トップページ -> クライミング -> 宮崎 比叡山1峰南面登攀

宮崎 比叡山1峰南面登攀


― 6級ピッチをグランドアップで拓いた宮崎登攀クラブの情熱に感激 ―

 宮崎の比叡山を開拓したグループは、自分達の行為を、落ちることが許されるフリークライミングから区別するため、「登攀」と表現している。
 落ちてはならない本ちゃん6級ピッチを、「クライミングの安全はまず攀じる能力で解決し、そのうえで落ちても大丈夫な確保システムをつくる」という伝統的フリークライミングを追求してきた我パーティーがどこまで攀じることができるのか、期待と不安で比叡山に向かった。



■行動概要

 以下の報告で、ルートグレードは日本の岩場によっている。ピッチグレードも日本の岩場によるが、一部どうかなと戸惑う個所もあるので、地元クライマーの登攀記録ならびに比叡山の他のピッチからの比較で記述した。当方の間違いの可能性もあると思うが。


■12月29日 曇り時々晴れ・強風

<『第1.5スラブ』,ルートグレード4級,ピッチグレード6級->

 登山口では風が強く日も当たらないので、寒さに震えてしまう。麓でも薄氷が張っているありさまだ。取り付きを左右に広く30分ほど偵察した後、駐車場でハーネスをつけ準備し、コンクリート石垣裏の踏み跡を数分も歩くと取り付きである。

 数分では体も温まらない。取り付きでロープを解していると、新潟からの若い二人がやってき
て、第1スラブを登るとのことである。比叡山岩場であったのは、結局このパーティーだけであった。ハンマー、ピトン3枚、ナッツとフレンズ1セット、ザックには運動靴・雨具・ツエルト・テルモス・ヘッドランプに医薬品・非常食それから携帯電話と完全装備の本ちゃんスタイルで、10時50分登りだす。

1ピッチ目、4級45m、錦リード
陽もあたらず体がコチンコチンでは4級の岩場もスムーズでない。それにずいぶん着込んでいる。アウターが無いだけでアイスクライミングなみの防寒対策である。ところどころピトンもあり難なく確保支点に。

2ピッチ目、4級45m、MIKIリード
つるべでMIKIさんリードして、上で左上して樹林帯を越え確保支点に。

3ピッチ目、6級-、45m、錦リード
さて、どこをリードしたのかいまでも正確にわからない。とにかく、5,6mごとに並行して3本ルートがある。やっと陽光に恵まれ、上には赤いスラブにボルトなので、あんまり考えないで喜び勇んで取り付いた結果なのだが。岩の形状、ピッチの長さからすると第2スラブスーパー7級だが、7級つまり10+(比叡山グレードは小川山グレードより1ランク辛い)をザック担いでリードできるほど自分を過大評価できないので、『1.5スラブ』と報告する。多分、あっていると思うのだが。

「1.5スラブ」の3ピッチ目出だし登りだすと意外と難しい。5.8のつもりだったが途中小川山グレード5.9になる。錆びているRCCボルトが連続しボルトの距離もあるので、エイリアン、ストッパーで中間支点を補強していく。ルートをよく見ないと難しくなるので、ぼやきながらボルトを踏みヌンチャクを掴んでルート観察して易しいところを選んでテラスに。

4ピッチ目、5級-、30m、MIKIリード
テラスから頭上の木に向かってMIKIさんリード。途中のボルトも少ないし、木の下のスラブは5.8から5.9くらいである。フォローも、集中しなくては登らせてはくれない。

5ピッチ目、4級、30m、錦リード
4級のスラブをのぼり、コブ岩の8mくらい左にでるが、コブ岩の右にも簡単にいける。このあたりどうもルートが判然としない。やっぱり3ピッチ目第2スラブスーパーを登って4ピッチ目第2スラブノーマルかなとも思う。しかし、7級をあんな気分でリードできないなー?
とにかく途中フレンズで中間支点を1箇所とって、ロープを30m伸ばし、立ち木を確保支点に。ここで第1スラブスーパーを登ってきた青年パーティーと合流するので、彼らの到着をしばし待ってルートを若い人に譲る。テラス手前の立ち木で小休止。

6ピッチ目、4級、40m、MIKIリード
MIKIさんテラスまで登るが、ここでも青年パーティーフォーロアーの出発を暫く待つ。リード役と荷物を担いでのフォーロー役と完全分担なので、ツルベの我々とはタイミングが異なる。しばらく待ってMIKIさんリード開始。途中エイリアンを使いながらランナウトを避けている模様。フォローするが、なんだか上で世間話が進んでいる様子。テラスに錦少年も着き、青年パーティーフォーロアーと三人で話しこむ。少し太陽が出ている時間が増えたしテラスも広いので、ゆっくり昼食とする。

7ピッチ目、4級-、40m、錦リード
 天気も穏やかになって、のんびりとクライミング。途中木を中間支点とする。難なく確保支点に。MIKIさん、ブッシュをぼやきながらフォーロー。

8ピッチ目、4級-、40m、MIKIリード
しばらく待って、MIKIさんリード開始。最終ピッチを楽しみ、写真を撮ったりする。
フォローした錦は3時40分終了点に。


 実質、4時間足らずのクライミングであったが、かなりのろまなクライミングだったと反省する。青年パーティーは懸垂で降ると言っているが60mシングルでは日が暮れてしまう。終了点から稜線を右にスタッカット・コンテで3ピッチほど行くと比叡山1峰ピークに到着。そこから暫く歩くと右に新しい登山道が拓かれている。降りる個所を見落としやすいし、彼らの声も聞こえないので心配だし、彼らのもっているガイドブックで下山道を確認したかったので、降りる個所(道標あり)から、比叡山1峰に戻る。

 ちょうど彼らが1峰に着いて、ギアを整理しているところであった。お互いに写真をとり、一緒に下山する。30分ほどで下の県道にでる。県道から、夕日をうけたルートを暫し見上げる。


■12月30日、晴れ

<奥の細道、ルートグレード4級、ピッチグレード6級>

 昨日の経験から、荷物を一つのザックにまとめ、ハンマー・ピトンは持参しないことにする。また、陽光が南面に回り込んでからクライミング開始とする。特に出だしのピッチが難しい場合は。奥の細道への取り付きへは10分ということであったが、やっぱり迷う。
 分岐点で踏み跡を右に行き(間違いではないが取り付きまで1ピッチのクライミングがある)、かなり登った所で引き返し35分も要して取り付きに着く。おかげで体が温まる。昨日より暖かいし、取り付きよりみる広大なスラブ・フェースは陽光に輝いている。とにかくルートが多く交差しているので、じっくりと観察する。10時40分クライミング開始。


1ピッチ目、6級、30m、錦リード
天気も穏やかだし比叡山の岩場も様子が昨日で少しわかったので、1ピッチ目は迷わず直上6級を登ることにする。ノーマルルートは右側を登り5級であるが。期待に胸を膨らませ4級くらいの個所を7mくらい登ったところで最初のRCCボルトにクリップ。このRCCボルト、錆びて真黒になっている上、錆びが皮状になって浮いている。

ここから核心部だが、錆びに気が滅入る。下から「がんば!」と声もかかり、小川山グレード10a/bくらいの個所を「両手フレーク・左足スメアリング・右足極小スタンス」で攀じる。見かけより簡単であった。ルール違反だけど左足をボルトに乗せて休息させてもらい、そこからボルト2本分登ると簡単な3級から4級の岩場。15mくらいランナウトして確保支点に。錆びたリングボルト2本の確保支点を敬遠して、左上して立ち木でビレイ。

2ピッチ目、6級-、45m、MIKIリード
「奥の細道」2ピッチ目MIKIさん立ち木から上の八寸バンドにあがり、そこを右下にトラバースしてルートに戻る。薄いフレークにエイリアンをセットして、慎重に浮石をチェックしながら登っていく。RCCボルトに3本クリップした後は、左のフレークにそって登る。ここでエイリアン2つを慎重にセット。何度もサイズを変え、効きを確認し、ロープに引っ張られないためスリングを足し、完全な中間支点をつくる(フォローしたとき確認したがペツルボルトより強度が期待できそうだった)。

その後は、ランペを右上。錆びたリングボルト2本が中間支点。さらに左にトラバースして確保支点に。錆びたリングボルトが2本なのでフレンズで支点を補強。フォローしたが、岩の弱点をついたラインの実に良いピッチで、ここだけとりあげてもフリークライミングのクラッシック足り得る。

3ピッチ目、4級、45m、錦リード
4級でぐっと簡単になったが、確保支点がさびたリングボルトでは絶対落ちることができないので、慎重に登る。4mくらい登ったところでフレークに中間支点をとろうとしたらフレーク全部が浮石だった。
比叡山はけっこう浮石が多い。もう5mほど登ったところでRCCボルトにクリップ。乾いたスラブを気持ちよく登り、木とボルト1本に支点をとり、確保支点に。
外傾しているけど気持ちの良いテラス。

4ピッチ目、3級+、50m、MIKIリード
乾いたスラブのみを登りたいMIKIさんも、木が中間支点となるので草付きに3回ほど寄り道しながら、ロープを50mいっぱいのばす。ここも錆びたリングボルト2本の確保支点。

5ピッチ目、4級、50m、錦リード
ここも易しいところだけど、落ちる訳にはいかないので、登りだしてすぐに、エイリアンとストッパーで中間支点をつくる。次に、松の落ち葉で滑りそうなフェースとスラブを15mほどランナアウトして松の木に中間支点を取る。スラブは扇状に広がっているのだがその左を登り50mいっぱいで稜線に。フォローしたMIKIさん2時05分到着。

 稜線は風がけっこうあり寒いので比叡山1峰ピーク手前の窪地に移動してのんびりと昼食をとり、昨日の道を下る。


■12月31日曇り、偵察
 今日は、比叡山3峰左方カンテの偵察である。取り付きのみならず下降路も確認したい。懸垂での下降はできるだけ避けたいので、道路から比叡山3峰までの踏み跡を事前にトレースしたい。3峰下の道路から踏み跡を1本探ったあと、取り付きにいってみることにする。トンネル入り口から川側をトラバースするが、驚いたことに畳一畳もある大きなブロックが散乱し、電柱が根元から飛ばされている。上をみるとカンテにブロックがひっかかりいまにも落ちてきそうである。すくなくとも1ピッチ目は崩壊したらしい。くわばら、くわばら、偵察もそこそこにして引き揚げる。

 では、ショートピッチでも登るかと、トイレ裏の高さ30mくらいの岩場を観察する。ところが、ボルトが錆びている上、つたで網状に覆われている。げんなりして諦める。

 仕方がない。それではと1峰北面を偵察することにする。登山道をしばらく行くと、1峰ニードル左岩稜への踏み跡があり、それを辿ってとり付きに。すばらしいリッジだ。明日天候に恵まれれば登ろう。この後さらに北面登山道をのぼり、1峰北面をじっくり偵察する。


■1月1日、曇りときどき晴れ、かなりの強風

<ナックルスラブスーパー、ルートグレード5級下、ピッチグレード6級>

 今日は温度も低く強風注意報が出ている。この天気では、1峰ニードル左岩稜は無理である。南面の易しいルートを今日登り、明日1峰ニードル左岩稜を登ることにする。ということで、南面に太陽が回りこんだころ、ナックルスラブノーマル(ルートグレード4級下)の取り付きに着き、ひとしきりルートを観察する。よく岩の形状を観察しなくては。

 10時50分クライミング開始。しかし、寒いなー!


1ピッチ目、4級+、40m、MIKIリード
MIKIさん、太陽も時々しか姿を現さない寒風の中、逆くの字型にリード。エイリアンをセットし、岩塔にスリングを懸け、浮石をチェックして、慎重にロープを伸ばし頭上の松の木で確保。

2ピッチ目、5級+、45m、錦リード
ツルベでそのままスラブを右上する。ピンがまったく無いのでストッパー2本で中間支点をとる。その内、右上にボルトが見える。その方向に登るのだが、3級+のはずが、4級+ついには小川山グレード5.9になってしまう。錆びたRCCボルトにセルフビレイをとってルート図を確認。どうやらノーマルでなくスーパーのラインに入ったらしい。
MIKIさんと相談してそのまま上がることにする。まもなく、RCCボルト2本の確保支点に到着。ボルトが古くて、緊張した!

3ピッチ目6級、45m、MIKIリード
ツルベでMIKIさん登りだすが、4級くらいのところ7m左上してノーマルに戻れないか探ってみる。スーパーの方がライン明快ということで、確保支点までクライムダウンしてスーパーに取り付く。ボルト2本ほど登ったところで、かなりのランナアウトであり結構難しい様子。
「ボルトある?ボルトある?ボルトある?」と下から声をかける。
「話しかけないで!!!!」との返事。

 MIKIさん、いったんクライムダウンして左のラインを登っている。思わずロープを握り締め、こちらも緊張する。やっと、上のボルトの到着。その後、難しい姿勢で左のフレークにエイリアンをセット。サイズ選び、スリングを足す、その作業もけっこう厳しい模様。さらに少し登って、右のフレークにエイリアンをセット。
「そこは、ムーブが大変だからヌンチャクを足しといて!」と声をかけるが、すでにヌンチャクで足していたようす。その後は浮石をチェックしながら、傾斜が強くなってきたスラブ・フェースを左上・右上し、確保支点に。確保支点を中間支点として右にトラバースして、安全のため木で確保するとのこと。

フォローは荷物があって大変だけど木を確保支点してビレイされているので御気楽。
MIKIさんのラインをそのまま登る。小川山グレード10a/bくらいありそうである。このピッチ、マラ岩JECCルート10c/dに相当する、素晴らしいピッチである。ムーブは易しいが、緊張感は、ランナウトするマラ岩JECCルートを凌ぐものがある。ラインも実に自然である。それにしても、よくリードしたものである!エイリアンはよく効いていたが。

4ピッチ目、4級、40m、錦リード
立ち木からそのまま小さな岩峰を登る。はじめて見かける真新しいRCCボルトにクリップして、その後3級くらいのスラブをランナウトしてウロウロ登る。どうもルートが判然としないのでスラブの上で立ち上がってキョロキョロする。とりあえず、近くの木を確保支点とする。

5ピッチ目、3級、15m、MIKIリード
フォローしてきたMIKIさんにそのままスラブの上端の木までいってもらう。ぼくも、そこまで行って、一息ついてルートを相談する。眼前にはナックルフェースがあり、ノーマルやFYKのラインが交差している。

6ピッチ目、4級、15m、錦リード
相談の結果もう少し上がってみて、RCCボルト2本のところに行くことにする。ピンが皆無なので、小さな浮石に注意しながら慎重に登る。

7ピッチ目、6級、40m、MIKIリード
MIKIさん、RCCボルト2本のところから少し登って様子をみる。左上するのがノーマルだけど、ナックルピークの右端のライン(FYKルート最終ピッチ、5.9)の方がすっきりとしたラインとのこと。時間も少しあるし、この取り付きからナックルピークの裾を30mくらいで稜線に簡単に抜けられるから、「じゃ、慎重に!」と答える。MIKIさん5mほどクライムダウンしてFYKルートに取り付く。浮石をチェックしながら慎重に登っていき、ビレイ点からは見えなくなる。やがて、「ここから簡単!素晴らしい所!」との声とともに、ロープはするする伸びる。

風に「解除!」の声は消されるが、もの凄い力でロープが引っ張られるので、登りだす。この6級ピッチは、一番簡単な6級であったが、荷物と風とロープの引っ張り上げる力で、なんだか訳のわからない内、あっという間に終了点に3時30分到着。
 終了点に到達するころから、猛烈な風でロープは空中に舞い上がる。まるで、冬の八ガ岳西壁なみである。寒さに震え苦労してロープを片付け、比叡山でまたまた記念写真をとり、いつもの登山道を下る。今日は寒い一日であった。

 この後、寒気はいっそう強まり雪さえ降り、我々は1峰ニードル左岩稜を諦める。舞台を福岡県奥日向神のフリークライミングの岩場に移すが、ここでも寒さに震える。
 冬の九州の山は寒いのだ。まあ、あたりまえだけど。



■ 感想

 ちょっと大袈裟かもしれないが、MIKIさんにとってもぼくにとっても、今までのクライミングの総決算であった。ルート判断、各ピッチでのラインの読み、クライミング動作、プロテクションのセット、確保支点の選定、いずれをとってもそうである。

 なによりも、動作をコントロールして集中して登ることの大切さを再確認した。大きな岩場でも、大切なのは確実な攀じる能力であり、それをコントロールする精神力である。「室内壁もボルトルートもけっしておろそかにすべきでない、それどころか真剣に取り組まなくてはならない」と痛感した。

 登攀時間が標準を越えているが、ルートファイディング、プロテクションのセット、確保支点の強化のため時間を要したことなどが理由として取り上げられる。それ以上に、一番の原因は、決して落ちてはならない本ちゃんの6級ピッチを登るには、クライミング能力が不足していることであろう。もう一息向上させ<11前半>をすっきりオンサイトできるようになって、再訪したい。現下では、ルートグレード4級上から5級下あたりがわがパーティーの限界である。

 比叡山のグレードは、小川山の初期に開拓されたルートよりやや辛いぐらいであるが、プロテクションとりわけ確保支点が(ピトンルートよりは安全とはいえ)ペツルのボルトルートよりかなり貧弱なため、数段難しく感じるし安全を考えれば実際そうである。クライミング能力の余力がキイポイントである。
 ともあれ、6級ピッチをグランドアップで拓いた宮崎登攀クラブの情熱と力量に心から敬意を表したい。このルートを経験することによって、ぼくのクライミングの世界は、また拡がった。感謝!感謝!』
(記 錦少年)                                 

クライミングの最近記事(5件)

上記以外の記事は「クライミング」のカテゴリーページをご覧下さい。

PageTop

Copyright © 2006-2008 山の会「岳樺クラブ」 All Rights Reserved.