2006春合宿 白馬主稜
JR新宿駅改札を出て新宿都庁地下にあるアルピコバス乗車場に向かう途中、見慣れた年季の入ったクライミングザックを背負ったヒロリンさんと合流。いつものコンビニで軽い食料と飲み物を購入してバス乗車場に向かいました。
その後、やはり見慣れたザックを背負い、黒い長靴にも見えるプラブーツを履いて、白いビニール傘を手にしたリーダー竜少年が到着して合宿メンバー3名全員が揃いました。
明日より本格的連休に入るからでしょうか、去年より早い時間帯だったでしょうか、バス停は北アルプス方面へ遊びに行く多くの人達で大変な混雑でした。
22:30 新宿を後に白馬に向けて発車したバスの中で軽く打ち合わせをした後、仮眠しました。
06:15 快晴の朝、去年の春合宿時に下車した五竜テレキャビン前を通過後、大糸線白馬駅近くの旅館前にてバスを降り、徒歩数分にて白馬駅前に到着しました。白馬駅前からは白馬岳と主稜が良く見えていました。
猿倉行きバスの発車まで1時間程時間があったので、駅前の蕎麦屋にて朝食タイム。その後 07:15 猿倉行きバスに乗車。バスはスキー娘(だった)ヒロリンさんの青春時代を過ごした場所を通過。懐かしい話を伺いながらバスは本格的山道に入り 07:45 終点の猿倉に到着しました。
08:00 装備確認の上、登山開始。本日の目的地の白馬尻までは約2時間程のショートコース。ルートも穏やかな雪道の為、スノーハイキング気分と普段のトレーニング不足を補う足慣らしも兼ねてノンビリゆっくりと歩き出しました。
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無風快晴の空の下、暑い位の日差しを浴びながら、予定通り約2時間弱で白馬尻に到着。
白馬の尻を左へ巻くと、大雪渓の末端と、その左岸に明日登攀する主稜への取り付きが現れました。
尻の左側に高台になっている箇所があり、そこを本日の幕営地としました。
12:00 高台には既に数組のパーティーがテントを設営していました。
竜少年曰く「以前の連休だったら考えられない空き方」だそうです。
確かに空いている方がノンビリ出来るし、夜も静かだし、それはそれで喜ばしい事ではありますが、山を登る人間としてはチョット淋しさも感じました。
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我々は他のパーティーより離れた高台の一番上の方にテントを設営しました。
今回はフライを新調した為に、外見は新品テントのようで凄く新鮮な気分でした。
テントを張った場所から20m程高台の端に行くと、足元に登山ルートが見え、その向こう側には明日の登攀ルートの主稜取り付きが良く観察出来ました。
既に時刻は14:00を過ぎていましたが、主稜上でテントを張ると思われるパワーのあるパーティーが取り付きから黙々と登るのを眺めながら、明日のコースを確認しました。
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しかし、確かに「コースの確認・取り付きの確認」はしていたのですが、無風快晴の穏やかな天候の下、気持ちまで穏やかでノンビリ至福の気分に浸っていたのでしょう・・・
我々、岳樺パーティー3名は、本来この時点で「確認」では無く「厳密にチェック」するべき事項を怠っていた為に、翌日の主稜線登攀の前に、トレーニング山行を1本行う事になったのでした。
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翌日は雪の締まった時間のうちに登りきる予定の為、02:00起床。03:00を登攀開始としていましたので15:30頃より早めの夕食とし、ヒロリンさん特製「ふんわり鍋」をいただきました。
この鍋は去年の八ヶ岳山行時に僕が歯が悪くて硬いものを食べられない事を知った優しいヒロリンさんが、肉の代わりにハンペンなどを入れて作ってくれた鍋で、竜少年のような人生の大先輩の年代の方向けの身体にも歯にも優しい料理です。
美味しい晩御飯をいただき満腹で幸せ状態になった後、早々と17:30頃に就寝。殆ど無風状態で穏やかな天候の上、周囲に他のパーティーのテントも無い幕営地は、とても静かで、僕は3シーズン用の薄いシュラフで快眠を貪りました。
02:20 起床。速やかに朝食をとり、速やかに準備を整えて 03:15登攀開始。期待通りに雪も締まった良い状態の中、ヘッドランプを点灯して高台を下り、目の前の取り付きに向かった・・筈でした。
前日確認した潅木の手前より登り始めたのですが、暫く経っても潅木帯の中を歩き続けた為に、若干疑問を持った僕はリーダーに確認をしましたが、ルートは間違っていないとの事。継続して登り続けました。
段々と空も白み始めヘッドランプが無くても周囲が確認できるようになった頃、昨日、取り付き上部右側に見えたグリーンのテントを探しましたが見当たらず「既に出発してしまったのか?随分早いなぁ・・」と思いつつもテントが見当たらない事に若干の疑問を持ちましたが、やはりルートは間違い無いとの事で稜線上まで登り切りました。
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05:15 幕営地より約2時間程で稜線上に登り、1本取っている時に目の前にある大きな山塊が朝日を受けて見事なモルゲンロートとなり目に映りました。
ロマンチックな僕は小用を足しながら「あぁ、綺麗だなぁ。やっぱり山って素敵だなぁ・・」と独り感慨にふけっていました。
が、しかし・・何か変です。何故に白馬岳頂上と、そこに登る為の稜線が目の前にあるのでしょう・・・?
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目の前にある、写真で何度も見た記憶のある、あのデカイ山は何なのでしょう?そして、あの山の斜面を登る小さなアリの様なパーティーは、果たして何処のルートを登っているのでしょう?
あそこは大雪渓ルートでは無い筈・・だったら、それならば、あそこはドコ?そして僕達がいるココは何処なの??
目前直下をアリの群れの如く黙々と登る小さな黒い粒のような登山者達を見たヒロリンさんも同様の疑問と同様のショックを受け、リーダー竜少年に問いかけています。僕とヒロリンさんの100倍以上驚いちゃったのはリーダー竜少年です。暫く(と言ってもホンの数秒ですが)呆然と考えつつも「あっ!ここは小蓮華尾根稜線だっ!」
そうです。ここは小蓮華尾根稜線だったのですっ!
何と僕達は主稜の1本右側の小蓮華尾根を登っていたのです。雪の締まった良い状態のうちに他のパーティーよりも早く白馬頂上へ抜けようと思っていたのに、僕達より遅い時間にスタートした筈のパーティーがアリさんの如く小さな姿で黙々と主稜に取り付いているのを隣の尾根から眺めていた時の3名の頭の中は物凄いショックだったに間違いありません。
さて、これからどうするか?右側稜線をまわれば、白馬頂上へは向かえます。が、しかし、我々は、今回の合宿に向けて、主稜を登攀する為の事前の意識合わせトレーニングを行ってきたのです。ここから稜線上を白馬頂上へ向かったのでは今回の合宿の意味が無くなってしまいます。
リーダーも呆然唖然として悩みに悩んでいましたが、この場所で、そう長く悩んではいられません。「現在時刻(05:30)と本日の安定した天候から判断して、これから取り付きまで下山した後、主稜を登っても14:00から15:00頃までには登攀を終了出来る。これより一旦、取り付きまで下山後、予定通り主稜を登りかえす。」との結論を出しました。
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当然の事でありますが、ヒロリンさんと僕もリーダーの判断に全く異存はありませんでした。
あくまでも我々の目的は白馬主稜です。我々3名は稜線直下の雪壁状の急坂を雪崩誘発を注意しながらも早々に降下しました。
途中、小蓮華尾根稜線を縦走するパーテーに出会い「ご苦労様です」と挨拶された時は、ちょっと複雑な気持ちでした。
06:15 小蓮華尾根稜線より走るように下山した結果、約45分で取り付き地点まで戻る事が出来ました。取り付き地点には、主稜を登る最後の方のパーティーが休憩中だったのですが、僕達が、既に小蓮華尾根まで登ってきて、これから、又、主稜を登ろうとしている事を知ると大変驚いていました。
が、勿論、ルートを間違って小蓮華尾根稜線へ登ったなどとは、とても恥ずかしくて言えませんので「いやいや、それ位は我々には何て事ありませんよ。へへへぇ・・」と、さも当然と言った顔で対応しました。
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06:35 いよいよ正真正銘、本当の正しい主稜ルートを登ります。
既に身体はウォーミングアップ完了状態ですので、3名ともに快調なペースで登り、まるで遅れを取り戻すが如くグングンと高度をあげていきました。
08:50 八峰直前の稜線上に到着しました。
これより本格的なスノーリッジが始まる為に1本取りながら各自装備の再点検を行い登攀開始しました。
八峰に続いて七峰を越え。段々と傾斜が強くなりました。
雪が少ないと草付きや木登りを強いられるという六峰もベッタリと雪が付いていましたが、直前の急登部分は1歩目が嫌らしい状態の上、既に雪が腐り始め、前者がキックステップした箇所も続けて乗り込むと崩れるような状況でした。
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10:05 六峰着。ここから三峰までは延々とナイフエッジが続きました。
前述した通り、段々と雪が腐り始めていた為に、前者が歩いた踏跡に足をおいてもズルッと崩れる事が多々ありました。
四峰・三峰途中にはリッジの一角を整地した幕営の跡がいくつもありました。
頂上が間近に見える三峰には相当の猛者が作ったと思われる完璧な防風壁と便所?と思われる別部屋まである幕営地があり、そこで風を避け快適な休憩を1本取りました。
13:30 三峰を後にしてナイフエッジが左に巻くように曲がり雪壁状の二峰を登ると頂上直下の雪壁が目前に現れました。
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二峰を乗り越えコル状になっている部分で1本取っているうちに他のパーティーも到着し始めたので、13:45 竜少年より指示があり登攀を開始しました。
頂上直下の雪壁は稜線まで50m以上ありますが、既に登ったパーティーにより最下部より10m程上がった地点にバケツが掘ってあり、そこでビレイを行う事により50mロープ1ピッチで終了出来ました。
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当日、主稜を登っている途中、頂上直下の雪壁を登っている複数のパーティーを確認しましたが、ロープを使用せず登ってしまうパーティーと、ロープを使用するパーティーと様々でした。
我々は安全を重視してロープを出し、最後の雪壁を安全且つ慎重に登る事にしました。
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僕はビレイ地点で自分より上部にバイルを打ち込んでアンカーとしてビレイ準備完了しました。
トップは勿論リーダー竜少年です。今朝03:15より既に12時間近くも活動をいているとは思えない程の軽い足取りで順調に雪壁を攀じり、アンカーとして途中2個所にスノーバーを埋めて、あっと言う間に稜線に抜けてしまいました。
ここで反省点がありました。本来ならば登攀前の休憩時に、時間帯と日の沈む方角を読み、防風・防寒の為にもレインウエアを着用するべきだったのですが、急いで他のパーティより先に登る事を優先し、薄着のままで登ってしまいました。
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竜少年が登り始めた頃から太陽が頂上の向こう側に移動した為、雪面は日陰状態になり、その途端、アンカーとして打ち込んだバイルの紐は一瞬で凍り付き、環付カラビナは付着した雪が凍り付きゲートの開閉も硬くなり、あっと言う間に氷点下の状況になってしまい結構寒い思いをしました。
これが最後のピッチだったから「結構寒かった」で済みましたが、長いルートだったら最悪事故を起こす可能性もあると思いました。
さて竜少年が頂上に抜けた後、セカンドをヒロリンさんが雪上のカモシカの如く一瞬で登り、その後、ラストを僕が続きました。
14:15 主稜登攀終了。竜少年が稜線に抜けた後、氷点下の雪面から太陽の日が輝く稜線を見上げながらヒロリンさんと「あの稜線に抜けたら暖かい天国だから頑張ろう!」と言っていたのですが、それは大きな勘違いだったようで、稜線上は前述した通りの寒風が吹き荒れていました。
そのような状況の中で本日丸1日トータル11時間以上も雪稜を歩き続けた最後に、我等2人のビレイをしてくれていた竜少年は既に身体が凍りついて体力の限界を越えている状態でした。
山行予定では、当日中に白馬尻の幕営地まで下山予定でしたが、竜少年を始め全員の体調を考慮して白馬山荘泊に変更しました。
06:50 白馬山荘で朝食を食べて充分なエネルギーを充填し下山開始しました。
頂上付近は強風が吹き、周囲の山々にも雲がかかり明日からの天候の崩れが予測出来ました。
大雪渓は多数のデブリが発生し、途中、雪質が悪くグズグズに腐ったな場所もありましたが、概ね快適に下り08:50幕営地に到着しました。
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その後、撤収作業を行いヒロリンさん特製コーヒーゼリーを食べて、更に快適エネルギーを充填し10:30幕営地を後にして11:20猿倉に到着。
客待ちしていたタクシーに乗車して白馬駅に向かいました。
■感想と反省
今年の雪山は何かがおかしかった。3月20日の連休からはじまった毎週のように各山岳地での雪崩のニュースと事故。一番のインパクトは4月末の針の木雪渓での雪崩による5人巻き込まれ3名死亡の記事であった。
白馬の大雪渓と条件が似ているので、家では山行きの大反対にあった。
3年前に一度登っているとはいえ、64になって登れるか。2週間前の西黒尾根のトレーニングのときも風邪気味であったし、行くときもまだ治りきらず咳きが出ていて、大丈夫だろうかと気になるし、雪崩事故の事も心配で、心配の種ばかりであった。
白馬尻に着けば3年前と同じ目の前に主稜の登り口がハッキリと見える。しかし、慣れと天候の良さとあまりにクリアに目の前にあるので、油断をしてしまった。本来は偵察をして、確実に登り口を確認しておきべきであった。
それを一つ先の尾根に上がって3時間以上のアルバイトをメンバーに強いてしまった。正確に主稜の取りつきから登っていれば体力の消耗も少なく、10時前には登頂できた、と思っている。自分が情けなく、消えてしまいたい気分であった。
主稜を登り返したが、一言の泣き言も言わずかえって励ましてくれた同行の二人には感謝したい。その遅れた影響で、白馬山荘へ宿泊しなければならなくなり、散財までさせてしまった。重ねて消え入りたかった。
そのことを除けば、個人的にはまずまずの山行ができた、と思っている。また、最後の雪壁もリードさせてくれて、嬉しかった。また、主稜を今度は岳樺のメンバーと登れて本当に嬉しかった。このことが一番嬉しい。
■反省点
主稜を登っているとき崩れた雪面から乗り移る時、ステップを蹴り込んでも崩れてしまい、なんとか乗り越すことができたが、僕はそこを登り終えたとき、「チョットいやな乗り越しだけど、後ろの二人なら何の問題も無くあがってくるだろう。」と思いながら待っていたら案の定、すんなりと上がってきたので何も考えることもなかったが、後で3人で話し合ったとき、もっと安全には気を配るべきであり、お助け紐程度は直ぐに出せるような態勢にしておくべきであったとの結論となった。
万一落ちたらタダでは済まないのだから。これは、装備、直ぐにセットできる準備、ロープの長さなど今後の検討課題としたい。
最後の雪壁を登り終え確保態勢に入ったが、上と下では風のため声が通らなかった。上り始めにその約束事、例えば、ビレイ態勢になったら、ロープを一杯に引く、等と言った約束事を決めて無かったので上と下でお互いに混乱をしてしまい、時間を無為に使ってしまった。
竜少年
■感想
朝日が眩しい早朝の白馬駅から見上げた白馬主稜は、急峻な雪稜が山頂に向かって突き上げていた。
「お~っ、あそこを登るのか!」
駅前の登山指導所に計画書を提出すると、「今年はどこの山も積雪が多く、まだ雪が落ち切っていないから雪崩も発生し易いので、沢筋は避けて尾根コースをとるように」とのアドバイス。
今年の春山は3月から各地で雪崩事故が頻発して、出かける前日にも針の木雪渓で5名が雪崩に巻き込まれ、3名が亡くなり、そのような状況下で出かけたので、とにかく無理をせず、無事に帰ることが大前提でした。予定通りに主稜をトレースして頂上に立ち、大雪渓を無事に降りてきたことに満足しています。
反省点としては、八峰から始まる主稜のルートばかり頭に詰め込んで、取り付きをおろそかにしてしまったこと。リーダーが3年前に登っているという安心感からお任せ歩きをしてしまい、これはリーダー責任ではなく、パーティー全員の責任として反省し、次の山行へ繋げていきたいと思います。
雪の状態が良くないナイフリッジや雪壁を、最後まで緊張感が途切れることなく登攀出来たこと、良い仲間と共に登れたことに感謝しています。
しかし、標高差1900M(主稜1400M+ルートミス500M)の雪稜登攀は長かったー(^^)
ヒロリン


