスに転がりこむことができた。
ふたつめの核心は最終ピッチのチムニー。
これまで一度もやったことのないボディジャムで背中と手足で突っ張りながらズリ上がる。残置ハーケンなどないので、堕ちたらただではすまないし、もう上に行くしかない。途中で右へ巻くようなルートを取るとそこからは横に伸びたクラックがありカムの3番を入れる。すると今度は縦へ延びるクラックが出現する。ここでも3番のカムが必要だったので、さきほどの3番を外してセットし直す。かなりの緊張を強いられる。
KOOさんの「レスト!レスト!」の声は覚えている。ここから上は少しハングしていたように思えた。
ここを上がるためには腕一本でハンドジャムをきめて体を引き上げたいが、微妙にジャムが浅いため、片足でスメアをフル稼働させるしかない。もう進むしかないのだ。寸刻みの動作の中で「あ、これは堕ちるな」「いや、まだ堕ちてない」が超高速で頭の中を交差する。「掴めるものはないか!?」と見えない先を必死で手探りするとわずかな引っ掛かりがあってなんとか立ちこむことができた。もうひと踏ん張りするとそこは左稜線の終了点(山頂)でした。
息を整えて支点工作に取り掛かるが、どう登るかに夢中になり過ぎて、置いてきたザックのことなど忘れていた。
KOOさんのロープワークでザックの引き上げも成功し、安堵感と達成感に満たされました。
反省点として、
・今回の左稜線は、聖ケ岩の合宿参加と稲子岳南壁左カンテという流れがなければチャレンジできなかったと思う。本チャンではクラックは避けて通れないので、もう少しジャミングを体得すべきだと思った。城ケ崎のフナムシロックで再度練習したい。
・左稜線の支点はクラックはカム、立ち木や岩へのスリングの使用がほとんどで、 残置ハーケンにカラビナを使用することがたまにあるくらいです。そういった環境でカムを何度もセットする経験ができてよかったです。ただ、仮に堕ちてホントにカムが効くかの確認はできてませんが、自分でセットしたカムを信用するしかないですね。
・後日、最終ピッチの登り方をネットで調べると、ずっと更に上までボディジャムでズリ上がり、途中の残置ハーケンで支点を取ってから登りなおすという登り方ばかりで、今回のように右に巻くようなルートはヒットしませんでした。どちらもルートなのだと思いますが、ルートを知ってて登るのと知らないで登るのは、私のような経験の浅い者では気持ち的に難易度が増すように思えました。
・今回はKOOさんの準備、ギアがなければ途中敗退の可能性が高かったと思います。ロープはKOOさん所有のシングル1本を選択して時間短縮を図ったり、これまたKOOさん所有のカムも利用させてもらったことで安心感が得られました。
取付きと下山ルートが明確に記されたトポも助かりました。テン場では机やイス、冷えたビールまで準備してもらいありがとうございました。また参加できなかったQちゃん、計画書作成ありがとうございました。また小川山に行きましょう。
・終了点でKOOさんに「すけさんはイケイケですか?」とマジ顔で聞かれましたが決してそんなことはありません。(笑)
こうして最後まで登れたのもこれまで会を築いてきてくれたメンバーのおかげです。今後ともよろしくお願いします。

@すけちよ