山域:南アルプス 甲斐駒ヶ岳、鋸岳
日程:2018/7/20(金)-21(土)
メンバー:ムー(L)、みっちゃん
登山者には『この山だけは、何故か行けずじまい』という山があると思います。私は過去に4回、甲斐駒〜鋸岳を予定しましたが、全て悪天候にて中止。今回、やっと足を踏み入れることが出来ましたが、ヨーロッパのマッターホルンには2年目で行けたのに、同じ日本の鋸岳には5年もかかりました。私にとってこの山は本当に遠かったです。
北沢峠から甲斐駒ケ岳の山頂を目指すのは初めて、そして今年初めての3000m級の登山。暑さと日頃のトレーニング不足もあり、2500mからはゆっくりペースで甲斐駒ケ岳山頂へ。
ここからがいよいよ鋸岳への縦走、ガスも多少出てきて暑さも和らぎ快適な岩稜歩きで楽しい。ところが、そのうち標高も下がり、森林地帯に入り蒸し暑く、アップダウンも激しくなってきました。薮も増えてきて虫か出てきたところで、虫嫌いなザイルパートナーは防虫ネットで完全防御。自分がネットを被っていると気付きにくいのですが、人が被っているのをマジマジと見ると、勇壮な鋸岳の姿と相まって…非常に残念としか言いようがありません(笑)
鋸岳は、バリエーション部分は短いですが脆い岩場が続くので、気を抜けません。今回はロープを持参しましたが、我々はバリに慣れているので使用しませんでしたが、一箇所小ギャップへの下降は、懸垂するとより安全だと思いました。
バリルートが終わり角兵衛沢のコルに出て、いよいよ悪名高い三時間のガラガラの沢下り、慎重に下るがよーく見ると踏み跡がありガレもやや落ち着いています。途中で岩場から流れ出ている冷たい命の水にありつけました。ここまでは、2人で担ぎ上げた7リットルの水でなんとかしのぎましたが、水のありがたさが身にしみました。
角兵衛沢は悪名高いですが、お花の宝庫で、咲き乱れていました。花の名前を覚えようと思っているのですが、私はなかなか覚えられません。数少ない私の頭の中にある花の名前引き出しのどれを開けても分からない。そんなキレイなお花がいっぱい咲いているのに…これからガイドをしていこうというのに…非常に残念としか言いようがありません(笑)
戸台川にまで降りてきて、写真で見た立派なケルンでひと休み。しかし、核心は最後に待っていました。辛い体験をした後、脳みそは自分を守るために、その体験を消しゴムで消そうとします。戸台川にたどり着いてから先は、思い出そうとするだけで、蜃気楼が見えてきて脳みそが熱中症になりそうなので、その記憶は消しゴムで消そうと思います。
みっちゃん
「1年振りの鋸岳」
昨年の夏、すけちよさんと甲斐駒~鋸岳の縦走をしました(その時のレポートはこちらをクリック)が、その時は、別件の用事があるみっちゃんに、車で登山口の黒戸尾根と下山口の釜無川ゲートへ送迎をしてもらいました。それまで、みっちゃんとは鋸岳の計画を幾度となく立てては悪天候で中止してきたので、みっちゃんも行きたいだろうと思っていました。
今年は、例年にない早さで梅雨明けし、ずっと天候が安定しているので「今回は大丈夫!」と再度計画をしました。ルートは、登山口と下山口は同じ戸台河原に車を停め、北沢峠までバスを使用し、まずは甲斐駒へ、鋸岳手前の中ノ川乗越で幕営し、鋸岳登頂後に角兵衛沢を下降し戸台河原へ戻るというもの。昨年に鋸岳を経験しているので「今回の核心は初見となる角兵衛沢の下降と戸台河原への幾度かの渡渉かなぁ~」と考えていました。
南アルプス登山バスが7/20(金)から始発の時間が早くなるので、金曜日に休暇を取り平日の空いているバスに乗ろうと木曜の夜に出発しました。途中で仮眠しバスの出発する仙流荘に着くと、平日にも関わらず多くの登山者で行列していた。始発でない戸台大橋から乗車できるか確認すると、保証できないと言う(>_<)
ここで作戦変更し、仙流荘に駐車し始発バスに乗車。バスは、満員の登山者を乗せて、北沢峠へと上がっていく。45分ほどの道中は、運転手さんの上手い登山&観光案内で時間を忘れさせてくれる。仙水小屋で給水を済ませ、まずは甲斐駒までの一般道を登る。平日なのに登山者が多い。甲斐駒までテント装備で来ている登山者はおらず、時折、テント装備の我々に「どこまで行くの?」という質問が来る。下山してくる人たちも多く、昨日入山していたようで、平日とは思えない賑わいだ。
天候は、雲が湧いてきているが日差しは強い。午後のにわか雨と雷だけが心配だ。高度が上がると東側に(標高)日本1~3位の富士山、北岳、間ノ岳が並ぶ。そして稜線の中で目立つのはオベリスク、まるで槍ヶ岳のようだ。南に目を移すと仙丈ケ岳が見えてくる。
足元が白い砂礫となると間もなく甲斐駒山頂に到着。冬用ソックスが暑くて、思わず靴下まで脱いで休憩する。お昼前だが既に暑い、さらに暑くなるだろうから、六号石室の水場では給水が必要だと考える。しかし、甲斐駒を出発すると、幸いに雲が出てきて暑さが和らいだので、六号石室では給水せずに今晩を乗り切ることとした。
昨年歩いた際の記憶はバッチリだったので、中ノ川乗越まで特に問題もなく到着。時間は15時前なので暗くなる前に一気に鋸岳を超えることも可能だが、疲れもあるので無理をせず予定通りにテントを張ることにする。日が沈むまでテント内は暑かったが、珍しく横になり30分程度の昼寝をして体力の回復に努める。
テントを張った時点での水の残量(2人で4㍑)は、次の水場(角兵衛沢途中の大岩下の岩)まで十分に足りている計算だが、ゴクゴクと飲めないプレッシャーがあり自然と給水量をセーブする。夜には涼しくなり問題ないだろうと楽観視していたが、目が覚めた時点で予想通りにのどの渇きは失せていた。しかし、今後は水場の無いテント場の過ごし方にも慣れる必要があると感じた。
朝食を簡単に済ませ、ココアやしょうが糖の温かい飲み物で水分補給し鋸岳に向けて出発。中ノ川乗越から第2高点までは、右側に濃い踏み跡があったのでスムーズに登ることができる。昨日の疲れは若干残っているようだが、30分ほどで第2高点に到着し、360度の展望を楽しめた。
しかし、昨日からそうだが、虫の量が凄い。アラスカの大自然の映像のようだ。特に羽の生えたアブラムシが白樺の葉っぱの裏にビッシリととまっていて、葉っぱ1枚にでも触れた瞬間に、そこが起爆装置であったかのように一気に飛び立つと隣の葉っぱにぶち当たり、誘爆したかのように周りに伝播して「ザー、ザー!」と音を立てるほどの虫が飛び回る。「水が流れている?」と思ってしまうほどの音と、とんでもない量の虫!幸いなことに害のない虫だが、思わずネットを被ったので、せっかくみっちゃんが撮ってくれた私の写真が台無しになった(そんなことないですか(^^;)?)
第2高点から大ギャップへの下降は、昨年唯一のルートロストをした場所だが、今回は、あっさりと正規ルートを見つけて降りたので、逆に大ギャップまでの下降がえらく長く感じた。大ギャップでのトラバースは、昨年は道が付いていたが、今年は最近の豪雨で流れたのか、一部にえぐれている部分があり、崩れないかと少し怖く感じた。
そこから鹿窓ルンゼへのバンドに出る手前の壁沿いには、昨年は水が流れていたので今回も期待していたが、ポタポタ程度の水しか垂れていなかったのと、持っている水に余裕があったので、そのまま通過した。
鹿窓ルンゼは左から登り、鎖を心の保険として基本は3点確保でクリアし、鹿窓に到着。行きのバスの運転手さんが「バスから見えますが分かりますか?」と何度も場所を説明していて「あー、見える!あー、分かる!」という声が車内のアチコチから上がっていたが、私には見えなかった。しかし、ここから見ると、林道が見えている。単に私の視力不足かと落ち込む・・・。
鹿窓を過ぎれば、小ギャップ。ここも、鎖を心の保険に3点確保で通過し、第1高点へと到着した。昨年はここでガスが出てしまっていたが、今年は360度の展望だ!中ノ川乗越から天気の安定している朝のうちに登頂するという計画がハマったな♪と嬉しかった。
ここから、いよいよ角兵衛沢の下り。確かにとんでもないガレで、静かに歩ける人間はいない。基本は下る場合は左側にルートがある。下りなのでルートが見やすいからか、踏み跡も分かりやすく河原まで迷うことはなかった。また、大岩下の岩の水場も左側の岩壁が切れる場所にあるため分かりやすい。
冷たい水を給水でき、想定よりも楽に河原に出ることができ、あとは河原歩きと渡渉のルートファインディングだが、これは、砂防ダムまでは基本左岸の樹林の中にルートがある。(一度は渡渉しないと無理です。)しかし、砂防ダム手前は(今回)伏流水となっており、渡渉せずに右岸の階段でスムーズに砂防ダムを超えられる。
砂防ダムを超えると砂利の林道となるため、想定外に簡単に車へ戻れそうだと思った。ところが、下界は30度を超す暑さ。炎天下の河原を2時間、さらに車を停めた仙流荘まで熱せられたアスファルトの上を1時間。核心は最後の最後にやってきた。やはり最後は体力勝負となるのは登山の常だと思うが、ルートファインディングで苦労しなかった分、体力的にかなり厳しく、今回のルートのおススメ時期は、暑い時期ではないのは確かだと感じた(;^ω^)。
ムー