黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳、そして鋸岳へのハード縦走! ~2017.8.19-20~

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山域:南アルプス

日程:2017年8月19日(土)~20日(日)

メンバー:Muu(L)、すけちよ

初バリエーションは過去の個人山行も含めて最もキツく、コワく、楽しい山行となりました。初バリをする私の体験記として記しておきたいのと、少しでも今後の参考にしていただければと思いまして、長文となりますがご容赦いただき、以下に記載します。

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■一日目(夜)

同行してくれるムーさんとみっちゃん号で上本郷駅で合流。双葉パーキングにてムーさんたちが用意してくれたビールでまずは乾杯。睡眠時間3時間あったかな?仮眠だからもちろん寝不足です。

■二日目

05:30 過去の個人山行で二度と・・・と思った黒戸尾根からスタート。時折、夏の日差しが射すいい天気ではあるが、開始からまったく調子が出ない。あれ~、こりゃ途中リタイアかなぁ・・・と不安がよぎる。刃渡りを過ぎ、刀利天狗のあたりの休憩からやっと調子が上がってくる。

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11:05 七丈小屋に到着。この先、水場があてにならないため、約5リットルの水を補給し担ぎ上げなければならない。寝不足と疲労を考慮してここでカップラーメン(500円)を食べておく。ここで看護パトロールで後からきたみっちゃんとお別れ。

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12:00 みっちゃんからオヤツと水を入れたペットボトルをもらって出発。甲斐駒山頂までの道は徐々にステップが高くなり、這い上がるような岩道が延々と続く。装備のほか水5リットルがズシリと効いてきて足の筋肉が悲鳴を上げはじめた。これまでの縦走以上に重く、キツく感じる。やっぱり黒戸尾根はハンパない。七丈小屋の場所はちょうどよい場所にあるんだなと思った。さすがのムーさんもキツそうだ。という自分も意識朦朧の一歩手前。二人で出る言葉は「ウッ」「グッ」「ギッ」といった呻き声ばかり。さっきラーメンを食べたのにもう腹が減っている。休憩を挟む。この分だと行動食全て完食しそうだが、ここでみっちゃんからもらったオヤツを思い出す。もらってきてよかった。みっちゃん、ありがと。いただきます。助かりました。

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14:30 甲斐駒山頂に到着。この時間の山頂は別の山岳会の3人組みと僕らだけだった。もちろん黒戸尾根から登ってきた僕らをほめる人などいない。15:00 「この先、鋸岳は・・・危険・・・死亡事故・・・」と記された看板を後に今晩の宿となる六合目石室小屋に向け出発。ここからは下りになるので楽になる。

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16:10 石室に到着すると、60歳くらいの男性が僕らの足音を聞いたのか石室から出てきた。まずはご挨拶。西表島から来たといい、こっちの山に詳しい方だった。既に第二高点まで行き、明日は甲斐駒方面に行くという。石室の中は詰めれば10人が横になれるくらいの広さで、靴を脱いでどっかりと座った。相当な疲労で出る言葉は二人とも「疲れた」ばかり。やっと休める、を通り越して「やっと眠れる」が本音。ムーさんとコンビニで買った200mlの焼酎を二人で飲んでいるとそこへ今度は20歳前半と思われる女子が石室に入ってきた。都内在住で僕らの反対側のルート、既に核心をひとりで通ってきたという。山岳会にも入ってなくてすごいね、とかこんな女子がいるのかと、夕食を食べながら話す。夜はけっこう冷え込み、持ってきた雨具などを全部着込んだが追いつかず。ムーさんが軽量化として用意した新しいシェルターをシュラフ代わりに私にかけてくれて助かりました。

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今回の山行は軽量化もとても勉強になりました。ムーさんの道具には無駄がなく、流用できるような考えも仕込まれている。シュラフ、ハーネス、ザック、ギア、着替えなどはコースに見合ったものに見直す必要があると思いました。

18:30(おそらく)就寝。夜中にはけっこうな雨が降ったらしい。

■三日目

04:00 起床。たっぷり寝たので昨日の朝とは大違いだ。やっぱり睡眠は大切だなと。水は二人で4リットルあれば十分で、西表島の方は水が乏しかったので余分な水を分けてあげようとしましたが、入れ物がないとのこと。ここでみっちゃんからもらったペットボトルが大活躍。水を分けてあげることができました。

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05:30 石室を出発。快晴。仙丈ケ岳や雲海が良く見える。

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06:00 三ツ頭分岐に到着。アップダウンの連続だが、二人ともよく眠ったので昨日の俺たちではないぞ!とばかり軽快に脚が進む。

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07:00 中ノ川乗越に到着。ここから核心の始まり。ガラ岩の長い沢を登る。結構な高さがある。必ず長い登攀となるときにはムーさん、「誰かいますかー?これから登りますよー!」の声。また不明瞭な箇所や高い場所に位置すれば必ず地図確認を怠らないムーさん。さすがだ。勉強になる。落石を避けるため二人の距離を詰めての登攀。ガレ岩を避けるため左側にある草つきに沿って登る。

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08:00 第二高点に到着。剣が刺してある山頂で次に目指す第一高点がよく見える。昨日、七丈小屋の小屋番さんが一昨日、ここから第一高点に雷が落ちたのを目前で見たという。この辺りは雷が多いらしい。地図では第二高点からかなり下に下降するとなっている。踏み跡はかなりのガレ場でここで私が落石を起こしてしまった。先行するムーさんとは全く違う方向に石が落ちていくが、当然下に人がいる可能性があるので「ラーク!!」と声を張り上げる。石が下に消えていく様をムーさんと眺めていると、「カーン、カーン、(しばし無音・・・)、ガン!ガラガラ・・・」この音からしてこの先がかなり高さのある絶壁であるとムーさんが言う。さすが。確かにこの先には踏み跡が途絶えている。僕らはいま絶壁のすぐ手前にいるわけだ。迷ってできた踏み跡もあるので注意しないと、とムーさん。その先には近づかずに落ち着いて辺りを見渡す。対面に見える稜線に踏み跡らしき道筋を二人で確認し合い、迷った箇所へ登り返して見回すと、稜線へと続く木にリボンが付けてあった。対面に見えた稜線は「中央稜」で僕らはそこから外れていたのだ。この鋸岳、ほぼ全工程にリボンやマークが付けられいるので、もう少し見易いところに付けてくれればよいのに、と思ったが、ここはバリエーションルート。甘えは許されない。ここは誰もが迷いやすく、かつとても危険な場所で、やはりバリルートは単独では行くべきではないのだと認識した。

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中央稜を下ると先ほどの絶壁が右上に見える。かなりの高さだ。このルートのどこにでも言えるが落ちたら助からない。(一昨年の秋、ここから滑落、死亡した方がおられたようです)大ギャップとバンドをトラバースする。落ちたら終わり。どこも気が抜けない。上部に鹿窓を確認し、そこへ続く崩壊したルンゼを声を掛け合いながらクサリで登る。ムーさんは滅多に落石を起こさない。さすがだ。

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09:10 鹿窓に到着。その先の小ギャップは難なくクリア。そして・・・・

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09:40 第一高点(鋸岳頂上2685m)に到着。ムーさんと会心の握手&グータッチ!展望はガスで覆われていたが途中何度もへこたれながらもほんとにここまでこれてよかったと思った。

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ここからは下山の途となり、話はここで終わりたいところであるが、この先でヒヤリハットもあったので続けたい。

下山もアップダウンを繰り返す気の抜けないルートが続く。角兵衛沢のコル手前の急な下りでスリップした。必ず何かに掴まりながら降りることを念じていたので、大きく体勢を崩したものの、鉄棒ほどの太さの木の枝を左手で握っており滑り落ちることはなかった。が、その2、3歩先の藪の下は角兵衛沢へ落ち込む崖であった。木を掴んでなかったら滑落していた。このヒヤリはムーさんにも伝えてなかったことだが、たとえヘルメットやギアを装着してても「滑っても落ちない歩行が命を落とさない絶対条件である」と認識しました。

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12:00 横岳峠に到着。

12:30 富士川源流に到着。

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13:10 岩小屋に到着して、ようやく山道とお別れ。ここから先、みっちゃん号が迎えに来てくれる釜無川ゲートまでは車両は入れないので、ゲートまでの林道を約9km歩く必要がある。みっちゃんも予定があるので、ゲートから先も歩く覚悟でいたのですが、既に足裏が長い下りで悲鳴を上げてました。

16:15 釜無川ゲートに到着。ちょうどゲート出口でみっちゃん号が着てくれました!私の思いが通じたのか、それともムーさんの想いが通じたのかは不明ですが、それが映画スターウォーズ第Ⅴ話のラストでファルコン号に乗ったレイヤ姫がルークを助けにくるシーンのようで忘れられません。それほど疲れていたのだと思います。そこから道の駅にある「つたの湯」に入り、家に着いたのは23時を回っていました。

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以上で私の初バリ報告は終わりますが、今回の鋸岳山行の感想として、

・比較するものではないかもですが、西奥穂のバリとは違う点として、西奥穂はほとんどが岩場である反面、鋸岳は草や滑りやすい土があってこちらの方が危険度は上かな。

・リボンやマークはほぼルート上に付けられていたが、基本、踏み跡を追うルーファイ技術は必要。

・黒戸尾根から登ると核心は黒戸尾根であった・・・、かな?

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最後に、

ムーさん、ずっと私をフォローしてくれてありがとうございました。ルートファインディング、軽量化、大変勉強になりました。まだ未熟ですがいつかは私が誰かをバリに連れて行けるよう精進したいと思います。そうなるまでまたバリに同行させて下さい。

みっちゃん、クルマ出し、送迎までしてくれてありがとうございました。要所要所のフォローが効いてきてほんとに助かりました。ぜひとも今度バリ一緒に行きましょう。

会長、会の皆様、こうしてバリできたのはこれまで会を築きあげてきた皆さんのおかげです。

今後ともよろしくお願いします。

(すけちよ)

 

 

2年前から何度も計画しては、悪天候で中止となっていた甲斐駒から鋸岳の縦走。今回はみっちゃんが山岳医療パトロールのボランティア活動で黒戸尾根をピストン(七丈小屋泊まり)して甲斐駒へ行くと聞いたので、以前に考えた黒戸尾根→甲斐駒→鋸岳→釜無川ゲートという縦走が(下山後の交通機関が無いという問題がクリアになり)可能ではないかと閃き、北鎌尾根挑戦が目標のすけちよさんを誘うと「鋸岳って、どこ?」という返事。内心「ズコーッ」と感じたが「破線ルートで北鎌に向けた練習にと思いまして・・・」と丁寧に説明すると「行く!行く!!」という返事。天気の方は当会1、2の晴れ男が揃って晴れないわけがない!

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黒戸尾根登山口を5時半に出発。今回は、テント泊装備にロープ・ギア類を担いでいるので、軽量化に努めるため、水は次の給水ポイントまで必要な分(約2㍑)だけを持つことにした。すけちよさんと2人だけで登山をするのは初めてだが、グループでは歩いているので不安は無かった。登り始めて少しペースが速いかなとも思ったが、すけちよさんはピッタリと付いてきて、11時過ぎに小屋に到着。ここで六合石室までの分だけ給水をして出発するつもりだったが、ここで満タンにして石室の水場へ行くのをやめよう!と作戦変更。この作戦は「良い経験をした」という意味では成功だったが、それ以外は、まさに地獄の修行だった。肉体的にもかなり参ったせいか、夜になって久しぶりに内ももの筋肉がつった(>_<)

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甲斐駒から先は破線ルートで「おかしいと感じたら、落ち着いて周りを見れば」大丈夫だと考えていたが、その通りであった。六合石室まで基本は下り基調の岩稜帯の稜線歩きため、水が重くても快適♪ルートも明瞭なので、緊張感もなく歩けた。石室は西表島から夏休み中ソロで本州の登山をしている男性と、一人で戸台から鋸岳を越えてきた女性の4名で広々と使用することができた。我々は軽量化のためにシュラフを持参していないので、シェルター(すけちよさん)、シュラフカバー(私)にくるまって寝たのだが、まさにバタンキューだった。

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鋸岳の核心部までは一部樹林帯の中を歩き「迷った」という記録もあるので、朝は明るくなってからの出発。実際に歩いてみると迷いそうな箇所は見当たらないが、山梨県側をトラバース気味に歩いていて突然稜線に上がったりする部分で、真っ直ぐに行ってしまう薄い踏み跡もあるため、これかな?という感じ。三つ頭分岐を過ぎて急激に下がると中の川乗越に着く。

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ここで、ハーネス・ガチャ類を装着しガレ場風の急登を上がるが左側にガレてないしっかりした踏み跡があり30分程で第2高点に登頂! 北・中央・南アルプス、八ヶ岳等、360度の展望を楽しみ、先にある第1高点までのルートを2人で確認してから、長野県側へ細い急なガレ場を降りていきます。ここで右手の壁沿いの踏み跡が明瞭だったので、そのまま進むと下へもガレに踏み跡が・・・、まずは壁沿いに進むと大ギャップには到底着地できない崖の上。ならばと少し戻って、下へと続く踏み跡を進む。すぐに先が見えなくなり「これはいけない」という場所に出た。周囲を見回すと下向きに見て左の斜面に踏み跡を発見。一度山頂まで登り返すのかと心配したが、すぐに別の踏み跡で正しいルートへ戻れるトラバース道で迷路から脱出!

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その後は事前に調べた情報通りに大ギャップから続くガレ場をトラバースして15mほど下ると、鹿窓ルンゼにつながるバンド、鹿窓ルンゼも左側の草付で上部まで上がれる。クサリが出てからは、ルートの角度も大きくなり岩も滑りやすい。鹿窓直下のピンポイントだけでもクサリを使用した方が安全だと感じた。鹿窓を抜けるとすぐにクサリの付いた15mの下降(草付を下降できる)と8mの登り、呼吸を整えて稜線を上がっていくと第1高点に着く。

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第1高点に着く直前にガスで覆われてしまったが、十分に満足。すけちよさんも今回の山行には大満足のようだ、良かった!あとはひたすら横岳峠、富士川源流へと降りていく。黒戸尾根よりは歩きやすいルートではあるが、標高差の大きさを感じる下降だった。それに比べると釜無川ゲートまでの9km超の歩きはすけちよさんと話しながらだったので楽なものだと感じた。しかし、釜無川沿いの治山事業を見て自然の力を制御するということが、いかに難しいかを感じた。コンクリートで固められた山の見た目は悪いが、経年により植生が回復するようだ。「そこに山が無かった」ら登山はできない。いろいろと考えてしまったが、実は足が痛い・・・なんとか釜無川ゲートに着くと同時に、みっちゃん号が現れた。助かった~!

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(Muu)