横岳西壁 中山尾根 ~2018.5.18~

dakekanba-admin

山域:八ヶ岳南部 横岳 中山尾根

日程:2018年5月18日(金)

メンバー:Muu(L)、みっちゃん

 

無積雪期に八ヶ岳を訪れるのは初めて、ムーさんに誘われた横岳西壁リッジクライミングの中山尾根は、話には聞いていたが今回初めてのルート。冬季の人気ルートだが時期が外れているので残雪と岩の脆さに苦労すると覚悟していた。

中山峠からの樹林帯はやはり残雪による踏み抜きで神経を使った。広い尾根のルート取りに苦労しながら樹林帯を抜けるとリッジに出た、その向こうに第1岩壁が「どーん!」と見えた。ここから先に雪は無い。

第1岩壁を私がリード、久しぶりの本チャンに一気にアドレナリンが出た。岩が脆く中間部に差し掛かったころ、右足をかけた赤ん坊の頭くらいの岩が落ちた。下でビレイしていたムーさんに直撃するかと思ったが、平出さん並に(詳しくは「銀嶺の空白地帯に挑む カラコルム・シスパーレ ディレクターズカット版」を参照ください(^^ゞ)きちんと避けていたので当たらなかったが、これにはシビれた。

急な草つきも岩が浮いていて注意しながら登るが、ガスってきたので気持ちは焦るが確実に慎重に。第2岩壁はムーさんがリード、核心のカブリ凹角を見事クリアした。その後はリッジが続き、トラバースして主稜線の登山道に出た。終始落石注意のクライミングとなった。

私の持論「美しい=安全」 ロープや装備の扱い、無駄の無い動きなど、所作を見れば力量が分かるといわれている。今回は比較的難易度が低いクライミングであったが、点数的にはぎりぎり合格点と感じている。

第1岩壁の取り付きの偵察に時間がかかったが、その先はスタカットとコンテでスムーズに高度を上げていけた。クライミングはやはり二人一組で、つるべで上がって行くのが一番スムーズでスピーディーである。ザイルパートナーとの“あうん”はクライミングにおいてとても大事である。いつも会長が言っている血の通ったザイルが確実に出来れば登ることに集中が出来る。今回後半はかなりいい感じで登っていけた。

最近サボっていたがやはり登攀は楽しい。クライミング中の研ぎ澄まされた感覚が好きだ。続けてやらないとダメだと実感した。何より心配していた雨にも降られずに無事に下山できたのは本当に良かった。

みっちゃん

 

 

昨年は、無雪期に小同心クラックに挑戦し、冬季に裏同心ルンゼのアイスクライミングから小同心クラックへと継続(詳しくはコチラ)をやり遂げた。その流れで今年は、石尊稜、中山尾根辺りにチャレンジしようかと考え、しばらく「山岳看護師」や「登山ガイド」の資格取得に忙しかった、みっちゃんのリハビリ山行にどうかと誘った。

当日の天気予報はイマイチで、なんとなくモチベーションが落ちてきたみっちゃんを強引に説き伏せて・・・、もちろん私も妥協した部分はあり、金曜日の日帰り、中山尾根のみということになった。中山尾根の方が石尊稜よりも難易度(あくまで冬季)は高いが、記録も多く岩がしっかりしているのでは(?)と推測した。入山すると金曜日ということなのか、天気予報が悪いからか、駐車場に車は無く人と出会わない「ここは八ヶ岳か!?」と思った。

行者小屋から第1岩壁までは標高差250m程だが、残雪に苦労し1時間もかかってしまった。第1岩壁の正面壁にはボルトが数か所設置されており、岩も比較的安定している感じ。トポによると右の凹角を上がり左上するとのこと。確かに凹角部にお助けロープが垂れ下がっている。ここでアンザイレンして崩壊の進む岩峰基部のわずかなスペースを恐る恐る進み確認しに行くが、トラバースする足場には砂が堆積して分かり辛い上に、予想通り岩は浮いたものが多く、浮石が落ちるとはるか下までガラガラと落ちていく。ロープで確保されていても滑り落ちたくはないので、非常に気を遣った。お助けロープの部分に着くと、手がかり足がかりがわずかにしかない急なスラブを乗り越えないと上がれない。しかもお助けロープは劣化が進みとても使える代物ではない。「これは正面突破だ。」と戻る。たかだか5mの横移動だが、気を遣い過ぎて「ハァー、ハァー、・・・」と呼吸が乱れている私を見て、みっちゃんがリードすることとなった(+_+)。

せっかく持ってきたので安全を期してクライミングシューズに履き替える。みっちゃんに続いて登る。登った感じは小同心と同じ感じで、しっかりと手がかり足がかりはあるが、浮いた石だらけなので、注意が必要だ。核心は上部の第2岩壁と考えて甘く見ていたが、セカンドで登っても脆い岩に焦ることが多く、危うく大きな岩を抱いた体勢で右手の岩が外れかけ冷や汗をかいた。

第1岩壁を過ぎれば、第2岩壁まではひたすらにコンテで登っていけるかと思っていたが、それも甘かった。急傾斜の浮石だらけの草付きなのでスタカットで、ハンマーのピックを刺しながら登っていく。幸いなのはビレイ点が木だけでなく、ボルトが各所にあることだ。

第2岩壁は、かぶり気味の核心部があるという情報なので「(みっちゃんと比べて)背の高い」私がリードする。凹角部のルート沿いは比較的安定した岩で、10mも登る前に核心部に到着。「小同心にも似たような箇所があったな」と考えながら慎重にアイゼンの爪跡が残った岩に足を置きジリジリと上がって乗っ越す。朝の雲一つない空は、ヤマテン予報通り見事に崩れてガスの中、視界は50mを切りロープをいっぱいまで伸ばすと、みっちゃんは見えなくなる。また、風もかなり強く声が通らなくなるのではと心配したが、今日は風向きが良かったせいか、下からの声は良く聞こえ意思疎通は楽だった。

とはいえ、時折、手を置いた岩の先に雨粒が落ちて「早く登山道に出たい!」という思いは増し、主稜線に出る目印となるピナクルと鶏冠状岩峰を「これじゃない?」と、まったく違う人間サイズの小さな岩に対して考えてしまう。先が見えないので、とにかく上に向かうと続いてのピッチでガスの中から「これは、間違いない!」と断言できる巨大なピナクル&鶏冠状岩峰が浮かんできた。上がってきたみっちゃんに、そのまま先に進んでもらうと「(登山道にある)緑のロープがあったよ!」との声。

久し振りにかなりのピッチをアンザイレンして登って「楽しい♪」と感じたのは間違いありません。ただ、「冬季にできるか?」という問いには「う~ん(^^;)」と慎重になる。また、無雪期のルートとしては、もう少し安定した岩場を登れたら良いなと思いますが、なかなかライトなルートが無いので、また、探さなければいけませんね~(^_-)。

ムー