白馬岳主稜 ~2017.4月~

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山域:後立山連峰 白馬岳 主稜

日程:2017.4.22-23

行程:二股ゲート~猿倉荘~白馬尻~主稜~白馬岳山頂~大雪渓~白馬尻~猿倉荘~二股ゲート

メンバー:Muu(L) みっちゃん

今回の山行で改めて気付かされたことがある。私は人並みに高所が苦手ということだ。仕事では「橋」の点検をすることがあるため、高所作業車の取扱訓練をやるのだが、年齢的にも後輩と訓練することが多く、怖い思いをしたくないので高所作業車で行ける目一杯の高さまで上がらずに、取り扱いだけは確認して終えてしまう。

岳樺クラブに入会して、それまでの一般登山道歩きからクライミングやバリエーションルートに行くことになって、始めから高さに対する恐怖心が強かった。しかし、個人的には恐怖心があることで慎重になり、より安全になれると思っていた。

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白馬岳主稜は、今回が2度目の計画である。1度目は2年前のGWの時で主稜経験者のDGさんに初めてのみっちゃんと私の3人で行く計画であった。しかし、入山して白馬尻で確認したところ融雪が想像よりも進んでいるため、厳しいという判断で中止した。(子蓮華尾根を登攀)

昨年はさらに雪が少ないことで計画自体なし。2度目の今回は、GWよりも日程を早めに設定し、DGさんから様々なアドバイスをもらい、みっちゃんと2人での山行となった。2人とも初めての主稜ということもあり、天気には注意をしていたが、幸い土曜日が曇りから晴れ、日曜日は1日晴れの予報であった。

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白馬大雪渓の入口である猿倉荘まで、冬季規制により車は入れないため手前の二股ゲートから歩く。猿倉荘でアイゼンを装着し白馬尻までズボズボと歩いていく、数日前に降雪があったためかトレースは全くない。雪も2年前のGWよりも多いのが分かる。

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白馬尻に8:30に着いたが予報通りガスで視界が悪く、主稜へと続く斜面の上部の様子が全く分からない。この斜面は2年前に子蓮華尾根から見た時にシェルンドが多くできていたので、ルートを確認して取り付きたかったが仕方ない。予定通り白馬尻より白馬沢側へ巻き込んだ尾根の末端へと移動し真っ直ぐに登り始めた。

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鋭い主稜線となる2150mまでの600mの広い斜面をラッセルしながら登っていく。視界は相変わらず悪く、突然現れた大きなシェルンドを慎重に越える。視界が悪いのが恨めしい・・・。広かった斜面から突然に張り出した雪庇のある稜線へ飛び出し、いよいよ長いリッジとなる。ここでソロ1と3パーティの10人ほどが追いつき、ラッセルに感謝された。前回の吾妻連峰と似た展開(?)。

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この時点で12:00。どこでテントを張るかは決めてはいなかったが、思った以上に進んでいない。できるだけ進んでおきたいというのが本音だが体力との相談、雪の状況からの総合判断になる。

いきなり7m程の雪壁となるため、我々はロープを出すことにする。私がリードして登るとその先は、細いリッジとなっており心拍数が上がる。みっちゃんを引き上げてロープをしまう間に後続のパーティが上がってきて、歓声を上げながら写真を撮っている。私のドキドキとのギャップに「怖いと感じているのは私だけ?」と焦りながらも、「確実に一歩ずつ!」を頭に慎重に進んでいく。この頃には視界も良くなり、最高の景色を見ながら進みたいのだが、そんな余裕はない。とにかく足元に注意して進むだけだ。

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人間とは慣れるもので、足元の狭さと高度感を気にしていたよりも、消耗した体力とテントをどこに張るか?という心配が大きくなる。そんな時に、それは起きた・・・。

先頭を譲ったパーティが50m程の急斜面を登っている。先行パーティが雪の状態が悪く手こずっており斜面途中で追い付きそうなので、みっちゃんと足場の良いところでロープを出すか、どこに支点をとるか、と話していた。何気なく先行パーティを見上げたところ、突然、大きな雪煙が発生した。何かが落ちてきた、みっちゃんを掴んで引き寄せる。その3m横を転がりながら落ちていく若い男性。「止めろー!止めろー!」とみっちゃんが叫ぶ。あっという間に見えなくなった。斜面に取り付いていた同じパーティのメンバーが声をかけている。どうやら緩斜面まで滑落し停まったようだ。あとで地図を確認したところ2300mから最低でも2000mの白馬沢までは落ちている。途中に岩や木がないのが幸いしたのだろう。このパーティは下山することとなった。

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代わって先行することになった我々が60mロープ一杯でP6に到着。滑落の際に呼びかけや下山するパーティの対応を待って時間も15:00。この先にテントを張れる場所はしばらくなさそうだと判断しP6にて幕営する。白馬岳から吹き降ろす風に備え雪でブロックを作り、テントを設営した。設営時には一時的に強風だったが、翌朝までは無風で静かな夜であった。DGさんから下界の夜景と白馬岳がきれいだと聞いていたが、満天の星空もセットで素晴らしい景色だった。

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翌朝、日の出とともに支度を済ませ出発!雲一つない最高の天気だ。テントを張ったP6からは、一気にリッジが狭まる。肩幅程度のリッジがうねうねと続いていく。朝一ということもあるが、昨日の滑落を見た影響が精神的に響いている。腰が引けて自分でも分かるくらいへっぴり腰だ。でも、腰が引けていると非常に疲れる。足や手だけでなく、全身に無駄な力が入る。歩きながら体の軸をイメージして腰を前に出していくと楽に歩けるのが分かる。Wアックスで登るような急斜面では前爪で乗っかりふくらはぎとアックスを確実に利かせるため手で打ち込むため腕が疲労する。いよいよ白馬岳が眼前に迫り、本峰と主稜が一体となりかけると急斜面が続く、雪も崩れやすくなってきて慎重に登り、最後の雪壁を残すのみとなった

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我々は60mロープを持っているので、先行2パーティに続いて一気に私が登って、みっちゃんを引き上げることにする。まずは雪庇の下でスノーバーを打ち込み、最後の3mほどの壁を3点確保で登る。先に頂上に着いたパーティから「ガンバ!」という声がかかる。無事に乗っ越した!すぐにスノーバーで支点を作り、みっちゃんを引き上げる。みっちゃんが頭を出したところで写真を撮るが、雪壁を登る際に懐に入れていたカメラのレンズに雪が付いており、ぼやけてしまった。ゴメン。

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みっちゃんも素早く上がり、2人でお互いの健闘を称えあった。これほど精神的な安堵感と開放感を得た、こんな経験は今まであっただろうか?忘れてしまったのかな?広い白馬岳の山頂から360度のパノラマを見渡しながら、長い緊張状態が終わったことを実感できた。

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 今回の反省点

    軽量化を図り、中古のガスを持って行ったため、水づくり後にガス欠となった。今回は大きな問題はなかった。

    最後の雪壁でスノーバーを頂上へ登っていく直下に設置しなかったため、ロープの流れが悪くなった。

    バランスが悪いと余計な力が入って疲労する。加齢とともにバランスが悪くなるが、性格的なバランスは良い(はずな)ので、バランス力維持に努める。

(Muu)

 

2年前のGW白馬山行、白馬尻から小蓮華尾根をつめて白馬岳山頂に至ったとき、白馬主稜の雪壁を登りつめ歓喜をあげている人達がいた。神奈川からの10人以上のグループであったが女性も年配者もいて、次から次へと雪壁から出てくる。他の登山者もいてその興奮は伝わり自分も喜び興奮し記念写真まで撮ってあげたりした。腰には金属の棒(スノーバー)をぶら下げて、ガランジャランと喜びを掻き立てて、まるで部族のお祭りのようだった。私はこの先、白馬主稜を自分でも出来るようになれるのだろうか・・・いや出来るようにならなければ!と思ったのを覚えている。

あれから2年、いろいろ経験を積んで条件も整い白馬主稜の計画書を提出し許可をいただいたとき、やっとその時が来たのだと実感した。しかし、見るのとやるのとではかなりの違いがあった。雪稜が始まる8峰までもキツイ登りが続き、そこから神経を使う危険箇所は連続し、だんだんエスカレートしていく、さらにリッジはどんどん切れ切れになっていく。こんなところに来るのは物好きしかいないと思えてくる。 幸いした好天が高感度を高めて、恐怖心との戦い、云わば自分との戦いであった。しかし焦らず冷静でいられたのは、ブライトホルンやマーターホルンの経験があったからかもしれない。

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白馬主稜は最後の雪壁だけが雪壁なのではなく、その前も幾度もダブルアックスで登らなければならないところやロープを出す箇所があった。もちろんフリーソロの人もいるのでロープを出す出さないはそれぞれだが、会長の言葉の「人はどうでもいいのです、自分なのです」が繰り返し頭の中をよぎる。周りの人に流されるのではなく自分達できちんと判断することを心がけた。

 

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いよいよクライマックス、最後にして最大の雪壁、2年前会った部族いわば主稜族の人々は最後の雪壁で興奮していたのではなく、全ての行程でアドレナリンが出続けていたのだと最後の雪壁の前に立ったときに思った。そして自分がその雪壁を登りつめた時、そこにいたのは静かに座って腰がらみしてくれているMuuさんだけ、そして、周りにはさっき登りきり同じくパートナーをビレイしているオジサンだけである。そのほかは誰もいない・・・部族のお祭りは・・・大興奮の歓喜は・・・そうだ!まだGW前!誰もいないじゃん・・・あるのは何ともいえない安堵感とロープを繋ぎあった2人分の喜びだけであった。

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無事にミッションコンプリートできたことをお互いたたえ合いながら大雪渓を得意のシリセードで下山した。そして下山連絡して、会長から「白馬主稜おめでとう!」と返信をいただいたとき、白馬主稜を成し遂げた喜びは2人だけのものではないと、じんわりと深いところで噛み締めることが出来ました。会長&DCさん、ご指導ご鞭撻ありがとうございました。

(みっちゃん)