2004 女だけ・かんばの穂高
当初の計画では、初日に北穂・東稜、2日目に前穂・北尾根の予定だったが、金曜日に涸沢入りしたので、初日に北尾根へ入ったほうが3峰での順番待ちを回避できるのでは・・、と急きょ初日に前穂・北尾根へ行くことにした。
4年前に雨の為、北尾根を登れなかったみえりんさんも挑戦することとなった。
■メンバー
ヒロリン、みえりん、あんみつ
■コースタイム
涸沢(3:30)---5・6のコル(5:00~5:30)---3・4のコル(8:30)---前穂頂上(11:05~11:40)---吊り尾根---穂高山荘で雨宿り---涸沢(17:30)
前日に下見しておいた5・6のコルへの道を辿り、徐々に高度をあげていくと、コルに着く頃には目の前の5峰を始め、奥穂から北穂の峰々が朝日に染まり、輝き始めた。
奥又白側の眺めもすばらしく、しばし展望を楽しむ。
05:30 北尾根登攀スタート。5峰は涸沢側のハイ松の中に縦走路のようなしっかりした道があり、特に危険な箇所もなく、5峰のピークに出る。
5峰から眺める4峰は大きなガレキの山で威圧感がある。
前日、涸沢常駐の県警詰め所に寄って、今年の北尾根情報を伺うと、「数年前の地震の影響で4峰あたりのルートは荒れている、浮石、落石に注意」とのこと。
「ロープは持っていますか?」
「はい」
「先行パーティーがいる場合、落石もありますから、ヘルメットはかぶって下さい」
「はい(あたりまえです!)」
「稜線上はケータイが通じますから、何かあったらケータイで連絡してください」
「はい(何かあったらって・・?)」
等々アドバイスされていた。
4・5のコルに出て、いよいよ要注意の4峰、ルートを外さぬよう慎重に行く。
涸沢側から回り込んでしばらく行くと、奥又白側に出ていく目印となるこのルート唯一の赤ペンキが見当たらず、みえりんさん、あんみつさんに待機してもらい、少し先まで偵察に行く。
ルートが確認できたので二人のところへ戻り、赤ペンキから奥又白側へ大きく回り込む。
そこから稜線目指して右上していくと前方に張り出している大きな岩があり、それを越えると4峰のピークに出た。
ピークからは涸沢側に踏み跡があり、忠実にたどると3・4のコルに出た。4峰の浮石は心配したほどでなく、まずはひと安心。
3・4のコルに先行パーティーはなく、私たちのかなり後ろに男女4人の1パーティーがいるだけという北尾根日和に恵まれた。
コルで登攀の準備をする。8.5ミリ×50mのロープにトップ・ヒロリン、セカンド・あんみつ、ラスト・みえりんのオーダーで、セカンドのあんみつさんはアッセンダーのロープマンで登り、みえりんさんがトップのビレーをする。
3峰の登りはいくつかあるらしいが、左側のルートをとり、奥又白側へトラバースして行くと、ハーケンが何本か打ってあり、まずは最初のランナーをとる。
フラットソールに履き替えたのでフリクションもよく効いて、スタンスは安定している。そのまま左上していくと、1ピッチ目の終了点のテラスに出た。
ロープを張り気味にフィックスしてあんみつさんを呼ぶ。あんみつさんは沢で使用しているというロープマンで快調に登ってきた。
あんみつさんがセルフビレーをとるのを確認してからラストのみえりんさんをビレーし、あんみつさんには引き上げたロープの整理をしてもらう。
3人揃ったところでギアを受け取り2ピッチ目のチムニー横の凹角に入るが、チョックストーン越えはフリクションがよく効くので難なく乗り越え、凹角を抜けたところでピッチを切り、あんみつさん、みえりんさんも快調に登ってきた。
3ピッチ目はルートを少し右にとったようでロープの流れが悪くなり、短めにピッチを切り、全4ピッチで3峰のピークへ抜けた。
5ピッチ目は安全のため、2峰のやせ尾根も確保することとし、2峰のピークでビレー支点をとり、あんみつさんに登って来てもらい、すぐ先の懸垂用の支点を偵察してもらう。
その間にラストのみえりんさんも登って来たので、そのまま懸垂の支点のところまで進んでもらいビレー解除。
懸垂であんみつ、みえりん、ヒロリンの順にコルに降り立ち、ここでロープをしまい、登山靴に履き替えた。
頂上への最後の登りを慎重に辿って行くと、11:05 細長い前穂の山頂に出た。みえりんさん、あんみつさんと握手をしてお互いの健闘を称えあった。
多少時間は掛かったものの、安全第一に充実したクライミングを楽しむことが出来た。
北尾根は75年5月、83年5月(3峰で渋滞の為、3・4のコルより下山)に登っているが、どちらも連れて行ってもらった山行であり、今回は私がリーダーとしての山行なので、北尾根の下調べ、事前の現地情報は充分にリサーチした。
3峰を目の前にして見慣れた感じがしたのは、ガイドブックの写真で繰り返しシュミレーションしていたからだった(笑)
■メンバー
あんみつ、ヒロリン
■コースタイム
涸沢(6:50)---北穂沢大石(8:00)---東稜稜線上(8:45)---ゴジラの背(9:40)---北穂のコル(10:10)---北穂小屋(10:50~11:40)---北穂山頂(11:45)---涸沢テント場(12:45)
今回の山行でみえりんさんの本来の目的は、『涸沢でのんびり昼寝とヒュッテのテラスで穂高の山々を眺めながら美味しい珈琲を味わう』という贅沢な時間を過ごすことであった。
昨日北尾根を充分に楽しんだみえりんさんは、今日はその第一目的である休息日に充てるため、北穂の東稜はあんみつ、ヒロリンで出掛けることにした。
少し寝坊を決め込んで朝5時にテントから顔を出すと、天気は良好、5・6のコルへ向かう道には3パーティーが取り付いていた。
やはり昨日北尾根へ入ってよかった・・。
涸沢小屋の脇から南稜の登山道をしばらく辿り、北穂沢のガラ場が右に見えてくる頃南稜の登山道と分かれて、東稜に突き上げるルンゼを目指しガラ場を斜上する。
4年前に遊少年(元岳樺)、みえりんさんとここを歩いたときは、雪渓の上をキックステップで歩いて行ったが、今年はまったく残雪がなくガラ場をトラバースしていく。
稜線に抜けるルンゼは、中央を歩くと足元から崩れる岩屑なので、脇の草付の中の踏み跡をたどり、東稜の稜線上へ抜けた。
今日はあんみつさんにトップを任せるが、不安だと思ったらいつでもロープを出すよう指示して歩き始める。
右は大キレットから槍に続く稜線、左は昨日歩いた北尾根が目の高さに美しい稜線を見せている。
前にも後ろにも他のパーティーの姿はなく、すばらしい展望のなかを東稜の核心『ゴジラの背』に向かう。
『ゴジラの背』は両サイドがスッパリ切れたナイフリッジだが、ホールドもスタンスもしっかりしている。
あんみつさんはクライミング度胸よく、ロープを出すことなくバランスよく通過して行き、懸垂地点に着いた。
脇から回り込めばクライムダウンも出来るが、せっかくロープを持ってきたので懸垂下降で北穂のコルへ降りた。
昨日の北尾根に比べればあっという間に終了してしまった東稜だが、昨日の北尾根があったからこそ余裕の稜線歩きが出来たのだと思う。
あとは頭上に見える北穂小屋目指して踏み跡を外さぬよう直上していくと、キレットからの縦走路と合流して北穂小屋の脇に出た。
振り返ると『ゴジラの背』がかなり見下ろす位置にあった。
北穂小屋で珈琲を注文、テラスで目の前の北尾根を眺めながら飲む珈琲は格別だ。
南稜を下山途中、12時に涸沢のみえりんさんと無線で交信して、東稜を無事終了したことを伝えた。
ビールとおでんを用意して待っているとの事・・
それに釣られたわけではないが北穂の山頂から1時間でテントサイトヘ駆け下りて、おでんとビールで2日間の山行の打ち上げをして至福の時を過ごした。
(記 ヒロリン)
二十歳の頃から何十回も穂高を訪れ、涸沢を知り尽くしているヒロリン・リーダー。私は初めての涸沢。
5年前に岳沢から槍まで縦走したとき、カラフルな涸沢のテントを眺めただけ。小屋泊まりのハイカーで、クライミングそのものに興味も知識もなく自分のすることではないと決めていた。
前穂の頂上でメットを被って反対から登ってきた人々を見ても、全然興味も持たなかった。
クライミングは特別な人たちがやることだと思いこんでいた。高いところに登るのは大好きだったけれど、重いリュックを背負って山に登るなんてとても考えられない。
肩こりがひどく子供たちもほとんど負ぶったことがないのに・・・ とても無理。前穂の北尾根は見る山で、登る山ではなかった。
だからヒロリンさんから計画を聞き、下調べをするように言われた時、「ふ~ん、ここを登るのか・・・」と実感がわかなかった。
穏やかな朝、先頭を行くヒロリンさんのヘッドライトが頼もしい。
ゆっくり着実に登るミエリンさん。5・6のコルに着いた頃には明るくなり、奥又白池が見えた。「こんなところに池があるんだ、あそこに行ってみたい。」と思った。
今日は最高の一日になりそうだ。ヒロリンさんに続いて登り始めた。慎重なリーダー、それに引き替え、私は暢気に景色を楽しみながらルンルンで登っていった。
3・4のコルでハーネスをつけ、ロープマンを使って登り始めた。1ピッチ目の出だしでちょっと焦った。「靴が脱げそう。体がクライミングを忘れている。」
いつもそうだ、最初が怖い。「トップは難しいンだろうな!! ヒロリンさん、よく登ったなあ!」と感心しながら、何とか通過した。
ラストのミエリンさんを待つ間に靴のひもを締め直して気持ちも落ち着き、この後は焦ることなく楽しく登れた。
最後に、大変なミスを犯すところだった。懸垂で降りようとをしたとき、私のルベルソはハーネスではなく、ギアラックに付いたままだった。
ヒロリンさんが気づいてくれた。今回一番の反省点。ルベルソはハーネスに付けたままにしておこう。
前穂の頂上で、女性登山者が私たちを見て「私も登りたい。」と言っていた。連れの男性に「無理だよ!」と言われていたが、彼女も数年後には登っているのかしら。
良きリーダーと仲間がいれば、登れないことはない。最近やっと岩の面白さが分かってきたかな?
翌日はヒロリンさんと二人で北穂の東稜へ。穂高を独り占めした気分。ゴジラの背はホントに楽しく快適に登れました。北穂の小屋でコーヒーで乾杯。
穂高、女だけ・かんばの合宿は予定通りパーフェクトに終わった。ミエリンさんには美味しい食事やデザートまで用意して頂き、大満足。冷やし中華、美味しかった。
三人だけでちょっと寂しいなと思っていたけれど、女だけでノビノビ?! こんなのもたまに良いですね。
さて次は雪のあるときに、北尾根、北穂の東稜を登りたいな。
(記 あんみつ)
当初の目的は滝谷隊に随行しテントキーパーをしながら涸沢で、日なが一日昼寝をしたり、ヒュッテでコーヒーを飲んだり読書をしたりと贅沢な夏休みに浸りきるつもりでした。
滝谷の発起人が抜けメンバーが減り、3人になってしまった事もあり、折角行くのだから一本登りましょう・・ということで北尾根を楽しんできました。
山から久しく遠ざかっているので涸沢まで歩けるのか不安でした。7月の気温38℃の日、サウナ状態の奥武蔵にボッカ訓練に行ったりしましたが、やはり穂高は遠く、休憩というより午睡を取りながらようやく涸沢にたどり着きました。
20kg近いリュックを背負ったあんみつさんは韋駄天のごとく走り、私より2時間程先に涸沢に着いたようでした。
4年前、ヒロリンさん、遊さんの三人で東稜に登った頃から比べると高所にも慣れ、少しだけクライミングも上達し、気持ちにゆとりを持って北尾根を登る事ができました。
また、私の軽登山靴が崩壊するというアクシデントがありました。上高地から横尾までソールにたくさんの亀裂が入っていても歩行中、変化に全く気付きませんでした。
幸い横尾で休憩中に発見、これまた幸いな事に横尾山荘でモンベルのハイキングシューズを買う事ができました。
今回、快適な山行が出来たのは、一ヶ月以上前から入念な下調べやシュミレーションをしてくれたリーダーのお陰だと思います、ありがとうございました。
(記 みえりん)