後から超ヒヤリ!大反省の乾徳山・旗立岩中央岩稜 ~2020.11.1~

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はじめに

当クラブの「ライトアルパイン12景」のひとつである、旗立岩中央岩稜にチャレンジしてきました。
今回はマメちゃんが参加。マメちゃんの入会は約1年前になりますが、今回初めてメンバーとの本チャン山行となりました。
ところが山行を終えてから驚愕の事実が判明します。バリエーションの経験のないマメちゃんにリードをさせてしまい、大変怖い思いをさせてしまいました。事故が起きなかったのが奇跡です。
以下、参加メンバーのレポとなりますが、自身の戒めとしてありのままを記載させていただきます。
事実を真摯に受け止め、後日行われる例会で報告し、会で再発防止を図りたいと思います。
@すけちよ

■山域:奥秩父・乾徳山(旗立岩中央岩稜)
■日程:~2020.11.1
■天候:晴れ
■参加者:マメちゃん、レイザー、Qちゃん、すけちよ(L)


行程
11月1日
0時過ぎ 大平荘駐車場着、テント設営
5:30 起床
6:30 乾徳山登山口から入山
7:30 扇平
9:00 無名岩稜の頭 懸垂開始
10:00 中央稜取りつき
15:00 山頂着 復路下山開始
16:30 登山口帰着

1日は曇りがちな晴れ。
北風が相当に強く、稜線上はダウンにウィンドブレーカー着用でも、じっとしていると芯から冷えてきた。

登山口から乾徳山の一般登山道を登り、山頂間近の懸垂ルート取り付き地点からチムニーを2ピッチ懸垂下降。2ピッチが浮き石だらけで、足が触れただけで落石が起きた。50mロープが下方5m
ほど足りず、落石に注意しながらのクライムダウンで踏み後に到達する。

中央稜取り付き地点までは、Qさん主導で回り込んでいき、先行した3人パーティーの声姿を確認しながら無事到着した。先行パーティーの2ピッチ目開始を確認して、リードすけさん、セカンドQさんペアが1ピッチ目スタート。左側を慎重に回り込んですけさんが登っていき、セカンドを引き上げ終わるのを確認してから、リードは私、セカンドがレイザーさんの後続ペアがスタートする。

思いの外足が悪く、ハーケンやピンもなかなか確認できない。ツルツルのフェイスに何度も足がすっぽ抜けて、その度に渾身の力で岩にしがみついた。恐怖感から焦りもあり、後で、様子を見ていた後続パーティーのガイドさんらしき方から、「中間支点の間隔が長すぎる。落ちたら死ぬよ」と厳重に注意を受ける、初っぱなからいきなり非常に危険な登攀となってしまった。

2ピッチ目はレイザーさんがリードで先発。程なくして後発の私がスタート。先程のベテランガイドさんから、「後は階段だから」と背中に言われた通り、そのまま3ピッチ目に繋ぐ。

3ピッチ目が終了したところで、再び大問題発生。マルチのリードが初の私は、立ち木や岩を使った終了点の構築が見よう見まねで心許ない。先に山頂に到着して様子を見ていたQさん達が、立ち木を使えと大声でアドバイスしてくれたが、立ち木までロープが届かない。あくせくしながら岩に終了点をとったが、その間かなり時間をかけてしまい、後で、セカンドのレイザーさんがとても心配していたと知って猛省した。

強風でコールはおろか会話が不可能な状況ではあったが、個人的に、そもそも基本的な意志疎通もなおざりになるほど余裕がなかったのだと思う。

山頂で先発隊と合流し、記念写真をとって登山道を下山。下山後は地元の「ほったらかし温泉」で温まって帰途に着いた。

今回は、そもそも私と他のメンバーとの間で、互いの力量に関する情報交換が十分になされておらず、私自身もセカンドの経験と外岩のリード経験のみで、アルパインの技量がゼロに等しいまま安易に登り始めてしまった感が否めない。結果当然、会全体で厳しく検証される流れになる。

事故怪我なかったことが奇跡だった。個人的に、非常に重い課題を持ち帰った1日となった。

同行して下さった先輩方、ありがとうございました。

@マメちゃん


岳樺クラブに入会して早1年。
今回は同期入会者でバリクライマーのマメちゃんを誘い、乾徳山旗立岩中央陵へ♪

大平駐車場に前日夜入りし、マメちゃんの当会初テン泊祝い (^O^)/
つい楽しくて飲みすぎ、かつ寒くて熟睡できずで朝になっても酒が抜けず…

グダグダで殿を務め、やっと酒が抜けてきた頃になって乾徳山山頂手前の無名岩稜の取り付きへ。
まずは懸垂ルート2ピッチ。

リーダのすけさんに「ここはトップで行かせて下さい!」と手を挙げ、1ピッチ目はメタボチェッカーのチムニーに挟まれズルズルと下降。
2ピッチ目は過去レポでザレザレの浮石状態と知っていたので、得意の買い物袋にロープ詰めて落石に気を付けながら下降。
中央稜取り付きまでのルーファイが難しいと聞いていたが、Qさんトップでスタスタと迷うことなく動物の感?で難なく取り付き点へ。
先行パーティが1ピッチ目を終えるのを待つこと1時間。身体が冷えてきた (T_T)

まずは、すけさん・Qさんコンビがスタート。
1ピッチ目(5.6)が核心、すけさん慎重にルーファイしながらフェイスを詰めていく。
寒さと緊張の中、とっとと登ってしまいたい(こういう時ミスし易いですよね)ところ「ちょっと休憩、水飲まして!」と余裕のすけさん。
感情のコントロールが上手い!見習わねば (><)

そしてマメちゃんと私の番です。
昨晩テントで「マルチの練習がしたいので1Pと3Pはリードやりたいです!」と手を挙げたマメちゃん。
ここはマメちゃんの活躍が観たい同期としては、譲るしか無いですよねー (^^)

セカンドで1ピッチ目を登っていくと、
「え、こんなところにあるハーケンにヌンチャクかけてリードで登ったの?
どう見ても5.6以上のルートですぞ ( ゚Д゚」
トポでは「フェイスを途中まで登り、カンテを右に回り込んで薄被りを越えて終了」と記載あったが、マメちゃんはフェイスをほぼ直登していった感じ。
一方の私は、寒さで手がガチガチで思うように登れず…

寒がりで冷え性の私は、「寒さ対策(特に手)が課題」だと実感した山行でした (^^;)

@レイザー


当然のことながら…
アルパインクライミングは危険と隣り合わせ。下手すりゃ死に直結する。
〇〇だろう
〇〇知ってるはず
などと憶測でやってはいけない。
と、改めて痛感した山行となった。

岳樺クラブの歴代の先輩方も登られてきた〝乾徳山 旗立岩中央陵〟
今回はアルパインクライミングに初めて一緒に行くマメちゃんも参加。
前夜発で登山口の駐車場脇にテントを張り
軽く一杯飲んで眠りにつく。翌朝は7時にスタート。取り付きまでは一般登山道。途中草原のような場所がありテントが一張り。昨夜は満月だったからさぞかし素晴らしいお月見ができたに違いない。

懸垂下降場所に着きレイさんトップで懸垂に入る。一回目の懸垂は曲がったチムニー状の場所でロープの流れが良くない。二回目はガレていて足元に気を使う。その先も足場は悪く気を抜かずに取り付きを探しながら、所々うっすらとある踏み跡を辿ると先行パーティが岩に取り付いているのが見えた。登り始めたばかりだったので休憩しながら待つが、セカンドがなかなか登っていかない。やっとセカンドが登り1pの終了点に3人集まっているがそこから先もなかなか進まず小1時間くらい待っただろうか、ようやくすけさんリードで登り始める。

私の調べたトポではハングの下は右を巻くとあったが、すけさんは先行パーティと同じく左へとロープを伸ばし視界から消えた。ロープの流れも悪く声も届かない。コールがかかり登って行くと
!!!両端がスッパリと切れ落ちたリッジ状の場所しかも逆層。手がかり、足がかりは乏しくスリル満点、緊張感MAX。やばい!まじ落ちるかも知れないと感じたが、なんとか難所をクリアしてすけさんのいる場所にたどり着く。「今の場所かなり辛かったね。あれでⅤ●●なのか??!持ってたヌンチャク8本全部使った」と、苦戦したらしい。

さて2p目は初めから私が行こうと決めていた。本来なら1p終了点からナイフリッジを超えなければならないが、その先迄ロープを伸ばしてくれたので予定通りいく事にする。岳樺クラブ先輩のレポートには
〝ヤッホー!と声が出そうになるくらい快適〟とあるが未熟な私にはそんな余裕は全く無い。所々錆びたハーケンはあるがカラビナをかけられない角度もあり、少々心もとないが枝で中間支点を取ったりしながら進む。たいしてロープは伸ばしていないが安定した場所に着いた。その先を見上げると私には無理かな?という感じ。ここが終了点でない事は明確だが、支点を作り、すけさんに登ってきてもらう。今迄岩だけしか見ていなかったが振り返ると
富士山がどーーーん。なんて素晴らしいロケーション。乾徳山には何回か登ったが、こんな場所があったなんて知らなかった。

本来なら最終ピッチ、すけさん。
登り始めて直ぐにコールがかかる。登って行くと、「一般登山道も見えるし、終了点は直ぐそこだよ。最後宜しく!」
見ると10m位で登山道に着きそう。ここできらずともロープ足りたから最後まで行っても良さそうなものだが、最後私もリード出来そうな場所だから、あえてここできりリードをする事で自信をつけさせようとしてくれる気持ちがありがたかった。最終ピッチを終え、後から来るレイさん、マメちゃんペアに先に行く旨を伝え山頂目前の場所から富士山をバックにクライミングをする2人を見ているとリードで登ってきたマメちゃんが怪しい動きをしている。浅い岩角にスリングを回して支点を作ろうとしているのだ。もう少し行けば安定しているし立派な立木も沢山あるのに。思わず、大声でその旨を伝える。ほどなくしてレイさんから残ロープのコール〝残り半分〟えっ?ロープそんなに残っているのなら、わざわざ危なげな浅い岩角に支点を作らずとも良いのに…

貸し切りの山頂で富士山をバックに写真をとり健闘を称え合い、レイさんセレクトの「ほったらかし温泉」(ネーミングはイマイチだが??高台にあり露天風呂から見る塩山の町の夜景は六甲や函館の夜景に匹敵する。と私は思う)で汗を流し帰路に着いた。帰りは行楽帰りの渋滞にはまったが…その車中の中で衝撃を受ける。

マメちゃんはアルパインでリードをやった事がなく、立木や岩角を支点として利用する事を知らなかった、なんて。
中間支点や終了点にもゲレンデのようにピカピカのペツルのボルトが打たれていると思っていた。残ロープのコールも知らなかったetc。1p目リードした時、錆びて岩と同化したハーケンが見つけられず中間支点をまめにとらず
恐怖心もありかなり無謀な登り方をして、見るに見かねた後続パーティのリーダーから指摘されたと。以前いた会で先輩に色々と指導を受けたと言っていたし、つい最近沢にも行っている。特に沢は岩角や立木で支点を作る際たるものだと思っていたからたセカンドしかやったことがなくても知識はあるんだと思っていた。
だからマメちゃんがリードをする。という話になってもゲレンデでグレードの高い場所をリードで登っているし登れるんだ。すごいな?。としか思わなかった。
でも実際には…

なんで初めて行くマメちゃんにリードをやらせたんだ。何事もなかったがとんでもないことをしたのだと自責の念に駆られた。
以前先輩から、「登れる=安全に登れる」とは違うのだと教わったことがある。多くの人が入るゲレンデは整備もされているであろう。しかしアルパインは自然の中にある。山を歩き、取り付きを探し岩を登り、下山をする。
総合力が求めるられる。それだからこそやり切った後の達成感も半端ない。その人の力量に感じ方はかわるが、実際山に入るとトポとは違うこともある。経験不足で未熟な私がこんな生意気なことを言う立場にはないが、多くの知識や技術、経験が必要。今バリエーションに一緒に入り現地で指導してくれる経験豊かな先輩は岳樺にはいない。マメちゃんだからこそ各自がしっかりとした知識、技術、判断力を身につけ場数も踏むことが必要だとかん決して事故は起こしてはならない。今回マメちゃんには辛く、怖い思いをさせ、一緒に登ったレイさんも危険に晒してしまった。
二度とこのようなことがないよう精進したい。

@Qちゃん


レイさんのクルマで大平牧場の駐車場へ着くとヘッデンもいらないほどの月明かりだった。
満月のハロウィンは何十年ぶりだとか。
テントを張り、まずは初の会のテント泊となるマメちゃんと乾杯。
マメちゃんは入会は約1年前になるがコロナ禍が重なったため、今回初めてメンバーとの本チャン山行である。
めざす旗立岩中央岩稜は、ネット情報を調べても「1ピッチ目が核心」以外よく分からない。
これまでの会の山行記録を読むと「ハングがあり、ハーケンを打った」などの記載があったり、
メンバーの情報では「グレード5.6」だとか、難しいのか易しいのか、いまひとつ把握できないままチャレンジすることになった。

2回の懸垂下降と踏み跡に従ってトラバースを続けるとようやく取付きに着いた。
先に3人のパーティが取付いていて、ようやく我々の番がきた。
先行は私とQちゃん、後続はマメちゃんとレイさん。
リードで登ると中間部あたりから「あら?どっちに進むのだろ?」と迷った。
真っすぐ進むとハングした岩。ハーケンは持ってないし登れる気がしない。
ネット情報では右に進むとあったが、古びたハーケンに従っていくと左を進むようなルートになった。
自分が登っている様子は下のメンバーには見えない場所に入り込む。
ヌンチャクを多めに持っていて正解だったが、何ヶ所も欲しいところにピンがないことに気付く。
手のかかる場所をあっちこっちと探してみるが皆無。行き詰まる時間が多くなり進退窮まる。
まずは落ちつこうと水を飲んで一息入れてみる。すると・・・

左のカンテは断崖であるがもしやと覗いてみると真新しいピンを発見!(ルートから見えない場所にあるのね)
じわじわと近づき、なんとかヌンチャクをかける。
ホッとしたのもつかの間、そこからも苦しみながら右上していくとリッジの右壁に2つのハーケンがあり、
ここでようやくビレイ解除となった。

1ピッチ目のこの左ルートは終了点と取り付きを緩い「C」の文字を描くようなルートで、
それほど経験のない私でも5.9はあるように思えた。ヌンチャクは8本は使っただろうか。(カムは使わなかった)
フォローのQちゃんも手に擦り傷を負い、苦戦したのが伺えた。
2ピッチ目はQちゃんリードでこの怖いリッジを進む。2ピッチ目の終了点は確認できなかった。
3ピッチ目は私がリードでいくと真新しい終了点があり、登山道や山頂から丸見えで何人かのギャラリーの注目を浴びる。5年くらい前の自分もそうだったにちがいない。

残りの10メートル弱は念のため4ピッチ目としてQちゃんのリードで登攀を完了した。
「秩父の滝谷」と後から会長から紹介があったが、そのホントの滝谷に行きたくなった。
途中、後続のマメちゃん、レイさんも我々に追いついてきたが、最後の最後で難儀した(させてしまった)ようだ。
下山後、思い込みによる「後から超ヒヤリ」があることが判明し、後日行われる例会で報告、反省したい。

大反省な山行となりましたが、無事に登れたのも会とメンバーのおかげです。
今後ともよろしくお願いします。

@すけちよ