山域:高尾山口駅⇔高尾山⇔景信山
日程:2019/6/14(金)-15(土)
メンバー:ムー
チョット変わった(?)山行をしてきました(;^ω^)
レポートをご覧ください!
今年の夏も、みっちゃんが国立登山研修所で仕事があるので、その際に車に便乗して途中で降ろしてもらい、どこへ行こうかと山の地図を見ながら検討している(ちなみに昨年は早月尾根から剱岳に登頂し室堂へと抜けた)。ちょうど『単独行者(アラインゲンガー)新・加藤文太郎伝(谷甲州著)』を読み終えた後だけに、単純な私はその影響をモロに受け、昨年よりも更に長いルートを探していた。そんな時に「ちょっと暗い中を歩く訓練をしておいた方が良さそう」だと思ったので、今回の山行を計画してみた。
金曜日、仕事が終わってから、3日間を想定した縦走装備を背負って高尾山口駅へ鉄道で移動する。丸ノ内線の混んだ車内では、ザックを抱えていても周りの通勤客から「邪魔!」と目で言われるのを、恐縮しながら新宿へと向かう。中央道の高速バスや廃止となった夜行快速列車ムーンライト信州号を利用して登山していた頃を思い出す。そして、あの頃も今夜と同じ単独だったのだと気付く。
新宿からは、登山前の休憩をしたいので京王線の特急を2本見送って座席を確保し高尾山口駅へ移動する。週末なので同じ目的で登山する人やトレランする人がいるのでは?と思ったが、電車は貸し切りとなり高尾山口駅へ静かに到着した。新宿方面へ折り返す電車には、下山してきた出で立ちの方も数名いるようだ。
21時半頃に駅を出ると、予報では日付が変わってから降り出すはずの雨がポツポツと降り出している。山の天気だから仕方ない「本降りになるのは予報通り遅い時間だと良いな」と思う。歩き出しはのんびり行きたいところだが、雨のせいで早歩きで出発する。
ケーブルカーの駅付近で、一般人のカップルに「これから登るんですか?暗くて道が分からなくて、やっぱり登山者の人は凄いな~♪」と声をかけられた「登山する人でも今から登る人は珍しいかも知れませんね~(;^ω^)」と答えて稲荷山コースの階段を登りだす。
ケーブルカーの駅まではヘッデンは不要だが、登山道になった途端にヘッデン無しではどうにもならない。月明かり中を登ってみるのは次回の楽しみにして、足元をしっかりと照らしながら進む。しばらくは電車や車の走行音が聞こえるが、心の中では「今のうちに孤独に慣れておくんだ・・・」と思い続ける。そう、今回の夜間縦走は“ビビりのムー”にとっては恐怖心との闘いが核心なのだ。
濡れた土にわずかに滑る回数が多くなり無駄に力が入ってしまったからか、ずいぶんと汗をかいた。高尾山頂へ到着すると、期待に反して誰もいない。もしかしたら今晩が悪天候のためかも知れない。普段はいるんじゃないかと思う。開けた山頂だが東京側の夜景の遠さが、孤独なんだという事を助長する。また、夜景の光が漆黒の空に隠れている発達した雨雲を浮かび上がらせ、気を急かせられてしまい先に向けて出発する。
雨に濡れた階段の石で滑らないように足の置く位置に気を付けながら先の見えない階段を降りて行く。階段を降り切ると、巻き道や相模湖・裏高尾方面への下山道が入り乱れる。ヘッデンの明かりもガスに乱反射し5mほどしか見えないので、標識や分岐がないかを特に注意して歩く。そんな時に突然「ボッ!」っとか吠えながらイノシシが脇から飛び出してきたり、蝙蝠が音もなく暗闇から目の前に向かってきたりと一瞬で「ギュ~~~」となる出来事(!?)に焦らされる。岩場の通過で緊張するのとは違う感覚を味わう。
そういった驚く瞬間はあるものの、小さなアップダウンを繰り返す間は順調に歩いている。ただし、急勾配になると登りも下りも滑りだす。ちょうど大垂水峠で爆音を轟かせて走る車の音が聞こえ、「さすがに、こっちはドリフトしながらってわけにいかないな」と自分に言い聞かせ、慎重に進む。天気が悪いからなのか、それとも昔のように走り屋が来なくなったのか、大垂水峠は静かで「早く小仏城山を越えて中央道からの車の走行音を聞きたい」と思う。
小仏城山に着くと、期待通りの中央道からの走行音が心を落ち着かせてくれる。さすがに明日の天気で登山に行く人は少ないだろうけど、北アルプスや八ヶ岳に行く際に金曜の夜から出発する事がほとんどなので、高速を走る車のヘッドライトとテールランプの明かりを遠く山の中から眺めていることに不思議な感じがして、しばらくの間ボーッと見ていた。が、突然に風雨が強くなり我に返り、写真を撮り先へと進む。
ここを過ぎると、「ピィ~」・・・「ヒュー」・・・という何か人工的な感じがする音が繰り返し聞こえてくる。何かの機械?考えても分からない上に、音の発生源も同じ場所なのかよく分からない。かなりの大きな音なので、次のピークを越えるまでは途切れない。進んでもすぐ後ろで音がしているようで気持ち悪い。地理的には景信山の手前になれば聞こえなくなるだろうという読みが当たり、「やはり何か人工物の音?」と安心した。
景信山に着くと、いよいよ突風が強くなり、吹く間隔も短くなる。それに呼応したかのように雨もレインウエアを着ずにはいられないほどとなる。屋根の有る休憩スペースでレインウエアを出していると、小屋の方から“何か”の音が聞こえてきた。その“何か”は一生懸命に小屋の壁とか屋根とかをガサゴソといじっている。「誰かいますか~?」と聞くが返事がない。当たり前だろう、真っ暗闇でガサゴソやっているのだから、返事次第じゃ、もっと怖いことになる。風の影響?・・・いや、風の強弱と全く関係なくガサゴソやっている。ヘッデンを最も明るくしたところで、ガスに包まれた小屋は建物がある程度にしか分からず・・・。
結局、怖くて引き返すことにした。この状況(単独、誰もいない、明日も悪天候)で強行して上から動物が落ちてきてダメージを受けても困るし、ここで引き返せば高尾山口駅で始発電車にちょうど良いから夜間縦走の目的は達成できると判断した。
・・・でも、全て言い訳のようで「恐怖心に負けた」と言われると反論できない。ただ、引き返したけれども、悪条件の中を歩くことができてよい経験ができたのは間違いないと思う。これで、北アルプスの縦走路を夜間に単独で歩けるかと言うと、やはり私の場合は恐怖心との闘いなのかと、人によっては気にならない事にムダな気を遣っているようだが仕方ない・・・。加藤文太郎を想像するのは、本の中だけにしとくのが良さそうだ(;^ω^)
ムー